裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

137話



これだけ規模のでかい闘技大会だから、クランみたいな化け物連中が参加するのかと思っていたが、そんなことはなかった。

確かにそこそこ強いやつらが大勢いるが、逆にいえばそこそこでしかない。
セリナが負ける可能性がありそうなのは3人くらいか?それと別で1人、セリナでも勝てないだろうやつがいるくらいか。
その4人ともセリナとはトーナメントが離れてるから戦うとしても準決勝だし、それまではラスケルにセリナの本気は見せてやれないかもしれん。

というか、そろそろ認めても良さそうだな。
たまたま闘技大会に出てるやつが弱いんじゃなくて、俺らがそう思えるくらいに強くなってると。
もちろんそれで調子に乗って死ぬなんて馬鹿なことをするつもりはないがな。



セリナの後も順調にトーナメントが進んでいき、1人だけ別格の強さであるだろう男の番となった。だが、予選通過組だから情報が一切ない。

俺の感覚が何を基準にして判断しているのかはわからないが、セリナや他のそこそこ強いやつらより頭一個抜きんでて強いっぽい。

まぁ今までこの感覚は相手のスキルとかで簡単に誤魔化されてるから、信用度は高くないけど、ある程度の目安にはなるはずだ。


「始め!」

審判の開始の合図とともにその男は相手との距離を詰めながら、腰のベルトの両側に付けているメリケンサックを外し、クルッと回して装備した時には既に相手の顔面を殴る体勢となっていた。

流れがスムーズだし、速いな。普通のやつなら状況把握する前に気づいたら1発殴られてるだろうな。

案の定、相手は顔面にもろにパンチをもらい、メリケンサックが食い込ん…………でないだと!?
防具をつけてない顔面にパンチをもらってもダメージを受けてないようだが、被膜の加護か?だとしても、よっぽどいい装備をしてなければ、ノーダメージなんてことは普通はないだろ。やせ我慢か?それとも本当にかなりいい装備をしてるのか?
あぁ、この世界には打撃耐性だの物理耐性だのがあったな。それか?

1発目のパンチを簡単に受け切られてしまった男は眉根を寄せて訝しんだ。
それも数瞬の間だけで、今度は打撃ラッシュが始まった。

それにしても速すぎる。
せっかく俺と同じ殴るタイプみたいで、俺より強いだろうから参考になるかと思ったが、動きが速すぎて、真似できる気がしねぇ。

「あのさ、俺は避けないから本気の一撃をくれないかな?そんな軽いパンチじゃいくら数を打ち込もうと無駄だからさ。」

打撃ラッシュを受けてる男がつまらなそうに提案をした声が会場中に届いた。

その言葉に反応したのか、男は攻撃の手を止め、一度距離をおいた。

「そうかい。なら受け取れや。」

今度は一歩で距離を詰め、異常なほど捻った体を戻しながら顔面に殴りかかった。

しかし、殴られた男は怪我以前に痛そうなそぶりすらない。

「…はぁ。残念だ。」

殴られた男はため息をついて落胆した素振りを見せた。
その仕草にイラついたのか、メリケンサックを外して腰のベルトに戻し、今度は短剣を二本引き抜いて切りかかった。

そして、短剣が折れた。

切りかかられた男が面倒そうに手を払ったときに手の甲と短剣がぶつかり、短剣が折れたようだ。

あまりの出来事に会場が静まり返った。

「刃物を使うなら服はやめろ。着替えを持ってきてないんだ。」

あまりの発言に会場の静寂が続いた。

そんな中でも短剣を折られた男は使い物にならなくなった元短剣を即座に捨て、そのまま相手の腰に刺さっている剣を引き抜いて一歩下がってから切りかかったが、今度はそれを素手で掴まれた。

「この剣は折れるとまずいから、返してくれ。」

これはパフォーマンスか何かか?と思うほど信じられない光景だった。
これが殺し合いがありえない日本での出来事ならこういう見世物なのだろうと思えたが、あの男は間違いなく殺そうとしていた攻撃を素手で破壊したり掴んだりしてやがる。
しかも怪我してるようには見えねぇし…。

俺の観察眼には反応してなかったが、間違いなく化け物じゃねぇか。

かりに物理耐性やら斬撃耐性があったとしても相手の武器が破壊されることなんてないはずだ。つまりは純粋にあいつが硬いってことだろう。

…こんなやつに勝ちようがなくないか?

「参った参った。これじゃあ俺に勝ち目はねぇわ。縛りプレイなんてしてないで、使わないにしても普段の武器も持ってきておくべきだったな。まぁそれでもこいつにダメージを与えられたかわかんねぇけどよ。」

ダメージを与えられなかった男も俺と同じ意見だったようで、両手を上げてアッサリと負けを認めていた。

「勝者、ダムエド!!」

「………ワァーーーーーーッ!!!!」

静まり返っていた会場の客がやっと状況を把握できたようで、うめき声にも似た声援が遅れて送られた。

「期待していたのに残念だ。」

負けを認めた男が出口に向かう後ろ姿を冷めた目で見ながら、勝った男がそう呟いたのが聞こえた。




トーナメント1回戦が全て終わり、またアリアの試合となった。

セリナが負ける可能性がある程度には強いであろう3人も順当に勝ち上がったようだが、トーナメントだからセリナと戦う前に強い同士で潰し合うことになるから、実力的にセリナと戦うのは準決があの硬い男で決勝が前回優勝したとかいう男だろう。

あの硬い男もさすがに黒龍の双剣なら切れるだろうし、セリナなら勝てると思う…というか黒龍の双剣でも傷をつけられなかったら間違いなくあの硬い男が優勝だろうな。

まぁ誰が優勝だろうが、それまでの戦い自体が参考になるからいいんだけどな。
あわよくば金のためにセリナに優勝してもらいてぇけど、無理して黒龍の双剣が壊されたらシャレにならない。

そんなことを考えていたら、アリアが入場してきた。

「アリアローゼちゃーーーーーん!!!!!」

まだ一度しか戦ってないのに声援が送られるとはよっぽど子どもが勝ち上がるのは珍しいのか?それに女の声援が多いな。

というかアリアは続けるんだな。
まぁこの試合は大丈夫だろう。ただ、次がセリナだからそこまでになってしまうだろうけど、いい経験になるし、好きにさせるか。

「ずいぶん人気があるようだが、俺は子どもだろうと加減をするつもりはねぇから棄権するなら今のうちだぞ?」

後から入ってきた対戦相手の男がアリアに棄権を促した。
確かにあんな子どもが対戦相手だったら本気を出しづらいってのはあるかもだが、1回戦で圧勝してるのに普通は棄権はしないだろ。
というかそもそもアリアの方が強いだろうしな。

「…お気遣いありがとうございます。ですが、今回まではリキ様のために見本となる戦闘をしたいので、本気でお願いします。」

アリアがペコリとお辞儀をすると男はニヤリと笑った。


「始め!」


両者が向かい合ったのを確認した審判が開始の合図を出すとすぐにアリアが詠唱を始めた。

男は剣を構えて走りながらブツブツと何かをいっている。
もしかして男も魔法を使うのか?

『ウインドカッター』

男の方が早く詠唱が終わったようで、風の刃が1つアリアに向かっていき、それに並走するように男は走りながらまたブツブツと何かをいっている。

『ステアラ』

また男が魔法を発動すると男の動きが速くなり、その速度でアリアに切りかかった。
アリアは詠唱は終わっているようだが発動はせずに男の剣を受け流し、なぜかバランスを崩したフリをした。

男はそれを見てニヤリとまた笑ったが、アリアはそこから体をひねって、ロッドでウインドカッターを男の方に受け流した。

ニヤリと笑っていた男が目を見開いて、咄嗟にウインドカッターを剣で受け止めている間にアリアは男の脇腹にロッドを添えた。

『中級魔法:電』

「ガハッ。」

アリアが魔法を発動すると男は1度息を漏らして硬直した。

「…審判さん。もうこの人は動けませんが続けますか?続けるなら殺すしかなくなってしまいますが…。」

物騒なことをいう幼女がいる…あぁ、俺の奴隷だった。誰に似たのやら。

「………勝者、アリアローゼ!」

審判は数秒その状態を観察してからジャッジをくだした。

アリアは勝ちの判定が出るとすぐに魔法を解除し、また俺の方に一礼した後、出口へとスタスタと歩いていった。

「キャーーーーーッ!アリアちゃんかわいいーーー!!」

一方的な展開で勝利したアリアがかっこいいではなくて可愛いか…女どもの感覚はよくわからねぇな。




「セリナアイルちゃーーーん!!!」

野太い声援が会場に響いた。
セリナも2回戦目にしてこんだけの声援をもらえる人気なのか。

今度はセリナの番のようだ。
セリナはアリアと違ってほとんどが男どもの声援だ。
セリナは女なんだからこれが正しいんだろうが、男どものこういう声援はなんか気持ち悪いな。

セリナはまんざらでもないのか、ニコニコして会場を一周見渡しながら両手を上げて振っている。

男どもの声援にさらに熱がこもり始めた。

「ずいぶん人気なのね。同じ女として嫉妬しちゃうわ。」

対戦相手はフフッと笑った。
この対戦相手は今大会本戦でアリアとセリナを除いたら唯一の女選手だ。
ウエストは引き締まってるのに出るとこ出てる20歳くらいのお姉さん…いや、姐御って方がイメージが合う感じの女だ。そこまでタイプではないが、正直セリナみたいな子どもよりは断然魅力を感じる。でも観客の男どもからはセリナの方が人気みたいで不思議でならない。

あの女は1回戦では確か弓と短剣を使ってたな。
ほとんどが弓での遠距離で、敵が頑張って距離を詰めてきたらアッサリと弓を捨て、短剣で応戦していた。
その時の対戦相手は近づけば勝てるとでも思ってたのか、女の短剣に対応できずに負けてたな。

だが、今回は装備を見る限り鞭と剣と短剣か?
あとは大きめのウエストポーチをつけてるくらいだ。

「私は可愛いからね。だけど私の心はリキ様にしか向いてにゃいけどね。」

そういってセリナは俺の方を向いてウインクをしてきた。
セリナに声援を送ってたであろう男どもから凄え殺意を込められたような視線を向けられたが無視だ。

というかどうしてアリアとセリナは俺の位置がわかるんだ?

「リキ様とやらはこんな若い子に好かれて幸せ者ね。あなたは自分が可愛いと自覚しているみたいだから先にいっておいてあげるけど、棄権するなら今のうちよ?可愛い顔に傷がつく前に棄権することをお勧めするわ。」

「心配してくれてありがとう。だけどアリアが2回戦突破したのに私が戦わずに棄権するにゃんてことは出来にゃいかにゃ〜。」

「あら、あの小さい子も仲間なのね。リキ様はこんな子どもばかり集めて戦わせるなんて碌な人間ではなさそうね。」

まぁ一般論として、女の意見は間違ってないだろう。俺だって日本で俺と同じことをしてるやつがいたらそいつは碌でもない人間だろうと思うし、今の俺だってまともな人間だと胸を張っていえるわけではない。ただ、間違ったことをしてはいないし、俺の生き方を周りに合わせて変えるつもりもない。
もちろん国での法律が変われば、一応俺も村長になっちまったから国民だろうし、ある程度の法律には従うつもりはあるがな。

「リキ様の悪口は許さにゃいよ。」

だけど、セリナには俺を侮辱したように聞こえたようで、低い声で怒りを露わにしている。

「あらあら、本当にリキ様が好きなのね。それでもやっぱり私は許せないわね。いくらあなたたちが強くてもこんな子どもに出場させて自分は高みの見物なんて。といってもこれ以上は何をいってもお互いの意見が平行線なのだから無意味かしらね。」

「ニャハッ。」

セリナは怒っていたかと思えば、今度は笑った。

「何かおかしいことをいったかしら?」

「いや〜。お姉さんは勘違いをしているみたいだからさ。」

試合前に話しすぎだろ…。
審判も空気読んでないで早く始めちまえよ。
周りの観客だってそろそろ話が長くて飽き………どいつもこいつも聞き入ってやがる。
話なんてどうでもいいから早く試合が見たいって思ってんのは俺だけか?
ここから「早く始めろ」っていえばセリナには聞こえるだろう。だけど、こんな静まり返った会場でそんなこといって目立つのは遠慮したい。
しゃーねぇからもうちょい待つか。

「勘違い?」

「そうだよ〜。まず、アリアがリキ様からいわれてるのは1回戦を戦うことだけ。だから2回戦以降も戦ってるのはアリアの意思だし、そもそも負けそうだったら棄権しろってリキ様に命令されてるからそんにゃに危険ではにゃいよ。それに私が出場するようにいわれたのはこの大会程度にゃら私でも優勝できるとリキ様が判断したからだと思うんだよね〜。じゃにゃきゃリキ様自身が出てるはずだしね。ようするにこの大会はリキ様が出るほどの大会ではにゃかったんじゃにゃいかにゃ〜?もちろんリキ様はそこまでいってはくれにゃいから、これは私がそうにゃんだろうと思ってるだけだけどね〜。」

何いってんだこいつは?
俺がいつそんなことをいった?
俺は自分が初戦で負ける可能性があるのが嫌だから丁度カリンに見本を見せられそうなアリアを出場させただけだし、迎えにきた褒美をセリナにだけ何も用意してなかったからこの大会での結果でプレゼントを選ぶという言い訳を思いついて使っただけで、そんなことは微塵も思ってはいないぞ。
まぁセリナなら優勝できるかもとは思ってたが…。

それにしてもなんでそんな盛大に勘違いしてやがる?
というか前から思っていたが、俺の周りにいるやつらは俺のことを過大評価しすぎなんだよ。

「ずいぶん甘く見られたものね。」

セリナがふざけたことをいってるから、さっきまで余裕を見せていた女が少し怒りを漏らしているじゃねぇか。
これが作戦なら大成功だろうが、セリナがそんなことを考えるとは思えん。

「そうかにゃ?じゃあお姉さんは武器を使わずに龍を殴り飛ばせる?魔王と一対一で互角に戦える?自分の攻撃に耐性を持つ魔物を殺せる?自分の武器や防具ごと刀で切ってくる鬼を相打ちだろうと倒せる?」

セリナは笑顔だが、笑ってない気がする。
というか、もしこれらが俺のことをいってるんだとしたらちょいちょい脚色してんじゃねぇか。
龍を殴ったときはガントレットをしてたし、そもそも顔の向きを変えさせるのが精一杯だったぞ。
魔王ってのはゴブリンキングのことか?だとしたら互角どころか避けに徹してたにもかかわらず押されてたぞ…。
耐性を持つ魔物を倒した記憶なんてねぇし、鬼ってのはアオイのことをいってるんだろうが、勝ったのは本当にたまたまだ。

セリナが余計なことをいうせいで隣のカリンがめっちゃ見てんじゃねぇか。

「なんだよ?」

「あ、いえ…セリナさんがいってるのってもしかして全部カンノさんのことなのかな〜と思いまして…。」

「まぁかなり盛られてはいるが俺のことだろう。」

「…まさかそこまでとは。ちなみに盛られてるというのは?」

「龍と戦ったときには武器としてガントレットを着けてたし、そもそも顔の向きを変えれた程度で殴り飛ばせてはいない。ゴブリンキングとの戦闘だって俺はあいつのパンチをかわし続けるので精一杯だった。ぶっちゃけ殺したのはイーラとアリアだしな。あと、耐性を持つ魔物を倒した記憶なんてねぇし、鬼に相打ちで済んだのはたまたまだ。」

カリンは俺の説明を聞いて「ハハッ。」と乾いた笑いをした。

その後なんもいってこなかったから、話は終わったのだろう。


「…いきなり何をいっているの?話が急に変わったから意味がわからなかったわ。なんでいきなりそんな話になったのかわからないし、そんなことが出来る人なんて冒険者でいうところのSランクにだってそんなにいないと思うわよ?」

俺がカリンと話している間、女はセリナの質問を受けて少し固まっていたようだ。

「そうだね〜。実際、私たち以外の冒険者はSランクの人も含めて全く龍に傷を与えることもできずにほとんど死んじゃったね〜。それと話は変わってにゃいよ?これはリキ様がやったことの一部を上げてみただけだし、これを聞いて理解できにゃい人たちじゃリキ様に相手にされにゃくたって仕方がにゃいんじゃにゃいかにゃ?つまり、お姉さんたちを甘く見るもにゃにも事実にゃんだから仕方にゃいよ。」

いや、邪龍討伐で大半が死んだ理由はイーラだろ。まぁ事実を隠したのは俺だから、何もいえねぇけどよ。
というかセリナはまだちょっと怒っているのか、いい方が挑発してるように聞こえるな。

女はセリナの挑発まがいな言葉を最後まで聞いて、1度目を閉じてから開いた。

「そう。あなたが純粋なのはわかったわ。もうこれ以上の会話は意味もなさそうだし、早く始めましょう。」

たぶん女の反応的にセリナの話を信じてないっぽいな。
まぁ普通はそうだな。なんせセリナは話を盛ってるし。
それに信じてない方が俺らにしても都合がいいかもな。

「そうだね〜。審判さ〜ん、お願いしま〜す。」

セリナは相手が信じてないだろうことは理解したうえで、試合を始めることに同意したようだ。
やっと始まってくれるみたいだな。
本当に話が長かったわ。

「あ、はい。それでは、始め!」

合図とともにセリナは走りだし、女は鞭を振った。
走るといってもいつもに比べたらずいぶんゆっくりだな。それにまた昔の短剣を装備してるし、どうやらセリナは今回も本気は出さないようだ。

セリナは鞭を武器で弾いたりせずに避けながら女に近づくと、女はセリナとの間に1枚の巻いてあった紙?を広げた。

その紙に魔力が流れていくように見えたと思ったら、紙から火の玉が複数出てきて、紙自体は燃えて消えていった。
目の前でいきなり出てきた火の玉に動じることなく、セリナは全てを避け切った。
いやいや、普通はあの距離で全部避けるとか無理だから。当たる覚悟で横に逸れるか、後ろに飛び退くのが普通だろ…まぁ出来てるのだから正しい行動なのだろうけどさ。

女はセリナの行動に驚きつつも即座に鞭を捨てて短剣に武器を変え、またウエストポーチから巻いてある紙を2つ取り出した。

1つはすぐに開いて魔力を流して何かを発動したようで、燃えて消えていった。

女の速度が上がったから、ステータスが上がったのか?
というかあれはもしかしてゲームとかであるスクロールか?
この世界でも即座に魔法が使えるアイテムがあるのか?


…でもSP消費さえすれば誰でも無詠唱で魔法が使えるのにいらなくねぇか?


いや、スキルとして覚えてない魔法でも使えると思えばなしではないのか?
他にも今は思い浮かばないだけで、もしかしたら使い道があるのかもな。

この町はアイテムショップっぽいのが多かったから、大会が終わって暇があったら探してみるか。



セリナが女に切りかかると、女は必死に短剣で受け流し、スクロールを広げた。
だが、魔力を流しきる前にセリナが短剣を横に振り抜き、スクロールを真っ二つにしてしまい、不発に終わったっぽい。

あとはもう一方的だな。

女はセリナの攻撃を短剣で受けるので精一杯で新しいアイテムを使う余裕はないっぽいし、セリナはどうやって倒そうか考えながらの攻撃なのにずっと優勢だしな。

セリナがニヤリと笑った。
何かを思いついたのだろう。

「リキ様は私より強いよ。これでリキ様の強さが少しはわかった?もしここでリキ様を悪くいったことを心から謝罪するにゃらこのまま終わらせてあげるけど、どうする?」

女は喋る余裕すらないのか、手を抜かれてることに怒ってるのかはわからないが、黙ってセリナを睨んだ。

「残念だね〜。じゃあ後悔させてあげるね。」

セリナは女の懐に入り短剣を瞬時に黒龍の双剣に持ち替えて15回切りつけたあとに背後に回って6回切りつけてからまた元の短剣に持ち替えて離れた。

その間、女はほとんど反応できず、消えたと勘違いしたのか辺りをキョロキョロしている。

そして、セリナの斬撃の効果が遅れて発揮されたようで、無残にも女の衣服が全て落ちた。
これは戦乙女の時より酷い。

…完全な真っ裸だ。

女の反応はメチャクチャ速かった。

一瞬裸体が晒された瞬間に体を隠すようにしゃがみ込んだ。
かなり動体視力が良くないと見えなかっただろう。
まぁ俺はガッツリ見たけど。
アラフミナに帰ったら憩いの場にでも行こうかな。

「まだやる?」

セリナがニヤニヤしながら女に確認を取っている。なかなか嫌なやつに育ったな。俺はそういうの嫌いじゃねぇけど。

「くっ…参ったわ。」

「勝者、セリナアイル!」

「セリナアイルちゃん、萌えーーーーー!!!!」

え?マジでキモいぞ。

というかなんでこの世界のやつらがそんな言葉を知ってるんだ?

「ねぇ、お姉さん。私最高級のTシャツと最高級のズボンを持ってるんだけど、良かったら売ろうか?」

試合が終わっても立ち上がれない女にセリナは近づいて、商談を始めた。

「…いくら?」

「これとこれのセットで金貨5枚だよ。」

セリナは普通のTシャツとジーパンを出した。

「そんなに払えるわけないじゃない!」

「じゃあ仕方にゃいから、この最高級のタオル2枚で金貨1枚でいいよ。」

今度は2つで銅貨10枚程度のタオルを取り出した。
こんな相手の足元を見るやり方、どこで覚えたんだか。

「くっ…わかった、買うわ。」

哀れな女は背に腹はかえられないと思ったのか、涙目になりながらウエストポーチから金貨1枚を取り出してセリナに払って、タオルを受け取って胸と腰に巻いてさっさと出口へと向かっていった。

これはこれでいいな。

「セリナアイルちゃん、最高ーーーーー!!!!!」

さっきよりもデカい声援が送られたが、これはちょっと気持ちがわかってしまうのは男として仕方がないだろ。

セリナはまた客席を一周見渡しながら手を振って、最後に俺の方を向いてまた投げキッスをしてきたあと、出口へと歩いていった。

「あの服もタオルもそこまで高級品には見えなかったのですが…。」

カリンが隣でボソッと呟いた。
これは反応しない方が良さそうだ。

「あれはリキ様の真似したんだと思うよ!」

逆隣のバカがふざけたことぬかしやがった。
だが、確かに俺もやるから否定ができねぇ…。

カリンがビックリした顔で俺をガン見してやがる。

もう面倒だから開き直るか。

「前にいっただろ?冒険者成り立てのお前らから金を取る気はない。取れるやつから取ればいいんだと。その言葉のままだ。取れるやつからは取れるときに取る。そもそも降参という制度があるのに勝てない相手を前にして降参しないのが悪い。自業自得だ。」

またしてもカリンは乾いた笑いを漏らして「ソウデスネ。」と遠くを見ながら呟いた。

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