裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

140話



村の中に着陸するとサラとヒトミとサーシャ、あとは数人のガキどもが近づいてきた。

「おかえりなさい、リキ様。ご無事で何よりなのです。」

サラが数歩前に出て、俺に声をかけてきた。

「ただいま。心配かけて悪かったな。第三王子はもう来てんのか?」

「まだいらしてないのです。」

そういや夕方に来るっていってたよな。ならまだ時間があるから、アリアから報告のあったドライアドの件を済ませておくか…いや、戦闘になって長引いたりしたら面倒だから、第三王子が来てからにした方がいいだろう。

とりあえず腹が減ったし、飯でも食うか。

「みんなは飯はもう…。」

サラにみんなはもう飯を食ったのかを確認しようとしたときに視界の端に映ったサーシャが怒りをあらわにした顔をした。
そしていきなり血の棘を5つ飛ばしてきやがった。

視界には映っていたが、まさか自分に向けられてるとは思わず、一瞬避けるのが遅れたせいで全てを避けきれず1つがかすりそうになったとき、腰につけていた人形が目の前に浮かんで、血の棘を叩いて軌道を逸らした。

なんかいろいろわけがわからねぇ。

「リキ様はあの小娘どもと仲間だったのか!我を騙したな!」

さらにわけわかんねぇことをサーシャが叫んだ。

「何いってんだ?意味がわからねぇぞ?」

「しらばっくれても、その人形が証拠じゃ!我を使役するために仲間に我を捕まえさせたのか!」

サーシャは怒りをあらわにしたまま、浮いている人形を指差した。

まだサーシャがいってることがよくわからんが、サーシャを捕まえて奴隷商に売ったやつと俺が仲間だと思ってるってことか?
その原因がこの人形ってことだよな。

浮いている人形がサーシャの方に進み始めたから、咄嗟に捕まえた。というかなんで人形が浮いたり勝手に動いたりしてるんだ?

いろいろなことが起きすぎて意味がわからないが、とりあえずサーシャの誤解を解いておくか。

「とりあえず落ち着け。この人形の元の持ち主と俺が仲間だと思ってるなら、それは勘違いだ。たまたま会って、何故かこいつを無理矢理渡されただけだ。」

「そんなわけなかろう!その人形は我との戦闘時ですら使わず大事に抱えておったものぞ?それを他人にあげるなどありえん!」

サーシャはまた血の棘を作り出した。
今度は30くらいはありそうだ。

「んなこといわれても嘘じゃねえしな…というかそもそもの話、サーシャを使役するために何故他の奴らを使う必要がある?まぁ百歩譲って他の奴らに頼んだとして、何故一度奴隷商に売るんだ?そんなことしたら単なる金の無駄遣いじゃねぇか。」

「うっ…確かにそうじゃが…だが……しかし…。」

サーシャが怒りから戸惑いに変わると、右手で掴んでる人形の抵抗がなくなった。
これは殺気に対して反応するようになってるのか?
抵抗がなくなったから、また腰にくくり付けた。

「それに俺の使い魔になることを選んだのはサーシャじゃねぇか。俺は一回見逃してやってんだぞ?他の奴に頼むくらいなら、オークションのときに逃さず使役してるだろ。」

「…すまない。」

サーシャは納得いったのか、血の棘を体内に戻し、勘違いを恥じるようにうな垂れた。

「楽しそうなことをやってると思ったら、もう終わりなのかい?」

わかればいいんだといおうとしたとき、家から出てきた緑髪の女が声をかけてきた。
カレンと一緒にいるから敵ではないのだろうが、クローノストから連れてきたガキどもにこんなやつはいなかったと思う。

「誰だ?」

「酷いじゃないか。君から誘っておいて僕を忘れたのかい?」

俺が誘った?
背はセリナより少し高そうで、緑の髪をポニーテールにした活発そうな女だ。
ぴっちりしたシャツを着てるから、やけに胸が強調されているな。その胸元にはデカイ赤い宝石のような物がネックレスとしてぶら下がってる。
ぴっちりしたシャツのせいかへそが丸見えで、くびれながらも腹筋があるのが見える。

確かに戦闘奴隷としては役に立ちそうだが、誘った覚えがないぞ。

「カレン。こいつは客か?」

「この人はにいちゃんが飯と住むところを与えるっていって誘ってたから、村人じゃないか?」

ん?余計にわからなくなったぞ?
俺が村人に誘ったのはクローノストのガキどもだけだったと思うが…。

「こっちの姿なら思い出してもらえるかな?」

緑髪の女がそういうと、体が緑色の鱗を纏いつつ膨れ上がり、あっという間に龍の姿になった。

膨れ上がったさいに破けた服の残骸をカレンが苦笑して見ながら「ソフィアの服なのに…」と呟いていた。どおりでシャツがピチピチになるわけだ。

邪龍やイーラが変身する龍よりは小さいが、カレンの4倍くらいのサイズはある。

あぁ、あの時の幼龍か。

「なんだ?もう俺への復讐に来たのか?」

俺の質問に対して首を横に振った後、また人の姿になった。もちろんマッパだ。
体内構造は知らないが、表面はまんま人間なんだな。ただ、毛は全て緑なのがちょっと違和感あるが。

「違うよ。父さんのことは悲しかったけど仕方ないと思ってる。父さんは僕のことすらもうわからないくらいに堕ちてしまってたからね。それに君は父さんの形見をくれた。恨むなんてできないよ。」

見た目は子どもだが、ずいぶんしっかりしてるんだな。

「それで、この村に住みたいのか?だったらルールやマナーさえ守れば、好きにしてかまわない。」

まだルールなんて作ってないが、どうせ人間と龍じゃ常識が違うだろうから、先に釘を刺しておかなきゃな。

「最初はそのつもりで来たんだけど、みんなの話を聞いていて考えが変わった。僕は君たちと一緒に冒険がしたい。」

「残念だけど、俺は冒険者であって冒険者じゃない。あくまで身分証がほしくて冒険者になっただけだ。今までは金がないからいろんなとこに行ったり戦ったりせざるを得なかったが、もう金にもたいして困ってねぇし、住む場所も食料もある。だからしばらくは何もするつもりがねぇよ。それに俺と冒険するなら奴隷になることになるぞ。」

「奴隷の話は聞いている。僕はそれでもかまわない。だから、次にどこかに行くときは連れて行ってほしい。僕は世界を見てみたいんだ。それに戦闘では役に立てると思うよ。」

俺らが今までやってきた金稼ぎのための冒険ではなく、字の通りの冒険がしたいわけか。
まぁ俺もこの世界に興味はある。だから村づくりが終わったらそれもありかもな。

「わかった、考えておく。だがとりあえずはこの村をもっとちゃんとしたものにしてからだな。なんせまだ家らしい家は2つしかないからな。」

ガキどもは人数が多すぎるからか、外にあるテントで生活しているっぽい。
…ん?家が2つ?

この豪邸っぽいのは覚えているが、その隣にあるこの世界での一般住宅っぽい家はいつの間にできた?

「アリア。あの家はなんだ?」

「…あの家はローウィンス様の住居だそうです。わたしたちが一度この村に帰ってきたときはまだ建設途中だったのですが、もう完成されたようですね。」

俺がクローノストに向かったときにはまだ作り始めてもなかったのに、そんな短期間で家が1つ建つものなのか?さすがはファンタジーというべきか?
いや、そんなことはどうでもいい。

「なんであいつの家がここにあるんだ!?」

「…ここは表向きはローウィンス様の領地となります。なので領主が住居を構えることはおかしいことではないかと思います。」

あいつは領主といっても王族だ。こんな近くに王城があるのにわざわざ自分の領地だからと住まいを移す必要はないだろう。
いや、そもそもあいつは俺にこの村を任せたはずだ。それを王族はさすがに知っているだろう。なのに何故あいつがここに家を建てた?俺の監視でもするつもりか?

そういや領主の話をされたときになんかいっていた気がするな…思い出せないが…まぁ実際の領主はあいつなんだから好きにさせるか。
俺が住みづらいと思ったら出て行けばいいだけの話だしな。

「第三王女には好きにさせるとしよう。あとはガキどもの家とかも建ててやらねぇとな。久しぶりに奴隷商のとこにでも顔を出して、家を建てれる奴隷でも探してくるかな。」

「…その件でしたら、あと数日待っていれば、向こうからやってくるかと思います。」

「奴隷商がか?」

俺はあいつに村長になるなんて話はした記憶がないぞ?

「…違います。いえ、ごめんなさい。余計なことをいいました。忘れてください。」

だいぶ気にはなるが、腹の虫が鳴ったせいで空腹だったことを思い出してしまった。
まぁとりあえず奴隷市場に顔だして、いいのがいなければアリアのいうように待ってみるか。

「なんでもないなら別にいい。それより飯にしよう。腹減った。」

「お昼ご飯ならもう少しで出来上がるのです。なので食堂に行きましょう。できたらご飯を待ってる間に冒険のお話を聞かせてほしいのです!」

サラがキラキラした目を向けてくるが、そんなたいした冒険はしてないんだよな…。
まぁあったことをそのまま話すしかねぇか。

「わかった。シャワーを浴びたら行くから、先に食堂に行っててくれ。」

「はいなのです!」

俺が屋敷に向かうとその場にいた全員が屋敷に向かって歩き始めた。

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