裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
97話
外壁だけでなく建物や道が全て石造りで、町の所々に小さな川が流れているようだ。
風景などにさほど興味のない俺でも感嘆の声が漏れてしまうほどの町。これがガンザーラという国の首都の第一印象だ。
ゾンダ村を出る際に昨日の村長らしき爺さんに待ち伏せされ、お礼と称して魔除けの加護が付いたお守りとラビケルの干し肉をもらったり、名前を聞かれたから答えたり、下僕の盗賊に森の中のゴブリンを極力倒してレベルと技術を上げとくように指示したりといったことはあったが、他には特に問題も不快なこともなく、ガンザーラの首都に来ていた。
イーラはまた短剣にさせておいたが正解だった。
この町に入る際はステータスチェックをされるみたいだ。
国が違うのだから町に入るときのチェックが違う可能性を考慮しておいて良かった。まぁアリアに助言されただけなんだがな。
しかもなぜか魔法を使うように指示されたからてきとうに魔法を使ったら、無詠唱だと驚かれた。SPで誰でも取れんだろ。
それでなんかマークの付いたネックレスを首につけられた。入国証か?
奴隷にはステータスチェックだけみたいだ。
一通り審査?が終わって門から入った印象は風景や芸術に興味のない俺でも凄えと思える町だった。
もちろんここからじゃ全てを見れるほど小さい町ではないが、見える部分は全てが石か水。石造りの建物、石畳、町中を流れる川。なんか癒されるな。
それでいて活気のある市場。
俺らが入った門の近くに市場があるようで騒がしいんだが、なぜか風景を損ねる感じではない。
俺が昨日ガンザーラに持ったイメージを覆せるだけの印象がこの町にはあるな。
「もしかしてあの冒険者ギルドの男がムカつくやつってだけで、国自体は割といいとこだったりするのか?」
「…魔法使いにとっては住みやすい町かもしれません。ですが、ここに住む人は基本はあの男と変わらない人間だと思っておいた方がいいと思います。」
そんな町は嫌だな。
せっかく綺麗な町なのに住んでるやつが残念とかもったいないな。
「じゃあ早く奴隷市場を探して仲間を見つけて帰るぞ。」
「…ガンザーラでは国が奴隷を正式に認めているので、市場に行けばあると思います。」
ん?そのいい方だとアラフミナでは認められてないのか?
確かに奴隷市場は裏にあるしな。
認めてはいないが否定や取り締まりもしないといった暗黙の了解的な感じか?
「とりあえず市場に行くか。」
市場はアラフミナ以上に活気があるんだが、食べ物や武器、服などが売っている中で普通に奴隷が売られてるってのは違和感がハンパねぇな。
「火属性に抵抗の加護のあるムカが金貨3枚!的にも実験にもオススメだよ!」
「家事用のムカもいるから見てってくれやい!」
「毒耐性持ちのムカがなんと金貨5枚!実験にどうだい?」
野菜や武器などの安売りの声にこんなのが混じっている。
聞いてる感じだと奴隷の用途がアラフミナとは違いそうだな。
「アリア。ムカってなんだ?」
「…ガンザーラでは魔法が使えない人間は無価値とされています。それを略されてムカと呼ばれているそうです。」
うん。最初の印象通りダメな町で間違いなさそうだ。
「ガンザーラでは奴隷の使い道がアラフミナとは違いそうだな。」
「…はい。もちろんアラフミナのように性奴隷や戦闘奴隷として買う方もいるとは思います。ですが、ガンザーラでは奴隷を魔法のテストの的にするためや新しい魔法や魔道具の開発の実験に使うために買うことが多いとのことです。あとは魔法しか能のない人間ばかりなので家事をさせるために買うというのもあるそうです。」
なんかアリアが怒っているな。
アラフミナだって虐待奴隷として買うやつはいるが、この国では的や人体実験は虐待にすら当てはめられないということか。
やっぱりこの国は俺には合わない。
いっそのことこのまま帰りたいが、せっかくここまで来たのだから、さっさと奴隷市場を見ていくか。
市場にあった奴隷店は全部で5件。どこもいいのがいなかった。
それにしても家事用のコーナーとその他のコーナーの奴隷たちの表情の違いが凄まじかったな。
そりゃ好んで的や実験なんてされたかねぇわな。
さて、どうするか。
せっかくここまで来たのに良さげな奴隷がいないとは予想外だ。
魔法使いを探すつもりだったのに市場の奴隷には1人もいなかった。
そもそも戦闘ができそうなやつがほとんどいなかった。
どいつもこいつもおっさんおばさんばかりでこれからを見込める感じでもなかったしな。
「リキ様。さっきから私たちを見ているやつがいるけど、捕まえてくる?」
セリナから声をかけられ、セリナが手と体で隠しながら指差した先を見るとスーツを着て黒いハットをかぶった男が1人いた。
識別を使うと「大丈夫」と出た。
じゃあ何か話でもあるとかか?
「セリナ。なんか話があんのかもしれないから聞いて来い。」
「は〜い。」
間延びした返事をして、影の中に消えた。
影の中をどう移動してるのか知らないが、そこそこの距離なのに数秒でスーツの男の背後に回った。
短剣を男の首に突きつけてるように見えるが気のせいか?
話はすぐに終えたようで、戻ってきた。
「あの人奴隷商らしいけど、リキ様が市場の奴隷じゃ満足できてにゃいように見えたから、タイミングを見て声をかけるつもりだったらしいよ〜。」
それは都合がいいな。
人混みを割って奴隷商の元へと向かった。
奴隷商がいる場所に着くと、少し裏に入ってるだけなのに表の市場の活気が遠く感じる。何かの魔法か?
「これはこれはわざわざこちらに来ていただきまして〜ありがとうございま〜す。」
なんだか胡散臭いやつだな。
近づいてみるとスーツじゃないな。
小太りで目が細く、鼻に小さな丸眼鏡をのせた、燕尾服に黒いハットをかぶった男だ。
「話があるそうだな?」
「は〜い。部下に奴隷をたくさん連れてる冒険者がいると聞いたので〜、あの有名な『奴隷使い』かと思って来てみたら別人!でも気になって〜後をつけたら〜奴隷売り場にしか近寄らないのに何も買わな〜いあなたを見て思ったのです!あなたが欲しているのは戦闘奴隷では?」
見た目も喋り方もなんかムカつくやつだが、見る目はありそうだな。
「だとしたらどうだっていうんだ?」
こいつは奴隷商だから、声をかけてきた目的はわかってる。ただ、どういった謳い文句でくるかを見てみようと思い、反応をうかがった。
「私は顔が広いのですが〜あなたを見たのは初めてです。だから他国から足を運んだのでしょう?そしてこの町まで戦闘奴隷を買いに来るということは〜あなたが欲しているのは魔法使い!でも表の奴隷売り場じゃ〜ムカしかいないのですよ。だ〜か〜ら、私の奴隷市場を紹介いたしま〜す。」
なんだ?このイライラする喋り方は。
なんか時間を稼ごうとしているようにも感じるが、素の喋り方なのか?
「お前のとこにはまともなのがいるっていうのか?」
「さすが〜に、あなた様が連れているそこの4人の奴隷に並ぶ者はいませんが〜育て甲斐のありそ〜な者ならいますよ〜?」
4人ってのはどいつのことだ?
イーラとアオイは武器だからたぶんわかってないだろう。
アリアとセリナとカレンと…テンコか?
ってことはサラやヒトミ程度の奴隷しかいないならあんま期待は出来なさそうだ。
でもどうせだから見るがな。
「なら案内しろ。いいのがいなければ帰るだけだ。」
「ありがとうございます。」
奴隷商は胸に右手を当ててかるく礼をした。
ん?…なんか違和感があった気がしたが、べつにいいか。
奴隷商についていくと、裏路地の一画…ただの壁の前で立ち止まった。
これは騙されたってやつか?
でもこいつに負ける気はしないがな。
奴隷商が壁をノックすると壁がスライドした。
中には扉を開けたであろう男が2人とその奥に階段があった。
え?ガンザーラは奴隷が正式に認められてんだろ?なのになんでこんな厳重に隠してんだ?やっぱり罠?
「セリナ。この中はどうなってる?」
「ん〜。正確にゃのは分からにゃいけど、たぶん奴隷市場で間違いにゃいと思うよ。」
何で判断したのかはわからないが、セリナがそういうなら間違いないだろ。
「サラ。この先にはどのくらいの人間がいる?」
でも念のためサラにも確認を取る。
サラは一瞬意図がわからないという顔をしたが、すぐに理解して右目を爬虫類化させた。
「たくさんいるのです。皆、間を空けて立っているのです。」
1つの檻に1人ずつならサラのいうようになるな。
これでいざ入ったら、やっぱり罠でしたなら諦めるしかないだろう。
奴隷商は俺らのやり取りに気づいてないのか気にしてないのか、既に階段を下りきっていた。
「ど〜しましたか?つ〜いてきてくださ〜い。」
「悪い。」
どうせ考えたってわからないのだから、奴隷商について行くことにした。
階段を下りると、アラフミナの奴隷市場と似たような作りになっていた。
フロア分けが性奴隷と戦闘奴隷を男女分けした、計4部屋しかないようだ。
ただ、アラフミナより広い。要するに品揃えがいいみたいだ。
さすがは国が認めているだけあって集めやすいのかもな。
もう1つアラフミナと違うのは戦闘奴隷も何故か全裸だった。
奴隷商曰く、筋肉のつき方などを見たがる顧客が多いからとのことだった。
しかし、これだけ品揃えがいいのにピンとくる奴隷がいないな。
求めてるのは魔法使いだから限られてしまうのは仕方がないが、これだけいるならその限られたなかに1人くらいピンとくるのがいてもいいと思うがな。
男の戦闘奴隷を見終わり、最後に女の戦闘奴隷を見て回っている。
この奴隷市場でもなぜか奴隷商がつきっきりで案内してくれる。しかも魔法が使える奴隷はちゃんと説明してくれるオプション付きだ。
最初は邪魔だと思ってたが意外と使えるな。
う〜ん…。ピンとこない理由がなんとなくわかったぞ。
魔法使いの奴隷はほとんどがおじさんおばさんだからだ。
性奴隷のフロアにいた魔法使いは20代前半くらいのもいたが、戦闘奴隷はほとんどが30歳超え、酷いのは60歳を超えていた。
それだけ歳が上なのにたいした実力もなく、わざわざ育てようとも思えないからピンとこないのだろう。
もうすぐ一周してしまうというときに若いのがいた。
奴隷商が説明を端折ったから魔法使いじゃないんだろうが、俺の観察眼が反応しているから何かある奴なんだろう。
自然と足を止めると奴隷商が不思議な顔をした。
「ど〜なさいました〜?そいつは若いだ〜けですよ〜?一応魔導師だ〜からこちらにいますが〜魔法のスキルはな〜んにも覚えてま〜せん。ハッキリいってオモチャとしてし〜か使えませんよ〜?」
魔導師なのに魔法を覚えていない?
上級魔法をコンプリートするのが魔導師ジョブの獲得方法じゃなかったのか?
改めて女を見る。
足も腰も胸も細い。別に栄養不足的なガリガリではなく、女性的な細さだが、間違いなく戦闘向きの体つきではない。
ただ、頭からデカい羽のようなものが生えているのが気になるのだが、俺以外の奴は気にした様子がない。
ぱっと見は人族だが、違うのか?
見た目年齢はセリナくらいか?セリナは少し大人っぽく見えるから、こいつはセリナより上の14、5歳くらいか?
鑑定で見た方が早いか。
鑑定で確認をしようとしたら、ノイズがかかった。
ん?奴隷になるような奴が認識阻害なんか使えるのか?
まぁ見れないものは仕方がない。
前みたいに無理に鑑定して死にかけるのはごめんだからな。
「お前。その頭の羽はなんだ?」
「え!?」
鑑定が使えなかったのはあきらめるが、頭の羽は気になるからな。
俺の質問にたいして羽女は驚きの声を上げたが、アリアたちや奴隷商は何をいっているんだ?という顔をしている。
もしかしてそういう種族が当たり前に存在するのか?
「いやですわ。見間違いでなくて?それともワタクシの髪が羽のように綺麗だという新しい褒め言葉なのでしょうか?」
羽女が作り笑顔でとぼけてきやがった。
「は?なんで初対面のお前をそんな無意味なことで褒める必要がある?俺はそのデカい羽のことを聞いているんだよ。」
檻に近づくと羽女は数歩下がって、俺から距離を取った。
「オホホホホ。」
笑って誤魔化すつもりか?
「いいからこっち来い。話さねぇなら触って確かめる。」
羽女は俺の後ろのアリアたちをじっくり見た後、視線を俺に戻した。
「ワタクシは淑女。なのであまり殿方と関わるのは避けたいのでございます。もしあなた様がワタクシを戦闘奴隷として買ってくださるとおっしゃるのであれば、喜んであなた様の行動を受け入れさせていただきたく思います。」
「真っ裸で淑女とかいってんじゃねぇよ。痴女の間違いじゃねぇのか?淑女だといい張りたいならせめて恥ずかしがるなり隠すなりしろや。」
なぜそこまで嫌がる?
そもそもここは奴隷にも拒否権があるんだな。
「ワタクシは好きで裸なわけではありませんわ。それに隠さなくてはならないような恥ずかしい身体ではありませんから、隠す必要もありません。むしろ自慢の肉体美でありますわ。」
少女は全裸で胸を張った。
まぁ張るほどの胸はねぇんだが。
ってかそこは羞恥心を持つべきだろ。俺がおかしいのか?
「…リキ様。先ほどから何を話しているのですか?」
アリアが横に並んで小声で話しかけてきた。
「あ?あぁ、この女の頭に生えてるデカい羽が気になって仕方がなかったから確認を取ろうとしたんだが、話を逸らしてきやがってよ。」
「…羽ですか?」
ん?なんで疑問で返ってくる?
仮にこの羽女の姿が珍しいものじゃなかったとしても、これだけ目立ってるんだから羽といわれたら一発でわかるだろ。
見えてるものが違うのか?
「一応確認だが、アリアにはこの女はどう見えている?」
「…身長はセリナさんと同じくらい。髪は金に近い黄色の長髪で、一部をサイドで纏めています。顔はややつり目で鼻が高く「ちょっと待て。」…。」
アリアの説明に違和感があり、途中で遮ってしまった。
「…どうしました?」
「アリアにはこいつがサイドテールに見えるのか?」
「…ごめんなさい。サイドテールがよくわかりません。」
アリアにもわからないことがあるんだな。
「悪い。髪を横で縛っているように見えるのか?」
「…はい。リキ様は違うのですか?」
「俺はたぶんその部分がデカい羽に見えるんだが、俺の目がおかしいのか?」
「…この女性の反応からしてリキ様が正しいと思います。それが趣味ではなく、実際に頭から羽が生えているのであれば、この女性は鳥人族だと思います。どうやってここまで人の姿になりきれているのかはわかりませんが、本来の鳥人族の人々は空が飛べるので、戦闘に有利かもしれません。」
空が飛べるなら現時点で魔法が使えなくても覚えさせればかなり使えそうだ。もしくは弓とかを覚えさせてもいいしな。
こいつ自身も俺の奴隷になる気があるみたいだし、とりあえずこいつは買っておくか。
「奴隷商。こいつはオモチャとしてしか使えないならそれなりに安いんだろ?いくらだ?」
せっかく奴隷商が使えないやつだと判断しているなら、話を合わせて安く買わせてもらおう。
「これは若〜いので可能性が〜あり、一応魔導師で〜す。な〜ので金貨5枚にな〜ります〜。」
使えないと判断してたくせにそんなに高いのか?
アラフミナとは奴隷の相場が違うのか?
でも観察眼が違和感を訴えてるぞ?
一応識別で確認をすると『嘘』と出た。
相手も商売だから高く売りたい気持ちはわかるし、俺の反応を見て吹っかけるべきだと判断した腕は褒めるべきだろう。
ただ、俺はこの国の人間に対して寛容ではいられないようだ。
「奴隷商。俺は嘘が嫌いなんだ。一度目は冗談として受け入れるが、嘘をつくやつは敵と判断する。それであらためて質問なんだが、この女はいくらだ?」
「…金貨1枚でございます。」
まぁこのくらいなら本来より高くなってるんだとしても受け入れてやるか。
ヘタに識別をしてまた『嘘』なんて出たら我慢できるか怪しいしな。
奴隷商に金貨を一枚渡した。
「アラフミナの裏商業ギルドマスターの忠告は初めから聞いておくべきでしたね。」
奴隷商がボソッと何かをいったが、よく聞き取れなかった。
それよりもこんな涼しいところで汗をかいてる方が気になってたからな。
まぁこいつの体型じゃ仕方ないか。
檻から出された羽女の首輪を外して、すぐに奴隷契約を発動した。
だが、なかなか承諾されないせいで、俺が右手を羽女の胸に当てたまま無駄な時間が流れていく。
女はさっきからブツブツと何かをいっている。魔法の詠唱のようにも聞こえるな。
「おい。早く受け入れろ。」
「おかしいですわ。干渉出来ませんの。」
「は?」
「あ!いえ、なんでもありませんわ。えっと、少々お待ちください。」
「いや、もう待てない。何かしてるみたいだからな。怪きは殺せってな。」
左手を腰のナイフに伸ばそうとしたところで、受け入れられたのか右手から黒い蠢く何かが羽女に浸透していく。
いまだに羽女はブツブツと何かをいっているようだが、まぁギリギリセーフということにしてやるか。
「やっぱりこの人の奴隷契約には干渉できない…。」
ブツブツと小声で何かをいってるようだ。
俺には聞こえないが、セリナなら聞こえてるかもな。でも何もいってこないってことはただの独り言だろう。
奴隷画面を確認すると奴隷6になっていた。
奴隷6
ソフィアランカ 13歳
魔導師LV22
状態異常:なし
スキル 『人族化』『認識阻害』『魅了の歌』
加護 『鳥獣』『成長補強』『成長増々』『状態維持』『成長促進』『奴隷補強』
本当に魔法のスキルがないんだな。
人族化…人族となるスキル。
認識阻害…他者からの認識を程度により阻害するスキル。
魅了の歌…他者を魅了する歌を歌うことのできるスキル。
鳥獣…鳥獣に見守られ、与えられし加護。
うん、鳥獣の加護は必要性がいまいちわからん。
スキルをほとんど覚えていないが、どれも変わったスキルだな。
とりあえずソフィアランカにはローブを着せた。
「ソフィアランカ…長いからこれからソフィアと呼ぶ。俺の奴隷には絶対的なルールが2つある。『俺を裏切らない』と『俺の命令は絶対』だ。この2つさえ守っていればあとは特に制限はないが、あまり勝手なことはするな。自己紹介はここを出てからだ。いいな?」
「承知いたしました。」
「そこは「はい。」でいい。全員に命令した時の返事は合わせてほしいからな。」
「はい。」
とりあえずはこれでいいだろう。
「待たせたな、奴隷商。続きを頼む。」
「それではこちらへどうぞ。」
奴隷商の案内で残り数人の奴隷を見たが、どれも微妙だったな。
けっきょくソフィアだけを買って、奴隷市場から出た。
奴隷商曰く、ここと市場以外に奴隷を売ってるところはないらしい。だからもうこの町に用はないから門に向かって歩いている。
「そういや後で自己紹介するっていったっきりだったな。俺は神野力。力が名前だ。」
歩きながら自己紹介をした。
俺に続いてアリアたちも自己紹介を始めた。
「リキ様の第一奴隷のアリアローゼです。呼び方はアリアでかまいません。よろしくお願いします。」
「大食変異スライムのイーラだよ〜。よろしく〜。」
「獣人のセリナアイルです。セリナって呼んでね。ソフィアちゃん。」
「鬼人のカレンです。よろしくお願いします。」
「妾は鬼のアオイじゃ。カレンの持つ刀におるから、普段は特になにもしておらん。だから空気とでも思っておいてくれ。」
これは自虐ネタか?冗談か?どちらにしてもアオイがこんなこというのは珍しいな。
「テンコ。大精霊。よろしく。」
「鱗族のサラクローサなのです。サラと呼ばれているのです。」
「…。」
そういやヒトミはまだ喋れないんだったな。見た目が人間だから忘れてた。
「あぁ、こいつはヒトモドキのヒトミだ。魔物だから喋れないが、よろしくだとさ。」
「あ…えっと。人族のソフィアランカですわ。これからお世話になります。」
一度に自己紹介したせいで戸惑っているようだな。
だが、嘘はいけない。
「は?ソフィア。俺はさっき奴隷商にもいったが、嘘は嫌いなんだ。嘘つきは信用ならないからな。もう一度自己紹介をしろ。これは命令だ。」
ソフィアは肩をビクッとさせた。
「申し訳ありません。鳥人のソフィアランカです。よろしくお願いいたします。」
一瞬怯えたソフィアだが、俺がそれ以上何もいわなかったからか安心したようだ。
やっぱりアリアのいう通り鳥人族だったのか。これで頭の羽にも納得だ。
「まぁ一度に全員覚えるのは難しいだろうが、戦闘中に必要になるから覚えておけ。とりあえずソフィアの戦力の確認をしたいから…。」
アラフミナの王都に帰る途中のアオイと出会ったダンジョンで戦わせてみるか。
そんなことを考えていたら、裸ローブのソフィアが数歩前に出てから振り向いて、ローブをスカートのようにちょこんと持ち上げた。
「それでしたらちょうどいいですわ。奴隷の序列を決めましょう。一番強いのはどなたかしら?」
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