裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

117話



ロリコンが出たのと入れ替わるようにギルドに入ってきた男が、周りをキョロキョロと見てから俺と目が合うと近づいてきた。

また変なのに絡まれるのかと少し警戒したが、どうやら本命のようだ。

「お待たせしてしまい申し訳ございません。リキ・カンノ様でお間違いないでしょうか?」

「そうだが、あんたは案内役か?それともここで説明が始まるのか?」

癖っ毛が目立つモッサリした髪をした少年は眼鏡の位置を調整してから一礼した。
年齢は俺と同じくらいか?
なんか優等生オーラが出ているからか、俺とは合わなそうだな。

「申し遅れました。本日案内役を務めさせていただきます。ルモーディア・アラフミナ第三王子の秘書見習い、クロッパ・デーロです。よろしくお願いいたします。」

「案内役なら早く案内してくれ。」

これ以上変なのに絡まれるのはごめんだからな。

「かしこまりました。それでは外に馬車を止めてありますので、こちらにどうぞ。」



クロッパに連れられて外に出ると、馬車が4台止まっていた。
多すぎねぇか?

「カンノ様のお連れ様が11名いらっしゃると伺っていましたので、最大人数でも対応できるよう手配いたしました。」

そういや何人で行くとはいってなかったからな。

この馬車は4人乗りらしく、一台にクロッパ、俺、アリア、イーラ。もう一台にセリナ、ヒトミ、サーシャ、ウサギが乗って進みだした。

クロッパは移動中に現在の状況や今回の参加戦力、今後の予定や俺たちへの依頼内容の確認などを書類とにらめっこしながら一生懸命話していた。

現在の状況以外はアリアから聞いていることとほぼほぼ変わりなかったから、俺はクロッパの話をBGMとして、馬車の窓から見える街並みを堪能していた。

クロッパは書類を読むのに一生懸命で、俺が聞いていないことには気付きそうもない。こいつはしばらく見習いから抜け出せなさそうだ。なんちゃって優等生くんだったみたいだな。







途中から外を眺めても建物ばかりでつまらないなと思っていたら、どうやら到着したようだ。

それにしても馬車ってけっこうケツが痛くなるんだな。イーラに慣れてるからかもしれないが。


目的地は町のど真ん中に建っていた城だったみたいだ。
王都の真ん中の城だから、たぶんここがクローノストの王城なのだろう。
王族が住むところに素性もわからない俺なんかを入れていいもんなのかね。
いや、今はアラフミナの王族の紹介で来てるから怪しいやつではないのか。

そんなことを考えながら、クロッパの後ろについていくと、入り口から割と近い位置にある一室に案内された。

「こちらがルモーディア様のお部屋となります。」

クロッパは説明してすぐに扉を開けた。
ノックとかいいのか?


「クロッパ!勝手に扉を開けてはなりません!必ずノックをするようにと申しているでしょう!」

「ごごごめんなさい!」

まぁそりゃ怒られるわな。

「まぁよい。入れ。」

「し、失礼します!」

クロッパが入るのについて、俺たちも軽く会釈だけして入った。

「それでは秘書と護衛たちは下がっていてくれるか?」

「ルモーディア様!?」

秘書と護衛が慌てている。特に護衛は何かをいいたくて口をパクパクさせている。

「よい。下がれ。」

「は!」

部下たちは二度目の命令には素直に従った。

全員が部屋を出て、扉が閉まる。


「わざわざ足を運んでもらってすまないね。本当なら私が冒険者ギルドまで行くつもりだったんだけど、さすがに良くないとのことで、秘書見習いの彼に行ってもらうことになってしまったんだが、迷惑はかけなかったかい?」

さっきまでは王族って雰囲気が出ていたが、部下がいなくなったら気の良さそうなお兄さんって感じになった。
見た目は20代半ばといった感じで雰囲気とも違和感はないが、これが本当のこいつなのか?

「特に迷惑はかけられちゃいない。」

「それなら良かったよ。」

第三王子は人の良さそうな笑顔で答えて、話を続けた。

「カンノくんの話は妹からいろいろと聞いているよ。ちなみに妹ってのはローウィンスの方ね。聞いた話から判断して、この話し方の方が君にとっては話しやすいかなと思ったんだが、どうだい?」

へぇー。王族にもまともそうなやつはいるんだな。こいつの評価は改めた方が良さそうだな。

「気遣い感謝する。それで俺はこれから魔王を倒しに行けばいいのか?」

「本当はそれがいいんだろうけどね。私の力が及ばなくて、決行は明日となってしまったんだよ。この後の作戦会議で詳しい説明があると思う。」

「なら魔王の件はその時に聞くとする。あと気になったんだが、何故大災害に関わる事案に対して、第三王子なんだ?」

「ハハッ。君は痛いところを突いてくるんだね。まぁこれはきっと妹の策略だろうね。」

妹ってのは第三王女のことだよな?

「どういうことだ?」

「本来、勇者の関わることに関しては全て妹が行うという約束なんだよ。まぁ約束といっても私たち家族の間での決め事なんだけどね。姉ともう1人の妹…つまりローウィンスの姉2人は既に結婚しているし、勇者が大災害を乗り越えたときの報酬で出せる姫がローウィンスしかいなかったからなんだけどね。それに妹は勇者に憧れを持っていたからちょうど良かったんだ。だから2人の仲を良くする意味も兼ねての約束なんだよ。だけど、今回の勇者も妹のお眼鏡には叶わなかったようでね。」

ハハハッと乾いた笑い声をあげた。

「それに、妹は頭が回る。タチが悪いことにね。ちゃんと約束である勇者の面倒は見つつも何かと理由を作って勇者には会わないようにしているんだよね。まぁ周りからは怪しまれていないようだけど、妹の性格からしてわざとだろう。今回も魔王誕生が発覚して発表されるまでの間に運が悪いことに・・・・・・・ゴブキン山の山頂の魔物の討伐予定を組んでしまったから、アラフミナから離れられなくなってしまったみたいだしね。魔王の話は発表まで妹は知らされていないことになっているから疑われてはいないんだけど、怪しいと思わないかい?」

ゴブキン山の山頂の魔物の討伐って邪龍の討伐のことだよな?
でもあれって俺らがゴブリンキングを討伐したから急いで予定を組んだんじゃなかったか?
いや、疑おうと思えばいくらでも疑えるな。

「私が妹からいろいろと話を聞いているから疑っている部分が大きいんだけどね。まぁ可愛い妹を無理に勇者に会わせたいってわけではないから好きにやらせているんだけどね。それで、ちょっと君の質問からズレてしまったかな?私がここにいる理由だが、ローウィンスは来れなくて、他の姫は勇者に会わせるわけにはいかない。兄たちは他のことで忙しいから消去法で私というわけだ。だいたい妹の尻拭いをするのはいつも私なんだよ。」

「大災害より優先させることがあるのか?」

といっても俺は大災害自体をよく知らねぇんだけどな。

「ハッキリといってしまえば他国の危機に手を貸してあげている状態だから、兄たちは動こうとは思わないんだろうね。でもアラフミナが危険になったら兄たちは真っ先に動くだろうから、大災害を甘く見ているわけではないよ。」

まぁ疑問に思ったから聞いただけで実際のところはどうでもいいんだけどな。

俺の村にさえ被害が出なければな。

「それに今回は勇者だけじゃなく君たちまで戦力を貸しているんだから、クローノストから感謝こそされても文句をいわれる筋合いはないよ。まぁ君からの文句は甘んじて受け入れるしかないけどね。」

「べつにあんたが指揮をとることに文句はない。」

むしろこいつは嫌いじゃない。
どこまで演技かはわからないが、なんか不思議と好感が持てるやつだ。

「それなら良かったよ。それと1つだけお願いがあるんだ。」

「なんだ?」

「この後の会議や部下のいる前では言葉遣いを繕うことはできないかい?一応私にも立場があるし、クローノストの王族は無駄にうるさいからね。それにうちの勇者はプライドだけは無駄に高いからさ。」

こいつも苦労してんだな。
まぁ本来なら王族からの願いだ。聞き入れて当然だろうけど、この頼み方からして俺が素直に聞き入れないことは知ってんだろうな。

「言葉遣いを変えるのは疲れるから好きじゃねぇんだ。それに俺が受けた依頼は魔王討伐だ。それでも変えろというのなら別料金が発生するぞ?」

第三王子はニッコリと笑って懐を漁った。

「妹がいっていた通りだな。私は君みたいなやつは嫌いじゃないぞ。ほれっ、私金だ。これで頼むよ。」

第三王子が放った金貨2枚を空中でキャッチして、アイテムボックスにしまった。

「かしこまりました。」

俺は右手を胸に当て、一礼した。






第三王子の秘書が先頭を歩き、その後ろに第三王子、その少し斜め後ろに俺、その後ろにアリアたちが続いて廊下を歩いている。

しばらく歩くと会議室に到着した。

俺らは冒険者として連れてこられてるから武器を装備さえしてなければ他は身につけたままでいいらしい。

だから俺はガントレットを腰につけたまま、チェーンメイルを着ている。
まぁスーツとか礼服なんて持ってねぇしな。

秘書がノックをすると中から扉を開けられた。

秘書は中には入らないらしい。
アリアたちも中に入ることは許されないらしい。俺の仲間とはいえ奴隷だからといわれたから仕方がないが、アリアなしで真面目な話を聞くのは久しぶりだな。

第三王子に続いて中に入ると知らない奴らばかりだった。当たり前か。


「あ!お前!なんでここにいる!?」


いきなり声をかけられたが、誰だ?
その話し方で第三王子に向かっていっているってことはないだろうから、俺に対してで間違いないだろう。だが思い出せん。
アリアがいないことで早くも支障が出るとはな。

知ったかをしてもあとあと面倒になりそうだから、正直にいうべきだろう。

「申し訳ございません。どちら様でしょうか?」

「はぁ!?僕を忘れたというのか?勇者である僕を!?」

勇者…あぁ、思い出した。確かにこんな顔だったな。

「すぐに思い出せずに申し訳ございません。たしか馬鹿島ばかしま様でしたね。ハッキリと思い出しました。」

「んな!?なんでお前がその呼び方を知っている!?」

「冬馬・鹿島…確かに馬鹿島だ。」

顔を真っ赤にしている勇者を無視して、テーブルを挟んで勇者とは反対方向にいる男が納得して笑っていた。

「あれ?でもこれがわかるってことは君も日本人なのかい?」

勇者の対面の男が確認を取ってきた。
やべぇ地雷を踏んじまった。
いや、この国にもバカって言葉はあるから問題ないはずだ。

「申し訳ございません。何をいっているのかはわかりませんが、喧嘩を売っておいて一撃で白目を向いて気絶する姿を見たときに間違って覚えてしまっただけで、他意はありません。」

勇者の対面の男は俺の話を聞いてさらに笑い出した。

勇者は恥ずかしいからか、顔を真っ赤にしたまま黙った。

これで上手く誤魔化せただろうと思っていたら、第三王子から「できれば喧嘩を売るのもやめて欲しい。」と小声で頼まれてしまった。
喧嘩を売ったつもりはないが、金貨2枚ももらったのだから気をつけよう。

「君は面白いな。もしかして君が今回のスケットの冒険者かい?」

久しぶりに鑑定を使うと阻害されて名前すら見れなかった。

「それは良くないよ。名前を知りたいのなら自分から名乗るべきじゃないのかい?」

さらに鑑定を強めようと思ったら釘を刺された。
鑑定したのがバレたのか?

「なんのことをいっているかはわかりませんが、最初の質問に答えるなら、私がルモーディア様に呼ばれて参りました冒険者です。」


「そうかい?…そうだね。確かにシラを切るのが一番賢い選択だね。なんせ証拠がないからね。でも、君はそういったスキルを持っているという警戒を相手に与えてしまうから、無闇に使わない方がいい。というアドバイスだけしておくよ。早く会議を始めたいからね。」

なんかこいつはあまり関わりたくねぇな。
年齢は俺より少し上くらいだろうが、不気味さがある。

見た目は爽やか系男子って感じなのにドス黒い何かを感じる。
このギャップにむず痒さすら感じてしまう。

どうせ今後関わることなんてねぇんだから。考えるのはやめよう。



第三王子が手振りで示した席に座ると会議が始まった。

会議の内容はクロッパが馬車で話していたのとほとんど同じ内容だった。

違う点といえば今騎士の特別編成部隊が偵察に行っていて、それが夜には帰ってくるのだが、俺らはその人らと翌朝一緒に魔王の元まで行くらしい。

それで討伐して帰ってくるだけだとさ。

ずいぶん簡単にいってくれるな。
まぁ依頼を受けたからにはなんとかするけど、特別編成部隊ってのが邪魔だな。
これじゃあイーラは戦わせられないじゃねぇか。

ん?別に見られてもいいのか?
いや、そもそも門を通ってないイーラ自体を見られるのがまずいんじゃねぇか?

…まぁバレたらバレたでいいや。めんどくせぇ。


あ〜ぁ。早く会議終わんねぇかな。

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