裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

110話



今、暴食っていったよな?

お揃いってのが禁忌魔法じゃないかとは思ったが、まさかの暴食か…確かにイーラが暴食ってのはしっくりくるにはくるが…。

「アリア。禁忌魔法ってのはそれぞれ世界に1つしか存在しないんじゃなかったのか?」

「…そのはずです。遠い昔に封印され、禁忌魔法とつくスキルは世界に1つずつしか存在しないはずです。」

「じゃあ封印が解けたってことか?」

だとしたら憤怒も嫉妬も複数の所持者がいるってことか?
それならそれで希少性が薄れるから、いいっちゃいいかもな。

「…いえ、もし封印が解けたのだとしたら、禁忌魔法という名前が外れているはずです。ですが、イーラは『禁忌魔法:暴食』といっているので、封印は解けていないと思います。なので、暴食の孤児が亡くなられたのかと思います。」

「亡くなったって、国が抱え込むような強…。」

そういえばおっちゃんがいってたな。
暴食の孤児がいる国とクルムナが戦争をしてるとかなんとか。

戦争ともなれば禁忌魔法使いが出てきてもおかしくない。むしろ戦争のためにいるようなもんだろう。

そこで死んだってことか?

なんでこんなタイミングで死にやがる。
そのせいでイーラまで禁忌魔法を手に入れちまったじゃねぇか。

「そもそも暴食の孤児ってそんなすぐ死ぬほど弱いのか?」

禁忌魔法は使えたことも見たこともないから、禁忌魔法使いが強いってのもイマイチわかんねぇんだよな。

「…わたしは暴食の孤児を直接見たことがないのでわかりませんが、弱いということはないはずです。」

じゃあクルムナがかなり強いってことか?
まぁ鍛治師が多いってことはそれだけ武器も豊富だろうから、戦争に向いてそうな国ではあるな。
もしかしたら核兵器みたいなもんとか作ってるかもしれねぇし。

「イーラを無視しないでよ!禁忌魔法を持ってるのはリキ様とイーラなんだよ!なのになんでアリアばっかり話すの?」

イーラがわけわかんないことをいい始めたな。

「…イーラ。残念ですが禁忌魔法を持っているのはイーラだけではありません。わたしも持ってますよ?それもイーラよりもずっと前から。」

え?アリア?別に自慢することじゃないし、バレたらまずいとかいってたのはアリアじゃなかったか?

みんながさらに驚いた顔で見てるし…。

「むぅ…。なんでいつもアリアが先なの?ズルイよ!」

「…リキ様の第一奴隷ですから当然です。」

「ちょっと待て。俺が禁忌魔法を与えてるんじゃねぇんだからそれはおかしいだろ?というより、そんな簡単に口にしていいことじゃねぇよな?誰かに聞かれたらどうすんだ?」

「「…ごめんなさい。」」

2人ともがシュンとしてしまった。

「全員、このことは他言無用だ。セリナ、近くに誰かいないよな?あとアオイ、魔法の類で聞き耳立てられてるかとかわかるか?」

セリナが耳と鼻をピクピクさせながら辺りを見渡している。

「リキ殿。妾がわかるようなものは何もないのぅ。だが、それで安心はしないでほしいぞ?そもそも妾は魔法感知に特化してるわけではないからのぅ。」

前に魔力の干渉がどうのとかいってたから、そういうのがわかるのかと思ったが違うのか。

「たぶん誰もいにゃいと思うよ〜。」

「そんなに心配なら、我の眷属を飛ばして探してやろうぞ。」

いうが早いか、サーシャは真っ黒なコウモリのようなものを20体ほど作り出して、周囲に飛ばした。

セリナが大丈夫だっていった時点でもう大丈夫だろうと思ったが、まぁ確認のし過ぎがダメってことはないし、やる気があるならやらせとくか。

「じゃあ頼んだ………おい、サーシャ。そいつは誰だ?」

サーシャの影に隠れるような位置にアリアくらいの少女が1人立っていた。

このローブは魔術組合のやつじゃねぇか?生き残りか?

「こやつはリキ様の許可が出たら我のオヤツにしようと思った女子よ。」

サーシャは少女の頭に手を置いて、俺に見えるように前に立たせた。

オヤツといわれた少女は自分の立場を今知ったかのようにオロオロし始めた。

こいつは冒険者ギルドを出た時にサーシャが欲しがってたやつじゃねぇか。
どさくさに紛れてさらったのか?

「ダメに決まってんだろ。」

「なぜ!?我が助けなければイーラに食われていたのだぞ?ならその助けた命は我の物ではないのか?それにリキ様に攻撃した内の1人なのだからどうせ殺すのだろ?なら血だけでいいから我にくれぬか?」

少女はサーシャの発言に恐怖したのか、かなり体が震えてる。マナーモードのバイブみたいだな。今にも泣きそうだし。
見ていてちょっと可哀想になるレベルだ。

「使い魔であるサーシャの物は俺の物だろ?なら俺がダメだっていってんだから諦めろ。ってかそいつはまだガキじゃねぇか。俺は結果的に死んでねぇんだから、ガキの一度の過ちくらいで殺しはしねぇよ。それに魔術組合も武術クラブも全滅で俺らだけ全員無事じゃおかしいだろ?だからこいつには魔術組合は自爆して、武術クラブはそれに巻き込まれたって真実・・をちゃんと証言してもらわなきゃならねぇからな。」

できるよな?と問いかけながら少女を見ると、赤ベコのように何度も頷いた。そして目にためた涙がポロポロと溢れ始めた。

「一応いっておくが、今聞いたことだけじゃなく、俺らのことは全て他言無用だからな。もし情報漏洩したら、真っ先にお前を疑うし、その時は楽には殺さねぇからな?」

ガキ相手に脅しなんてしたくはないが、こっちは仲間の命がかかってるからな。
仲間のためならガキとはいえ、他人の精神衛生なんか知ったことではない。

少女はさっきからずっと頷きを繰り返しているから、本当に聞いているかが怪しいな。

「わかったなら返事をしろ。」

キツくいったつもりはないんだが、少女はビクッと体を硬直させた。

「…はい。」

少女は小さな両手でローブを握りしめ、声を絞り出して返事をした。

「わかればいい。一応他の魔物もいるだろうから町までは送ってやる。だからもう泣くな。」

少女は手の甲で目を擦りながら鼻をすすって我慢しようとしているが、泣き止む気配がない。
まぁ町に着くまでには泣き止むだろう。

「…リキ様。実はローウィンス様に山頂の魔物の討伐が終了したら、リキ様の村に来て欲しいといわれています。なので、町までその子を連れて行くのは難しいかと思います。」

「別に話が終わるまで待たせとけばよくないか?」

「…既に次の依頼が入っているため、そのまま現地に向かうことになってしまうので、町に行くのは難しいかと思います。村まで連れて行けば、あとはその子が1人で帰れると思います。」

は?

「いや待て。俺は山頂の魔物の討伐以外に依頼を受けた覚えはないぞ?勝手に受けたのか?」

アリアに連絡係は任せたが、勝手に依頼を受けていいなんていってないと思うし、アリアが勝手なことをするとは考えてもいなかった。

「…いえ、まだ受けてはいません。ですが、この依頼は受けて欲しいです。」

アリアがそんなワガママをいうのは珍しいな。
内容によっては受けてやるか。

「どんな依頼だ?」

「…魔王の討伐です。」

「は?そんな危険なことにわざわざ首を突っ込みたくねぇよ。それに魔王討伐は勇者の仕事だろ?いい待遇を受けてんだから、最低限の仕事はさせろよ。」

別に俺は英雄になりたいわけでも勇者に憧れてるわけでもねぇから、そんな危険なことにかかわりたくねぇ。
それにそろそろ断らねぇと第三王女はなんでも依頼を受けてくれると勘違いしかねねぇしな。

「…今回の討伐対象である魔王は強くないまま魔王に昇格してしまったタイプのようで、魔王自体はそこまで強くないそうです。ただ、話によると強い魅了のスキルを所持しているようなので、アラフミナの勇者では使いものにならないそうです。ですが、リキ様でしたらサーシャの魔眼すら効かないようなので、なんの脅威もないと思います。」

それでもわざわざ受ける必要はないだろう。
なんでアリアはこの依頼を受けて欲しいと思ってんのかわからねぇな。

「…それに今回は他国からの応援要請を受けているため、報酬が出ます。今回の魔王は大災害に関連していると思われるので、少なくとも金貨10枚は出るはずです。」

「しやーねぇな。とりあえず第三王女の話くらいは聞いてやるか。」

「…。」

いや、アリアから頼んできたのに黙るなよ。
…まぁいいか。

「ということで、悪いな。森の外までは送ってやるが、その後は自力で町に帰ってくれ。」

アリアも森の外まで送ることには文句はないようだ。

「ありがとうございます。」

少女もそれで大丈夫のようだ。
お礼がいえるくらいには落ち着いたようだしな。

そしたらさっさと龍の素材を回収して、村に行くとするか。

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