裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

141話



シャワーを浴びて着替えたあと、食堂に顔を出すと、さっきよりも人が増えていた。

全員に仕事を与えているっていってたから、その仕事を終えてから集まってきたってところか?
寝泊まりは外でしているガキどもも飯は一緒に食うようだ。
それにしてもこの食堂は馬鹿でかいな。これだけの人数が入ってもまだまだ余裕があるしな。正確には食堂じゃなくてパーティーホールなのだろうが、パーティーなんか開く気ないからウチでは食堂と化しているみたいだ。

俺が入るなり、全員が立ち止まって頭を下げてきた。どうやら龍娘はちゃんと新しい服を着たようだな。
適当に手を上げて答えると、ウサギとテンコが走って近づいてきた。

「お帰りなさい!」

「おかえり、なさい。」

「あぁ、ただいま。心配かけて悪かったな。」

「べ、別に心配なんてしてないし!」

2人の頭を適当に撫でながら辺りを見渡す。

…俺はどこに座ればいいんだろ?

「あら、お帰りなさいませ。お久しゅうございます。」

後ろから新たに食堂に入ってきたソフィアがローブの裾を摘んで少し持ち上げて挨拶をしてきた。
サラが一緒にいるから呼んできたのか?いいご身分じゃねぇか。

「しばらく会わないうちに随分偉くなったみたいだな?」

目を細めて見つめると、2人は意味が伝わらなかったのか言い訳もせずにオロオロとし始めた。

「…リキ様、ごめんなさい。わたしがソフィアさんに個人的な仕事をお願いしているために部屋にこもる事になってしまい、時間の感覚がわからなくなってしまうだろうと思ったので、食事の時は声をかけるようにサラに頼んでしまいました。なのでソフィアさんもサラも悪くありません。勝手なことをした罰はわたしが受けます。」

後ろから呼ばれて振り向くと、アリアが珍しく少し慌てて謝罪してきた。
アリアが振り分けた仕事のせいなら仕方ねえ。というかそもそも冗談だしな。
個人的なって部分には引っかかるが、実際は全員のためになるようなことなんだろう。

「ソフィアもサラも悪かったな。久しぶりに会ったから冗談をいっただけだ。」

「あ、いえ。冗談とわからずにすみません。」

「ごめんなさいなのです。」

まだ2人はちょっと堅いな。まぁ一緒に行動することが少なかったから仕方ねぇか。
というかアリアも冗談だと思ってなかったっぽいのが少しショックだが、忘れよう。

「んで、アリアは何を頼んだんだ?」

「…既存の魔法の詠唱文や効果、発動方法を記した本の作成と詠唱の短縮化と新しい魔法の開発。あとは魔道具の作成です。」

ん?それってけっこうな無茶振りじゃねぇのか?
詠唱の短縮化はSPで取れるくらいだから難しくないかもってかそもそも必要性が俺にはわからねぇが、新しい魔法ってそんなにポンポン作れるものではないだろ普通…いや、この世界の普通が俺にはわからねぇけど。
それに既存の魔法を本に記すだけでもかなり面倒そうだ。

魔道具ってのもよくわからねぇし。

「そんな簡単に出来ることなのか?」

「そんなわけございませんわ。ですが、詠唱の短縮化はもともと研究していたことですし、製本に関しても経験があるので時間さえいただければ問題ありません。それに新しい魔法というアリアさんの発想には驚かされ、興味を抱きました。なので大変であっても苦ではありませんわ。ただ、魔道具の設計のようなものは時間をかければできると思うのですが、不器用なワタクシでは作成自体は出来ないかと思います。」

大工と建築士は別みたいな感じか。
それにしてもソフィアはなかなかいい出会いだったみたいだな。最初は無駄にプライドが高くて空気が読めないエセお嬢様なトラブルメーカーくらいに思ってたが、まさかここまで有能なやつだったとはな。それを見抜いたアリアが凄いというべきか?

「そうか。まぁ引き続き頑張れ。」

「もちろんですわ。もともとやりたかったこと以上の研究をさせてもらえるうえに必要経費も全て払っていただけるなんて、本当にリキ様には感謝していますわ。」

ソフィアはまたローブの裾を摘んで、今度は深く頭を下げてきた。

「…経費?悪いが俺は全く金なんて払った記憶がないがどういうことだ?」

「…今ソフィアさんにしてもらっている仕事はわたしの個人的な依頼なので、わたしが払っています。いえ、わたしが個人で集めたお金ではありますが、わたしの所有物は全てリキ様の所有物であるにもかかわらず、許可も取らずに勝手なことをしてごめんなさい。」

アリアは途中で自分が奴隷であることを思い出したように発言を改めて謝罪をしてきた。
ちょっと泣きそうになっていたから、なんとなくアリアの頭をワシャワシャと撫でた。

「前にもいっただろ。アリアが稼いだ分はアリアの金だ。だから何に使おうがアリアの自由だ。ただ、確かに今回の件は俺に相談してほしかったな。」

「…ごめんなさい。」

俺はしゃがんで、俯いているアリアの両頬に手を当てて無理矢理上を向かせて目を合わせた。

「勘違いするな。今回の件はアリアの個人的な依頼っていってるが、それは最終的には俺の役に立つことなんだろ?だったらアリアの金でやる必要はない。そういうことには俺が払うから相談してほしかったって意味だ。わかったか?」

「…ふぁい。」

俺が両手で頰を挟んでいるせいでちゃんとした返事が出来なかったみたいだ。
それにしてもアリアの頰は柔らけえな。
数回ムニムニとしてから、腹が減ってることを思い出して手を離した。

「まぁそんなことより飯にしようぜ。」

「…リキ様の席は1番奥のあの席です。」

俺が聞くより前にアリアが教えてくれた席に座ってまだ来てないやつらを待っていると、後から来たやつが俺を見るなり頭を下げて空いてる席に座っていった。
全員の席が決まっているように空席が徐々に埋まっていく。

飯が用意してある席は全部埋まったようだが、なぜか全員が俺を見ている。

なんかいえってことか?

「今回は心配かけて悪かったな。俺がいない間もちゃんと仕事をしてたのは偉いぞ。俺が作ったわけじゃねぇけど腹一杯食べて、午後も頑張ってくれ。それじゃあ、いただきます。」

「いただきます!」

全員がいただきますとハモった。
んだよ。俺の「いただきます」を待ってただけかよ。無駄に喋っちまったじゃねぇか。
ちょっと恥ずかしいと思ったが、誰もなんとも思ってないっぽいからいいか。
ほぼ全員が争うように飯を食ってやがるからな。
音は食器の音しか鳴ってないからけっこう静かなんだが、風景が騒がしい。字面で見たら意味不明だな。

そういやけっきょくサラに俺がフォーリンミリヤにいたときの話をしてなかったな。

「サラ…。」

俺は飯を食いながら、サラに今まであったことを伝えながら昼食を楽しんだ。

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