裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

82話



昨晩遅くまで魔物狩りをしていたから疲れてるっていうのに、外でカチャカチャと鉄が擦れるような音がうるさくて目が覚めた。

「…おはようございます。」

隣のベッドに座って本を読んでいたアリアが声をかけてきた。

もう昼過ぎだからか、俺以外は全員起きているようだ。

「おはよう。ってか外のこのうるさいのはなんだ?」

「送魂祭が始まったようです。」

送魂祭…あぁ、名誉ある死を遂げたものに行われる祭とやらだったか?
名誉ある死ね…今回のクエストで死んでいったやつらは自分の力量をちゃんと計れてなかっただけだと思うが、まぁ死者を悪くいうのはやめておこう。

それに送魂祭をやるのは約束だったもんな。
役に立った、立たない関係なく約束が守られただけだろう。

「それで、送魂祭とこの音になんの関係があるんだ?」

「送魂祭は本来は貴族門から城門までを騎士たちが隊列を組んで歩き、城門内にある大きな石板に王様の手によって死者の名前が刻まれます。ですが、今回は冒険者ギルドを通してのクエストだったこともあり、変則的に始まりが冒険者ギルドになったのだと思います。」

なるほど。
このカチャカチャは鎧が擦れる音なわけね。

隣が出発地ならそりゃうるさいわけだ。
ってことはそのうち静まるか。
でも目は覚めちまったから、起きるとするか。

今日は特にやることもないし、久しぶりに自由時間にするか。

「イーラ以外は自由時間にする。イーラは約束の本気の戦闘訓練を行うから、俺と一緒に来い。セリナは今度だ。楽しみにしとけ。」

「「「「「はい。」」」」」

イーラは嬉しそうに、セリナは悲しそうに返事をした。

「自由時間、なに?」

「個人で好きに過ごしていい時間ってことだが、テンコはまだ不安があるからな。アリアと一緒に行動しろ。アリア、頼んだ。」

「「はい。」」

全員に銀貨5枚ずつ渡して、日没までに戻るように指示をした。

鍵はアリアに渡しておいた。




イーラとの戦闘訓練は外壁から少し離れた草原でやったんだが、こいつは体力が無限にあるのか?

殴っても殴ってもPPがほとんど減らないし、イーラの攻撃は振りが大きいのに疲れた気配がない。

もうすぐ日が暮れる頃だろう。

それだけの長時間、休みなくやっているのにイーラはいまだに元気だ。

俺はぶっちゃけヘトヘトだ。

今回のルールは魔法なしの他はなんでもありで、俺は身代わりのブレスレットがあるから互いに本気でやり合うことにしていた。

もちろん俺はまだ一撃もくらってない。
イーラの攻撃はたまに飛ばしてくる糸さえ気をつければ、どの武器でも振りが大きいから避けるのは楽だ。

んで、俺の攻撃はほぼ全て当てているのだが、客観的に見ると俺の方がやられてるように見えるんだろうな。疲れ方的に。

また、全力の一撃をイーラの鎖骨に当てると、イーラが弾け飛んだ。

イーラはそのまま攻撃を続けてくるが、避けてから腕を殴って吹っ飛ばす。

「今日はここまでだ。そろそろマッドブリードが出始めちまうからな。」

「は〜い。」

イーラは今日の昼からの戦闘訓練で飛び散りまくった自分の破片を回収し始めた。

イーラは物理無効があるから本気で殴っていたが、ここまで手応えがないとはな。
今はまだ魔法を使えば勝てるだろうが、そのうち俺より強くなっちまいそうだな。


イーラが体の回収を終えたのに合わせて、宿に帰ることにした。

最後に草原全体を見て、マッドブリードの姿がないのを確認しておいた。




宿に戻ると、アリアは本を読んでいて、セリナとテンコは…何をしてるんだ?毛づくろい?
2人で互いの耳をモフモフしてる。
ちょっと気持ちよさそうだな。

「「おかえりなさい。」」

「おかえり、なさい?」

「あぁ、ただいま。既に日は暮れてるんだが、カレンとアオイはどうした?」

「…まだ戻ってません。」

は?逃げたか?
いや、そういや今回は市場とこの宿以外は行くなというのを忘れていた。

もしかしたら迷子になっている可能性もあるな。

奴隷画面にはちゃんとカレンもアオイもいるから死んではいないはずだ。

なんとなしにカレンの画面を開くと状態異常が『恐怖』となっていた。

アオイも確認すると『憎悪』となっている。

どちらも状態異常としておかしいが、状態異常となってしまうほどの強い感情ってことか?
嫌な予感がする。

「カレンとアオイが何かに巻き込まれた可能性があるから、探しに行く。準備しろ。」

「「「「はい。」」」」

「裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く