裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

130話



「今さらだがここって何階なんだ?」

煙人間を出す虫みたいなやつを倒した後すぐに目玉に足が生えたようなやつとでくわし、今までのではなくそいつの目が水晶になるとのことで、回収するために目を傷つけずに倒すのに一苦労したってのがあった。
その後はとくに変わったこともなく階段を4つほど上ったのだが、まだ外に出れていない。

そこでふと思ったのが、この女は自らの意思でここにきてんだから、階層くらいは知ってるんじゃないかということだ。

「えっと…38階から1つ下りてから4つ上ったから…地下35階です。」

なんだと!?まだそんなにあるのかよ。
けっこう魔物が弱くなってきたからもうすぐだと思ったが、下手したらまたどっかで寝ることになるかもな。

というか俺は地下55階から1人で上ってきたのか…よく生きてたな。





今は30階か。

あれから無言で進み続けたが、この女とその元連れどもに会ってから誰にも会っていない。

これは他の奴らのリスタートに便乗するという期待は持たない方がいいかもな。

そうなるとこのペースじゃもう一度寝ないと厳しいな。
たぶんまた睡魔に負ける。

だけど、戦えないこいつに見張りをさせて寝るのは怖いんだよな。

チラリと女を見ると歩きながらウトウトしてやがる。

俺の後ろをついてきただけなのになんでそんなに疲れてんだよ。

まぁいい。先にこいつを寝かせて、その後に寝ればいいだろう。

今までダンジョン攻略なんて経験値稼ぎくらいにしか思ってなかったのに、1人で入るとこんなに大変だったとはな。
そりゃみんなパーティーを組むわけだ。

そう考えるとソロでやってるあのロリコンは凄いのかもな。
あいつの場合は誰も近づかないから強制ソロプレイなだけだけど、それでも冒険者を続けられる実力があるってことだもんな。

ロリコンのことは今はどうでもいいか。

「おい。ここにちょうどいい窪みがあるから、ここで交互に寝るぞ。先にお前が寝ろ。起きたら交代だ。」

頑張れば2人入れるくらいの窪みに犬型の魔物の毛皮を敷き詰めて、寝床を作りながら指示を出した。

「私は…大丈夫です…。」

うつらうつらとしながら返事をしてきたが、こいつは大丈夫の意味を理解して使ってるのか?

「いいから寝ろ。この後俺が寝るのにその状態のお前に命を預けるなんて出来ねぇからよ。」

女は寝床を完成させて立ち上がった俺の隣に立って、二の腕を握ってきた。

「…やっぱり私は邪魔ですか?」

置いてかれると思ったわけか。
そりゃ初めて会ったやつのことなんか信用出来るわけないわな。特にこいつは裏切られたばっかだし。

「まぁ戦闘だけでいうなら邪魔だな。だけど外に出るまで無睡で戦い続けるのは俺にはたぶん無理だ。だから俺が寝る時の見張り役として必要だから置いて行きはしねぇよ。」

女は眠すぎて働かない頭を使って悩んでいるみたいだな。
悪いがそんな無駄なことに時間を使わせる気はねぇ。

「いいから寝ろ。あと、チーム設定するからな。」

「?」

なされるがままに寝かされた女は首を傾げているが知ったことではない。

チーム設定も終わったし、まだ寝ないようなら中級魔法の電で気絶させようと思ったら、もう寝てやがった。

よっぽど疲れてたんだろうな。

さて、俺が寝るときに生き残る確率を少しでも上げるために魔物狩りといきますか。






もしかしたらこの階層の魔物は狩り尽くしたんじゃねぇか?

ダズルアトラクトを発動しながら徐々に行動範囲を広げたんだが、思った以上に魔物が集まってきた。

数は数えてないが、この数時間で30体は倒したはずだ。
行動範囲でいえば、マップを3分の2は埋めている。

まぁ窪みから離れたことは悪いと思うが、ちゃんと少しずつ範囲を広げたし、結果無事だったから文句はないだろう。

これならこの窪みまでくる魔物は限られたはずだ。

もう疲れたから早く寝たいと思っていたら、女が目を覚ましたようだ。

「ちゃんと寝れたか?」

「…はい。ありがとうございます。」

女は寝ぼけているのかぼーっと俺を見ながらゆっくりと返事をして、目をこすった。

「じゃあ交代だ。そこをどけ。」

「あっ、はい。」

女はノロノロと俺に場所を譲った。

空いたスペースに横になると、女は俺の隣で横になり、新しく出した犬型の魔物の毛皮を自身と俺に被せた。

「お前…それで寝ちゃったから魔物の攻撃を防げませんでしたとかなったら呪うぞ。」

「大丈夫です。緊張して寝れそうにないので。」

意味がわからないが、まぁいいか。
この階層の魔物はけっこう狩ったし、この階層の魔物程度じゃ寝ているからといって、首を嚙みちぎりでもしなければ俺を一撃で倒せるほどの強さはなさそうだったしな。

位置的に先にやられるのは女の方だし、なんとかなるか。
寝たせいで女が死ぬぶんには自業自得だしな。

「ならいい。おやすみ。」

「おやすみなさい。」

まさかダンジョン内で2泊3日の冒険をすることになるとはな。








今回も無事に起きれたようだ。

ただ、隣の女も寝てるがな。

…もう置いていっちまうか。

「起きろ。」

寝てる女の額にかるくチョップをしたのだが、念のため寝てる間もつけたままにしていたガントレットを外すのを忘れてた。

「 ︎」

女は目を見開いたかと思ったら、目を強く閉じて、額を押さえて蹲った。

顔面が凹んだわけじゃないから大丈夫だろう。
見張りのくせに寝てたのが悪い。

蹲ってる女を跨いで外に出て、思いっきり伸びをした。

身体中からポキポキと音がなって気持ちいい。

さて、進むか。

「え?いや、待ってください!」

1人で歩き始めたことに気づいた女が走ってきた。

「見張りも碌にできないやつなんかを待ってやる優しさは持ち合わせてねぇ。」

そういやもう必要ないから、チーム設定は外すか。

「そ、それは…ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

「結果生きてるからもういい。そもそもついてきたきゃ勝手について来いって話なんだから、俺の好きに進んで何が悪い?」

「あ、えっと…そうですね…。」

思い出したのか、渋々ながら納得したようだ。




しばらく無言で歩いたところで、ふと思った。
こいつから情報を得れば、この移動時間が無駄にならねぇんじゃねぇか?

「いくつか聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「え?あ、はい。」

「この国の名前を教えてくれ。」

「え?このダンジョンがある場所ですよね?ならフォーリンミリヤです。」

うん。聞いたことない。

「アラフミナ、ケモーナ、ガンザーラ、クローノスト、カゲロア、この中でここから1番近い国はどれだ?」

「ごめんなさい。この国の外のことは私は全く知りません。」

マジかよ…使えねぇやつだな。

「じゃあダンジョンから出たら、1番近い栄えてる町の場所を教えてくれ。」

「それなら知っています。」

これ以上は聞いてもたいした答えは返ってこなそうだな。

栄えてる町なら冒険者ギルドがあるだろうし、詳しいことは冒険者ギルドで聞けばいいだろう。

移動時間を無駄にしない努力は数分で終わったな。
もうここから出ることだけ考えて進むとするか。

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