裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
134話
時間の心配は杞憂に終わった。
本屋を出て空を見上げると、太陽はまだ真上にすら昇っていなかった。
俺が立ち読みに時間をかけ過ぎたのではなく、カリンがパーティーを勧誘するのが俺の予想より早過ぎただけみたいだ。
…無駄に金貨1枚払っちまったじゃねぇか。
「こちらがパーティーを組むことになったラスケルくんです。」
カリンが紹介したのはセリナと同じ猫系の獣人の男の子だ。
身長が160センチもないだろうくらいに小さいな。
身長が小さいせいか幼く見えるが、さすがに10歳ってことはないと思うから12歳くらいか?
小さいことも気になるが、背中に背負ってる大剣の方が気になる…そんなに筋力があるようには見えないが、獣人は人間より身体能力が優れてるから見た目以上に力があるのかもな。
俺が凝視していたせいか、ラスケルは緊張してしまったようだ。
「ラスケル・ブランケットです。成人を迎えたので今日から冒険者になりました。よろしくお願いします。」
ラスケルはペコリと頭を下げた。
成人?今日から冒険者?
カリンを見ると俺の視線の意図を察したのか「ギルドに行ったらちょうど冒険者登録をしていたので勧誘しました。」とドヤ顔でいってきた。
確かに素人のカリンが主体となるパーティーを組むにはカリンよりも素人を勧誘するのは正しいだろう。だが、さすがに登録したてのど素人は使い物にならないだろ…。
まぁ約束だからついてってやるけどさ。
「神野力。力が名前だ。俺はついていくだけだからそんなかしこまった挨拶はいらねぇよ。んで、今日はどんな依頼を持ってきたんだ?」
ラスケルに軽く挨拶を済まして、カリンに確認を取る。
「今回はEランクの調査依頼です。今のところ目立った害はないようですが、北西の森から魔物が頻繁に出てくるようになってこの町が迷惑を被っているようです。その原因を調べるというのが今回の依頼内容です。解決までした場合は追加報酬があるようです。ただ、その場合は証拠が必要となりますが…。」
Eランクの調査依頼か。
Eランクの討伐クエストで魔族相手だったから、調査ならそれ以上を覚悟しといた方が良さそうだな。
今まで森で生活していた魔物が溢れてるといったら、いつの間にかダンジョンができていて、そこから溢れてるのか、強力な魔物が住み始めたせいで追い出されたか、もしくは前回みたいに知能ある魔物の指示で弱い魔物が人間の町にちょっかいかけてるか…パッと思い浮かぶのはそんなところか。
「じゃあまずはラスケルの装備を整えるか。」
「はい?武器ならありますよ?」
ラスケルは自慢げに大剣を見せてきた。
カリンと同じ反応かよ。まぁ俺も最初はそんな感じだったから気持ちはわからなくないけどさ。
「ほう。じゃあ質問だが、ラスケルは相手の攻撃を一切受けないほど回避がうまいのか?それとも攻撃を受けてもビクともしないほどの肉体を持ってるのか?」
獣人だからセリナみたいに素早い可能性もあるから、場合によっては防具をつけないのも納得はいくな。ヘタしたら防具なんて邪魔なだけだろうしな。
「訓練はしているので、大剣だけで攻防する術は身につけています。」
なんか自信があるみたいだな。でも全く強そうに見えない…。
自信がある雑魚は危険だから心を折ってでも従わせるべきだが、今回は俺の仲間になるわけでもないから好きにさせればいいか?
だが、目の前で死なれるのも不快だよな。
「そもそも調査にそんなデカい武器は邪魔なだけだっていっても初めての冒険じゃわからないわな。じゃあ、とりあえず武器防具屋でラスケルに合うサイズの防具を買って、実際に森に入って必要と思ったら使え。最後まで必要性を感じなければ俺が買い取ってやる。」
「…わかりました。」
渋々だが、先輩の意見は一応聞くという姿勢は悪くない。
まぁラスケルに損のない話だからってのもあるか。
「ちなみにいくら持ってんだ?」
「銀貨30枚くらいです。」
市場でラスケルの防具を買ってから森へと入った。
防具屋で魔法繊維でできてるシャツが銀貨38枚だったが、他に良さげなのがなかったから仕方なく足りない分は払ってやった。
少しラスケルには大きめだが、戦闘の邪魔にならない程度だからちょうどいいだろう。
かりにラスケルがいらないってなってもこのシャツなら今後使い道がありそうだから俺も損はせずに済みそうだ。
カリンもラスケルもアイテムボックスを持ってないからとりあえずは俺が持っている。
この森はけっこう木々が密集しているから、素人が連携を取るのは難しそうだな。
それに大剣じゃ振り回すのも大変そうだ。まぁ大剣の不便さと防具の必要性をラスケルにわからせることができそうだからちょうどいいか。
「何かが近づいてきます。」
俺が辺りをキョロキョロと見ながら2人の後ろを歩いていると、先頭を歩いていたラスケルが耳をピクピクさせながら警告してきた。
さすが獣人族というべきか、視界に入ってなくても音でわかるのか。
カリンとラスケルが俺を見るが、そこはとりあえずお前らで判断しろよという意味を込めて顎で示すとラスケルは警戒しながら大剣を盾のように構え、カリンはロッドを前に構えてキョロキョロとしだした。
相手の強さがわからないのだから、カリンはまず強化魔法をかけるべきだろうけど、まぁやり方は人それぞれか。ヘタに攻め込もうとしなかっただけよしとしとこう。
しばらくすると俺の耳にも草をかき分ける音がしてきた。
まだ森に入って1キロも進んでないのにけっこうな数の魔物が近づいてきてるっぽいな。
視界に入った数だけで14体。内9体が急に立ち止まり、5体が多方面から仕掛けてきた。
現れた魔物は狐のような見た目で尻尾が2本生えていた。たまに体表から紫電がパチパチと音を立ている。
狐の魔物は4体が4方面からラスケルを襲い、1体がカリンの背後から飛びかかった。
俺は無視みたいだな。
なかなかに素早い魔物だけど、今のカリンが反応出来ないような速度ではないはずなんだが、魔物を見てから使う支援魔法を選んで詠唱を始めたから、その強化魔法が効果を発揮するのが遅くてラスケルは狐にやられ放題だし、魔法に意識がいったせいで狐の魔物による背後からの攻撃に気づくのが遅れたカリンは気づいてからのカウンターでは間に合わず相討ちのようになり、少しよろけたみたいだ。
一回立て直しだな。
カリンはよろけはしたが大丈夫そうだから放置して、先にラスケルの元に跳躍し、群がる4体を殴り殺してからラスケルにハイヒールを使った。
「防具はいるか?」
「………………はい。」
死ぬ前に防具の大切さがわかったんだから、そんな悲しそうな顔をする必要はないと思うが、ここは何もいわないでやるべきかな。
俺は無言で魔法繊維のシャツを渡して、ラスケルが着たのを確認してから元の場所へと戻った。
狐の魔物はしばらく俺の様子を見るような仕草をしてから、1体がラスケルの元に向かい、残りの8体が俺へと向かってきた。
俺は基本付き添いなんだが、向こうから攻撃を仕掛けてくるなら応えるしかないわな。
狐の魔物が優位な位置を取る前に1番近いやつのとこに飛びかかり、一撃で仕留めた後、次の標的を定めて殺す。
魔物どもが連携を立て直す前に1体ずつ確実にしとめ、あっという間に殺しきった。
カリンは既に倒し終えているようで、ラスケルに支援魔法を唱えている。
ラスケルは…確かに大剣での戦い方を練習したのだろうと思える程度には攻防が出来ている。まぁそれでも弱いことに変わりはないが。
あっ。ラスケルが大剣で横薙ぎにしようとして木に食い込んだ。
ラスケルは咄嗟の出来事にパニクったのか、魔物が口を開けて突っ込んできているのに大剣を離さなかったせいで避けられず、もろに腹に噛みつかれながら体当たりされて吹っ飛んだ。
防具のおかげで魔物の牙は貫通しなかったが、倒れた衝撃で腕をケガしたっぽいな。
魔物は防具を噛みきれないと判断したようで、一度噛み付く力を弱め、今度はラスケルの顔面に食いつこうとした。
仕方ないから助けに入ろうと跳躍してラスケルに近づき、開いた魔物の口に俺は右手を入れ、上顎を掴んで握りつぶし、左拳で後頭部を殴って破裂させた。
俺は血避けの加護のおかげで返り血は浴びなかったが、ラスケルは血まみれだ。
…さすがにちょっと悪いことしたな。
べつに一度ラスケルの上から魔物をどけて殺すくらいの余裕はあったが、ちょっとしたパフォーマンスのつもりでやりすぎた。
まぁこのくらいした方が俺の話を聞くだろうからという判断は間違ってないハズだから些細なことは気にしないことにしよう。
「大剣の不便さは理解できたか?」
「…それでも僕は大剣が使いたいです。」
魔物に殺されかけたのに頑なだな。
「なぜ大剣に拘る?」
「ケモーナ王国最強の戦士に憧れて冒険者を始めたので、これだけは譲れません!」
「そうか。だけど、ラスケルはなんか勘違いしてるみたいだが、ケモーナ最強の戦士だってその任務に見合った武器は使ってると思うけどな。もしくは…ちょっと大剣を借りるぞ。」
「え?」
木に刺さったままの大剣を引き抜き、野球のバッドを構えるように大剣を構えて会心の一撃を発動する。
今回は腕に集中させずに全体に力を込めてフルスイングすると、目の前の木を真っ二つにするだけにとどまらず、触れた木々もほとんど抵抗なく抉った。
「常にこんだけの力を発揮できるなら使い分ける必要がないのかもしれないが、普通は無理だ。」
この大剣は冒険者成り立てが持つにはなかなかいいものみたいだな。
「………………!?」
真っ二つにされて既に倒れている木を呆然と眺めていたラスケルは抉られた木が自重に耐えきれず、ミシミシと倒れている木に視線を移して驚愕していた。
…こいつは俺の話を聞いているのか?
「べつに大剣を使うなとはいってない。その時に適した武器を使えといってるんだ。つっても今は武器がねぇから仕方ねぇが、次からは短剣を使えるようにしといて損はねぇと思うぞ。あと大剣を使いたいなら軽量の加護付きの装備を持っておいた方がいいぞ。」
「…はい。」
「まぁどうしても大剣のみで戦いたいっていうなら、周りに文句をいわせないくらいに強くなればいいだけだ。」
「はい!」
そこまで大剣に拘るか。
まぁ目標があるのはいいことか。
あらためてやる気が出たラスケルが起き上がり、ベルトに付けてるポーチからタオルを出して血を拭っていた。
なるほど。ポーチなら戦闘の邪魔にならなそうだし便利そうだな。
まぁあくまでアイテムボックスのスキルを得るまでの話だけどな。
ラスケルが血を拭い終わってから再出発した。
完全には血が拭えていないがそれは仕方がないだろ。
森を探索していると何度か魔物と遭遇したが、そこそこ強いやつは単体だったり、複数でも3体程度だったから、なんとかカリンとラスケルだけで倒せている。
奥に進むにつれて徐々に魔物が強くなってる印象があったが、30分ほど前から一体も見かけてすらいない。
残念ながらなんの調査結果も得られていないが時間的にそろそろ帰るべきだろうと思ったところで、少し先に開けた場所が見えた。
開けた場所の手前の木の陰にラスケルは隠れて様子を伺っている。
カリンも真似するように木の陰に隠れて様子を伺っていたから、俺もなんとなく真似してみた。
そこは何故か木々がなく、直径100メートル程度のほぼ円形の空間が出来上がっていた。
ほとんど雑草のみなのだが、ちょうど真ん中に岩場に囲まれた小さな水溜りに見えなくないものがあった。
森に入って魔物との戦闘が続き、疲れたところに表れたオアシスといったところか?
「あれは癒しの泉じゃないですか!?」
木の陰から様子を伺っていたカリンが誰ともなしに確認を取っていた。
俺はもちろん知らないが、ラスケルも知らないようだ。
「なんだそれ?」
「この森の奥に不自然に開けた場所があり、その中央にある泉の水はそのまま飲んでも疲労回復効果があるほどで、ポーションを作る際に使用すると効果が増すといわれています。まさにあれのことではないですか?」
「いや、知らんが、カリンはあれが何かわかってんのか?」
「え?だから今、癒しの泉だと説明したではないですか。今回の依頼は調査ですが、実はこれも目当ての1つだったんです。ラスケルくん警戒お願いします。」
ラスケルに警戒するよう頼んで、カリンは木の陰から出て走っていった。
俺はそれを追って、カリンの服を掴んだ。
「ちょっと待てよ。」
「ぐぇっ。」
カリンの首が絞まったようで、変な声を出した。
「何するんですか!」
「いや、お前は馬鹿か?あれは魔物だぞ。」
「え!?」
いや、魔族の可能性もあるか。
岩に似せてるのは多分歯なのだろう。
体は地中に隠して、口を開いて餌が口の中に入ってくるのを待ってるって感じか?
他にカリンがいう泉が存在して、それを真似て餌を待ち伏せしているのか、本当にあの水がそういう効果があって、たまたまそれをゲットできた冒険者がいたのかはわからないが、俺も観察眼がなければわからないくらい擬態がうまいな。
でもさすがに獣人のラスケルは気づいてんだろうなと思ってラスケルを見ると、驚いた顔をしていた。
「もしかしてラスケルも気づいてなかったのか?」
「…はい。どこに魔物が隠れているのか今でもわかりません。耳には自信があるので、現れればすぐに気づけますが、完全に息を潜めて隠れられると見つけるのは難しいです。」
なんか微妙に話が噛み合ってないがまぁいい。
一度木陰に戻ってから、カリンとラスケルを見るが、そういやこいつら遠距離攻撃できるようなスキル持ってねぇんだったな。
じゃあ仕方ねぇから俺がやるかと思い、どの魔法にしようかと考えて、ふと思い出した。
念話をSPで取った際に見つけた新しい魔法を。
SPは大量に余っているから、迷うことなく俺はそれらを全て取った。
超級魔法シリーズを。
前に上級魔法を全て取った時には表れてなかったから、何か条件があったのだろう。
だが、いつの間にかその条件を満たしていたようで、念話を取るときには既に表れていた。
あの時はそれどころではなかったから後回にして忘れていたが、今ならちょうど試す相手もいるし、7つ全て取った。
種類は初級、中級、上級とは1つを除いて全部違った。
今まで共通だった火とか水とかではないようだ。
名前でなんとなく想像することが出来るが、一応鑑定しておくか。
超級魔法:溶岩…溶岩を作り出す魔法。
超級魔法:嵐…嵐を発生させる魔法。
超級魔法:雷…雷を落とす魔法。
超級魔法:隕石…隕石を落とす魔法。
超級魔法:太陽…擬似太陽を作る魔法。
超級魔法:扉…目的地と扉を繋げる魔法。
説明文は簡素だが、超級っていうだけあって凄そうな魔法だな。
しかも最後のってワープ出来るってことか?だとしたら迎えに来てもらう必要がなかったっぽいな…いや、上級魔法の空間であれだけMPを消費したんだから、今の俺のMPじゃまだ使えないとかそんなオチだろうきっと。
じゃないとアリアに申し訳なさすぎるからな。
だから試すのは村に戻ってからにしよう。
そして1つだけ名前が引き継がれてるのが逆に怖い超級魔法も鑑定しておくか。
超級魔法:闇…指定した生物の精神を侵す魔法。
やっぱり碌なもんじゃなかったな。
これは使っちゃならない魔法だろう。
念のためジョブが増えてないかを確認したら、ちゃんと新しいジョブがあったから迷わず取得。
魔王…魔法を使う者に適したジョブ。上限はない。
これで俺も魔王か。イーラやサーシャと同じになっちまったな。
まぁ実際は魔族の王様的な意味ではなくて魔法の王様的な意味なんだろうけどさ。
さっそく設定したいが、代わりに何を外そうかと思いながらジョブを確認すると、上限のない戦闘狂以外がカンストしていた。
ちなみに戦闘狂はLV145だ。
魔術師を外して魔王を設定し、一度魔王をファーストジョブにしてみて驚いた。
魔王LV1で魔導師LV200の8割くらいのステータスだった。他のLV1と比べたらまさに桁違いだろう。
でも現時点では魔導師の方がステータスが高いから、ファーストジョブを魔導師に戻しておいた。
「カンノさん?」
長い間無言でいた俺に疑問を持ったのか、カリンが声をかけてきた。
「悪い。攻撃の準備をしてた。」
さて、そろそろ超級魔法の試し撃ちといきますか。
どれにしようか…これでいいか。
『超級魔法:雷』
ズドンッ!!!!!
魔法名をいい切るのとほぼ同時に目の前に雷が落ちてきた。
光と音がほぼ同時にくる雷なんて初めて見たな。
しかも耳がぶっ壊れるかと思った。
眩しくもあったが、目は何故か平気そうだ。
この魔法は落下地点と雷の威力を選べるみたいだな。
威力はいじらなかったんだが、魔物は一撃で死んだようだ。
魔物は雷のせいで地面から少し出てきているうえにピクピクと痙攣しながら口が閉じかけてるから擬態が不完全になっている。
これならカリンとラスケルも魔物だとハッキリわかるだろ。
…あれ?2人は?
隣にいたはずの2人がいないことに気づいて辺りを見ると、後方に吹っ飛んでいたようだ。
死んではいないが、こいつらもピクピクと痙攣してやがる。
俺の魔法だから俺は感電しなかったみたいだが、これは近距離に落とすと仲間を巻き込む可能性があるのか。気をつけねぇとな。
さて、そんなことよりそろそろ現実を見ないとな。
やっちまった感が半端ないから無視していたが、早くどうにかしないとやばいっぽいな。
端的にいえば山火事だ。
どのタイミングで木が燃えだしたのかは見てなかったが、間違いなく超級魔法のせいだよな…。
ここはもう1つ試してみるか。
MPはまだ70%くらいあるから大丈夫だろう。
『超級魔法:嵐』
…不発?
いや、でもMPはガンガン減ってってるぞ?それになんか暗くなってきたし…暗い?
疑問に思って空を見上げると、曇りだしていた。そして空からポツポツと雨が降ってきた。
そういやこの世界に来てから初めての雨なんじゃねぇか?
そんなことを思っていたら、雨がだんだん強まり、風が強くなってきた頃にはシャレにならない量の雨が降ってきた。
山の天気は変わりやすいっていうけど、変わりすぎだろ。
これがスコールってやつか?
しかも風もやばい。
風の勢いが良すぎて火が強まったり広がったりするんじゃないかと心配したが、杞憂だった。
木々を燃やしてた火は雨のおかげで消えたけど、この自然災害は辛いな。
初めての悪天候が度を超えてるんだが…。これじゃあ嵐だな。
…嵐?
………………もしかしてこれって俺の魔法なのか?
確かにMPはいまだに減り続けていて、既に残り40%を切っている。
試しに超級魔法のリンクを切ってみると雨が徐々に止んでいき、風もおさまった。空の雨雲も散っていき、いつもの青空と白い雲だけとなった。
…マジかよ。超級魔法は天候までいじれるのかよ。
てっきり嵐のようなものを発生させるのかと思ったら、まんま嵐じゃねぇか。
しかも術者の俺までびしょ濡れだ。
まだ2つしか使ってないけど、超級魔法は危険すぎんだろ。
その分MPの減りが尋常じゃないから魔王でないにしても、せめて魔導師の高レベルでもなければ使えるものじゃないだろうけどな。
まぁ山火事にならずに済んだし、もう時間も遅いし帰るか。
最後に倒した魔物はただの雑魚ではなかったっぽいから、もしかしたら今回の森がおかしい原因かもしれないし、倒した証拠として持って行ってみるか。
関係なかったら明日のイーラへのプレゼントってことにすりゃいいしな。
持ち帰るため魔物に近づいて、地面からはみ出た部位を掴んで引っこ抜くと、けっこうデカい魔物だった。
ちょっとカバに似てるな。
重いしデカいから引きずることになるけど、まぁいっか。
いざ帰ろうと思ってカリンとラスケルに目を向けると、さっきの場所からいなくなっていた。
どこに行ったのかと辺りを見るとさらに吹っ飛ばされていたようだ。
たぶん俺の魔法のせいだろうから悪いことしたなと思いながら近づくと、いまだに痙攣してた。
状態異常になってるのかと思い、鑑定すると麻痺となっていた。
どうするかな…。
抗麻痺丸や毒消し丸は常に10個ストックするようにしているから持ってはいるんだが、なんで俺のアイテムを使ってやらなきゃならないんだ?
昨日は毒だったから仕方なく使ってやったけど、麻痺ならほっときゃ治るかもしれないし、治らなきゃ治らないで薬を用意してなかったこいつらの自業自得だ。
この馬鹿でかいカバみたいな魔物を持ってくならガキが2人増えたくらいじゃ手間はかわらないだろ。
『ハイヒール』
『ライトヒール』
けっこう怪我をしていたラスケルにはハイヒールをかけ、たいして傷がなさそうなカリンにはライトヒールをかけてから、魔物の上に乗せた。
途中で落ちたら面倒だから、鞭を使って軽く固定しておいた。
さて、帰るか。
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