裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

147話



町の北門の門番に冒険者カードを見せて中に入ると、アリアとイーラが既に待っていた。
もう薄暗くなり始めているが、まだ日は沈みきっていないうえに連絡もしていないのに既に待っているのはアリアらしいな。

「…お疲れ様です。リキ様。」

アリアは最初から北門側を向いていて、目があったときに会釈され、俺が近づいたら声をかけられた。

その声につられて隣のイーラが振り向いた。

「あれ?なんでリキ様は外から来たの?」

「ちょっと村に用があってな。」

俺が2人を通り越して町中に歩みを進めると、2人は俺の後ろをついて来た。

「どこ行くの?セリナがまだ来てないよ?」

イーラが当たり前の疑問を口にした。
アリアはなんかわかってそうだが、普通に考えたら突然1人でいなくなったセリナを心配するわな。

「セリナには用があったから先に村に帰した。これから行くのは武器防具屋のおっさんのところだ。あと時間があれば奴隷市場にも行きたいが、2人は飯は食ったか?」

「…まだです。」

「お腹すいたよ〜。」

今日は飯を食っておくようにはいってなかったからな。

「じゃあ先に飯食ってからおっさんのところに行くか。」

「「はい。」」





時間が遅いからか酒場のようになっていた定食屋で飯を済ませ、おっさんの武器防具屋に入った。
完全に日は暮れてしまったが、まだやっているようだ。


「おう、坊主。久しぶりじゃねぇか。」

そこまで久しぶりでもないと思うが、まぁいいか。

「あぁ、ちょっと聞きたいことがあってきた。」

「なんだ?」

「サイズが変わる肉体に合わせてサイズが変わる防具ってあるか?」

おっさんは俺の言葉を聞いて眉根を寄せた。

「…気でもふれたか?」

「違う。龍族のガキが仲間になったんだが、基本人間形態で生活させ、戦闘時に龍形態にさせるかもしれねぇ。でもその都度服を壊されたらたまったもんじゃねぇからよ。」

今度は驚いた顔に変わった。
ずいぶん表情が変わるおっさんだ。

「おま、お前。今、龍族っていったか!?」

「いったが、何か?」

今度はため息をつかれて呆れた顔をされ、ちょっとイラっときた。

「いや、坊主ならありえるのかもな。んで、龍族の防具が欲しいと?」

1人でなんか納得しやがったな。

「あぁ、サイズが変わる防具があるのか?」

「先にいっておくがサイズが変わる防具はねぇ。だが、必要最低限の部位を隠すだけならアクセサリーを使うっていう手があるぞ。そもそも龍族に防具なんて必要ないからな。」

「龍族に防具が必要ない?なぜだ?」

「そりゃ龍族の鱗が最高級の防具に使われるくらいに高性能だからだ。その体以上の質の防具っていったらそれこそ限られた素材になる。そんな防具はこの国じゃ扱ってねぇし、金額にして金貨1万枚くらいになると思うが払えんのか?」

龍族はそもそも防御力が高いから防具はいらないわけか。

「だが、人間形態のときは普通の人間に見えたぞ?」

さすがに触って硬さを確かめてはいねぇけどな。

「俺は龍族の人間形態を見たことねぇが、人間になれるってことは逆に龍にもなれるはずだ。だから戦闘となれば体を鱗で覆うくらいは可能だろうさ。」

「なら無理に防具を買うつもりはねぇが、アクセサリーとやらはここに置いてんのか?」

「うちでは加護のねぇアクセサリーの買取はしてねぇし、新品のアクセサリーは扱ってねぇ。前にいったギルドの方にちょっと行ったデケェとこなら置いてるかもな。」

そういやテンコが服をリボンに変えるとか裏技使ってたな。だからアクセサリーとやらを買うのはその裏技が他のやつでもできんのか聞いてからにするか。

「あんがと。本当に必要になったらそっちに行ってみるわ。んで、もう1つの用事なんだが、このガントレットは整備するとしたらどのくらいの時間と金がかかる?」

腰につけていたガントレットをカウンターに置いた。

今までほぼ無傷だったガントレットがさっきの戦いで部分的に溶けたり削れたりしちまっていた。
よく見るといつからなってたかはわからないが指の部分も少し歪んでいる。

「こりゃヒデェな。素材がありゃ2、3日で直るとは思うが、こいつは元の素材がいいからそれ以上の素材といったらかなり限られちまう。劣った素材を使ったら質が下がっちまうからな。」

「もうこの素材は余ってないのか?」

「悪いな。全部使っちまった。」

まぁあげたもんをどう使おうがおっさんの自由だから何も悪くはねぇんだがな。

アイテムボックスから浄化済みの龍の鱗を一枚出してカウンターに置いた。

「さっき龍の鱗が最高級みたいなことをいっていたが、これなら修理可能か?」

「んな!?龍の鱗じゃねぇか!?どこで手に入れた!?」

鼻息荒く興奮しているおっさんが顔を近づけてきた。咄嗟に距離を取る。

「討伐して剥いだだけだ。んでどうなんだ?」

「討伐か…もう坊主のすることに驚くだけ無駄だな…。可能どころか勿体無いくらいだ。」

前半はよく聞き取れなかったが、可能なら頼むとするか。

「勿体無いってことはもしかして龍の鱗だけで作った方が良いものができるのか?」

それなら新しく作ってもらった方が良いだろう。龍の鱗はいっぱいあるしな。

「いや、補強に龍の鱗を使うなんて確かに勿体無いねぇが、このガントレットに使った素材は硬さだけなら間違いなく龍の鱗より硬い。だから掛け合わせたらこのガントレットの方が龍の鱗だけで作るガントレットよりいいかもしれねぇ。正直作ってみなきゃわかんねぇが、作ってから元に戻すのは無理だ。だから俺には決められねぇ。」

作んなきゃわかんねぇんじゃ賭けみたいなもんだな。だが、龍の鱗は大量にあるから両方作ってもらって比べりゃいいか。
そうすりゃいざ壊れたときの予備になるし、いらなくなったら片方は売ればいい。

「じゃあ両方頼むわ。補強と新しくガントレットを作るのに鱗は何枚必要だ?あと金額もだいたいでいいから知りたい。」

「は?」

おっさんが呆けた声を出した。

「どうした?」

「坊主。この鱗は確かに普通よりデカいが、それでも20枚は必要になる。だいたい鱗1枚と金貨1枚が同額といわれるくらいに高価なものを揃えられんのか?さらに加工するのに金貨10枚は必要だ。それでも両方なんていうつもりか?」

けっこうするな。だが鱗はいっぱいあるし、俺が戦うために必要なものをケチるわけにはいかねぇだろ。

アイテムボックスから龍の鱗30枚と金貨10枚を取り出してカウンターにてきとうに置いた。

「とりあえずこれでガントレットの整備と新しいガントレットを作ってくれ。余った分は取っといてくれ。金額が足りなければ取りにきた時にいってくれれば払う。」

「坊主は龍の鱗の価値がわかってんのか?」

「ん?今鱗1枚が金貨1枚って聞いたのが初めてだが、鱗はまだある。必要なものに使うのは当たり前だろ?」

おっさんは頭をポリポリとかいて、何かを考えているようだ。

「坊主はガントレットを武器として使ってるんだったな?」

何を改めて聞いてるんだ?ガントレットは武器だろ?あぁ、硬いから防具にもなるのか。

「あぁ。」

「わかった。できる限り良いものを作る。整備は3日、新しいのはそれから10日ほどで出来るから取りにきてくれ。」

「期待して待ってる。」

話は終わり、店を出た。


ガキどもはそろそろ寝る時間だろうが、セリナとサーシャはさすがにまだ寝はしないだろ。

奴隷市場を見る時間くらいはあるだろうと判断し、向かった。





奴隷市場に続く階段があるところの扉をノックすると、少しだけ扉が開き、中のやつと目があった。

そのまま扉が完全に開かれ、中の男が深く頭を下げた。

「いらっしゃいませ。リキ様。」

あの奴隷商以外は正直顔すら覚えてないが、こいつらは俺の名前まで知ってんのかよ。

てきとうに手を上げて挨拶を済ませ、中に入る。

今までと同じく性奴隷を見て回り、戦闘奴隷、サーシャがいた部屋、廃棄寸前の順で回る予定だ。

毎回思うが、ここの戦闘奴隷は頭がおかしいやつばかりだな。戦闘狂というべきか?どちらにせよ全く魅力を感じない。
だったらまだ女性向け性奴隷として売られてる男の中にたまにいるそこそこ強そうなやつの方が魅力を感じる。

そんなことを思いながら戦闘奴隷コーナーを見て回っていると、珍しく女がいた。…いや、確かに性別は女なんだが、さすがは戦闘奴隷というべきか、女として見れるレベルじゃない。

そうか。世の中の戦闘奴隷のイメージはこうなのか。だから俺の戦闘奴隷は性奴隷と勘違いされるわけか。

1人で納得しながら戦闘奴隷コーナーを出ると、奴隷商が立っていた。

「リキ様。お久しぶりでございます。」

「あぁ。」

「本日も戦闘奴隷をお探しでしょうか?」

今まではここで買うのは戦闘奴隷だけだったが、今回はちょっと違う。

「いや、まぁ戦闘ができるに越したことはないが、今回は建築とか出来るような奴隷を探してる。」

「そういえば、リキ様は村長になられたのでしたね。村を自力で作ろうというわけですか…そうなると複数人必要でしょうね。」

なんでこいつは当たり前のように知ってやがる?こいつにそんな話をした記憶はねぇぞ。
まぁ話がスムーズに進むのは助かるけどよ。

「まぁそんなとこだが、良いのがいるのか?」

「残念ながら今はリキ様にオススメ出来る奴隷はおりません。ですから、探しておきます。」

そんな都合よくいるわけねぇか。

「そうしてもらえると助かる。」

一応全部見ておこうと思って、残りの部屋も見たが、確かに良さげなのはいなかった。
俺らがサーシャがいた部屋と廃棄寸前を見てる間も奴隷商はついてきたが、暇なのか?

一通り見終わり、奴隷市場を出た。

「ありがとうございました。」

黒服をきた男たちに一斉に頭を下げられたが、俺は上客として認識されたのか?
まぁ悪い気分じゃねぇからいいか。

「また来る。」

奴隷商に手を上げて別れの挨拶を済まし、俺らは村に帰るため歩き出した。

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