裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
56話
ダンジョンには着いたが、何階で試せばいいだろう。
「アリア。」
「…今回戦っているのを見たところ、倒した魔物の中では地下25階の魔物がちょうどいいと思ったのですが、全滅させたばかりでまだ魔物がほとんど生まれていないと思います。なので、地下34階で試すもしくは地下7階までで試すのがいいと思います。」
確かに地下25階の魔物はちょっと硬かった。でもいても1体とか2体だろうから、全部は試せないしな。
でも今は2人しかいないから、あまり深く潜って何かあると困るからな。
まぁ地下34階くらいなら平気か?
危なければリスタートで戻りゃいいし。
それで魔物を連れてきたとしても知ったこっちゃないしな。
「じゃあ地下34階の魔物で試そう。」
「…はい。」
そういえば離れてるやつらはパーティーから外しといた方がいいのか?
リスタートとか前に使った感じだとパーティーが全員通らなきゃ閉まらなかった気がするし。
一応パーティー編成を確認すると俺とアリア以外は名前が暗くなっていた。
離れると勝手に外れた感じになってんのか?
これならまた近づけば戻るだろうし、入れたり外したりをいちいちやらなくて良さそうだ。
リスタートで地下34階まで下りる。
俺とアリアが通ってしばらくしたら閉じたから、問題なさそうだ。
上り階段付近には魔物がいないみたいだから、少し奥へと進んでいく。
しばらく歩くと魔物が3体ほど見えてきた。
4足歩行の牛?
顔が潰れた牛みたいで体が樽のように丸々と太ってる。毛は全身茶色で尻尾はない。
目が前に1つと左右に1つずつの計3つあって気持ち悪い。
「…あっ、食べれます。」
「は?」
アリアはいきなり何をいってんだ?
「…以前、リキ様が食べられる魔物がいたらいうようにとの指示がありましたので、伝えただけです。」
そんなこといったっけ?
アリアがいったっていうなら高確率でいっただろう。
まぁ食費が浮くとか考えたんだろう、きっと。
でもこいつは気持ち悪いからな。
「こいつは美味いのか?」
「…脂身が多く臭みが強いと本には書いてありました。ただ、香辛料と一緒に焼くと絶品だと書いてある本もありました。」
料理の仕方次第ってことか。
「じゃあ玉を試したあとに肉を拾って帰るか。」
「…はい。」
なんだかアリアがちょっと嬉しそうにしてる気がする。
アリアはこんな見た目なのに肉が好きだからな。
とりあえず業火玉から試してみるか。
「これからあの群れに業火玉を投げるから、玉が範囲外に出たらすぐにルモンドなんちゃらを使え。」
「…はい。」
アイテムボックスから業火玉を取り出して、50メートルくらい離れたところから勢いよく投げつけた。
『ルモンドアヌウドゥ』
業火玉が小さくて投げづらく、30メートルくらい先の壁にぶつけてしまった。
近すぎると自爆するけど、離れすぎると当てるのが難しいのか。
壁にぶつかった業火玉は簡単に割れて、業火玉を中心に勢いよく炎が上がる。
隔離されてるとわかっていても恐怖を感じる光景だな。
ってか今さらだけどルモンドなんちゃらは熱も遮断してくれるのか?
炎は一気に広がり、俺らを包んで周りが見えなくなった。
炎に包まれてるからルモンドなんちゃらの範囲がよくわかるようになった。
熱に関してはなんの問題もなかったようだ。
炎がなくなってから、ルモンドなんちゃらを解除する。
さすがファンタジー世界というべきか、普通に呼吸ができる。
ちょっと焦げ臭くてむせる程度で、酸素が足りないという感じはないし、一酸化炭素中毒になる心配もなさそうな気がする。
まぁダンジョンで炎の魔法を使う度に死人が出てたらバカらしいからな。
さて、ブサイクな牛さんの肉を採取しようと近づくと、牛さんは既にいなかった。
あるのは大きな炭の塊だ。
マジかよ…。
隣のアリアを見るとちょっと悲しそうな顔をしてる気がする。
でももしかしたら焦げてるのは表面だけかもと淡い期待を込めて短剣をブッ刺すと、ゴッという音がなり、引き抜くと中まで真っ黒だった。
…。
「よし、アリア。次に行くぞ。」
「…はい。」
しばらく歩くと今度は2体の牛もどきがいた。
今度は電爆玉を取り出して投げた。
『ルモンドアヌウドゥ』
無言で投げたのにタイミングを合わせてくれるアリアは本当に楽だ。
今度はいい感じに牛もどきの近くに玉をぶつけられた。
…。
スッゲー爆発だな。
煙のようなモコモコが一気に広がり、中に紫電のようなものがたまに見えるから、電の効果もあるみたいだな。
一瞬で周りが見えなくなった。
しばらくして収まってから、ルモンドなんちゃらを解除した。
業火玉のときはなんともなかったが、なんかめっちゃ蒸し暑くないか?熱をまとった水が残っちまってるからか?
まぁいい。
牛さんの確認だ。
…。
今度は牛さんが壁の模様になってた。
壁にベチョッとドロドロしたものがついてる感じだ。
これを牛さんと判別できたのは観察眼のおかげだろうが、純粋に気持ち悪い。
長く見るものじゃないな。
アリアなんて一瞬チラ見しただけで、もう見てないし。
「次行くぞ。」
「…はい。」
それから全ての玉を試したが、どれも焦げるか溶けるかで、食料としては手に入らなかった。
威力が高すぎるのか牛もどきが弱すぎるのか、それぞれの玉の細かい違いが試せなかったが、まぁ使えそうではあるからいいか。
1つだけ例外で、電撃玉は使い物にならなかった。
直接当てれば感電したのかもしれないが、近くの壁に当ててしまったせいで、バチバチッと音を立てただけで終わった。
閃光玉は眩しかったが、目眩しとして使うなら、上級魔法の光を強めたのを1回分で十分そうだ。
なぜなら圧縮されたって感じがなかったからだ。
せっかくだから帰る前に1体だけ短剣で倒して、てきとうに解体して肉をアイテムボックスにしまった。
けっこうデカいから1体で十分だろ。
解体するのに思いの外時間がかかったから、これ以上やりたくないしな。
残りの骨やら内臓やらはフレアバウンドで燃やしてから放置した。
アイテムボックス内で腐るとかあるかがわからないから、今夜のうちに食べてしまうか。
「アリア。そろそろ帰るぞ。村で香辛料を買うから、良さげなのを教えてくれ。」
「…はい。」
今回は地下34階のマップは埋めていないけど、ダンジョンを後にして徒歩で村に向かった。
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