裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

26話



「悪いが少しだけ休ませてくれ。」

倒れた俺を心配したのか、駆け寄ってきた2人と1体に一言だけ告げる。

「「…はい。」」

ダンジョン内での休憩だからだろう。若干渋い返答だったが、文句はいってこなかった。

2人もその場に座り込んだ。

寝たら起きれなさそうだから、目は閉じないでおく。

イーラだけ俺の方に進んできて、脇腹あたりから登って、頭の方に進んできた。

このコースだと顔面を通るんじゃねぇかと思ったら、マジで顔の上に乗りやがった。

文句をいおうと口を開けたら、何かが入ってきた。
いきなりのことでビックリして飲んじまった。

え!?スライムの排泄物じゃねぇよな?
この程度の魔物に苦戦してんのかとかいう挑発か?

殺すぞ!?

イーラを掴んで引き剝がし立ち上がる。

「てめぇ、ふざけてっと殺…あれ?」

起き上がって気づいたが、疲れがだいぶ抜けている。

アリアを見るが、いきなり立ち上がった俺を見て驚いているところを見ると魔法をかけたわけではなさそうだ。

「今のはなんだ?」

何かを伝えたそうだが、なんとなくしかイーラのいいたいことがわからない俺には細かいことまではわからない。

「疲労が回復したのはお前の仕業か?」

プルプルと震えた。
本人曰くそうらしい。
まぁあのままじゃダンジョンをでることさえキツかったから、感謝はしておくか。

「普段空気のくせにやればできるじゃねぇか。だけど俺に変なもん食わせんな!排泄物かと思って、お前を殺すところだったぞ。」

イーラをムカデの方に放る。

「褒美だ。それでも食っとけ。」

そういえば魔物は全部イーラに食べさせてたけど、素材として売れるものもあったんじゃねぇか?

「アリア。この2体はどこか素材になりそうなところはあるか?」

「…ごめんなさい。素材に関してはまだ調べてないです。牙なら素材になる可能性が高いと思います。あと、リキ様の攻撃でも傷1つつかなかった外皮は売れると思います。」

なるほど。
確かにあの外皮で武器や防具を作ったら強そうだな。

「イーラ待て!」

イーラに制止をかけるが、既に半分以上を食べてやがった。しかも頭から。

まぁまだ外皮は取れるか。
でも短剣で切れなかったのをどうやって切るんだ?

「外皮が欲しいから、それだけ残して残りを食べられるか?」

イーラはプルプルと震えてもちろんといっているようだ。
なら任せよう。

外皮だけならアイテムボックスに入るだろう。

今度は蜘蛛を解説で見る。

『クインチュラの死骸』

こっちは最初から頭がほとんどないからな。
一応牙が片方だけ残ってるが折れてるし、イーラに食べさせればいいか。


イーラが食べ終わるまでにこのあとどうするかを決めるか。

アリアとセリナの方を向いたとき、イーラから進化許可申請がきた。

拒否する理由もないからいつも通り許可をする。
ってかこれで何回めの進化だ?
でもこんなに進化してんのに見た目が変わらないってのも凄いよな。ショボさが。






このときまでの俺は進化というのをなめていた。

そりゃイーラしか進化を見たことないから、進化したらステータス維持したままレベルがリセットされるくらいの感覚しかなかったのはしょうがない。

だからいきなり後ろから飛びつかれホールドされたときに死を覚悟してもおかしくないはずだ。

でもただで死ぬ気はないと腰の短剣を引き抜いて、首だけ動かし相手の顔の位置を確認しながら短剣をぶっ刺そうと思って固まった。

「…歩?」

なぜなら俺に飛びついてきたのがこの世界にはいないはずの妹の歩だったからだ。

「空気じゃないもん!」

「は?」

「リキ様〜。」

歩が二ヘラとだらしなく笑った。

「…お前は誰だ?」

「ん?イーラだよ?」

一度ホールドを解いて立たせる。頭からつま先まで確認するが、よく見ると歩とは違う部分がちらほらある。

まず髪がロングの黒なんだが、途中から淡い青色だ。目も綺麗な青い目をしている。
体も最後の記憶にある歩よりだいぶ小さい。
アリアより少し大きい程度だから10歳くらいか?

鑑定を発動。


イーラ 魔族 0歳(使い魔)
種族:変異スライムLV1


そういやイーラを鑑定で見るのは初めてだったな。

やっと種族が変わったな。
まぁけっきょくスライムだからどうでもいいが。

「なんだ、変態か。」

「変態じゃないもん!」

「は?スライム形態から変態してんじゃねぇか?」

「メタモルフォーゼだもん!」

「ん?だから変態であってんじゃん。」

「イーラは変態なんかじゃないもん!」

なんか泣きそうになってる。
なんでだ?…あぁ、いい方が気に入らねぇのか。
面倒だな。


「悪い悪い。変身な。ってかなんで歩の顔を知ってるんだ?」

「ん?アユミ?だれ?」

「俺の妹だが、知らないでその顔に変身したのか?」

だとしたらこいつの中の人間のイメージがたまたま歩だったってことか?

「なんでだろ〜?リキ様の髪の毛から情報を得てるからかな〜?」

「は?」

「吸収したものに変身できるようになったんだ〜。」

「なら俺になるはずだろ?」

ってか俺の頭の上に乗ってたときに髪の毛を食ってやがったのか!?
禿げてたら殺すぞ!?
手で確認するが問題ないようで、マジで良かった。

「リキ様に愛して欲しいから頑張って女の子っぽくしたらこうなった〜。かわいい〜?」

「!?」

アリアが驚いている。

まぁ俺も驚いたよ。そんな思い込みで変身できるんだから凄いよな。
俺の遺伝子情報から女性的な部分を引き抜いて、他の吸収した魔物とかの遺伝子で補ったら歩っぽくなったってことか。
まぁ俺の遺伝子を使ってるなら妹に似たっておかしくないか。

ペットが飼い主に好かれたがるのはそれだけうまく飼育できてるんだから、いいことだしな。

「あぁ、かわいいかわいい。変身できるのは凄いぞ。ちなみに服は出せないのか?」

「ん〜。」

考え込んだあとに裸だった体が半透明な青になった。
戻ったときには毛皮の服を着ていた。
この毛皮どこかで見た気がする。

「リキ様が倒した魔物の毛皮で作ってみたよ!かわいい〜?」

「あぁ、かわいいかわいい。これから人間の格好をするときは必ず服を着ろよ。わかったか?」

「えへへ〜。わかった〜。」

「ちなみに他のやつにも変身できるのか?」

「吸収したものにならなれると思うよ。」

「ミノタウルスや今の魔物にもか?」

「可愛くないからヤダ〜。」

「そっか。俺の願いより自分の感性を優先するんだな。じゃあもういいや。」

イーラからアリアたちに向き直る。
せっかくセリナの復讐の目処が立ちそうだったけど、しょせん魔物だからな。期待するだけ馬鹿だった。

「リキ様ごめんなさい。ちゃんということ聞くから見捨てないで!もう空気はやだよ〜。」

イーラが腕を揺すってくる。
すぐに謝るなら最初からいうことを聞けよ。
まぁペットを飼育するにはちゃんと上下関係をわからせなきゃだからな。今まで放置し過ぎた俺も悪いか。

「わかればいい。それで変身は可能なのか?」

「今の魔物ならほぼ完璧に再現できると思うけど、ミノタウルスは無理かな〜。頭しか食べてないもん。」

「じゃあ今の魔物になってみろ。」

「…は〜い。」

渋々という感じでムカデになった。
ん?さっきより少し小さくないか?
あぁ、外皮を一部吸収してないから、その分を他で補うんじゃなくて削ったのか。それなら防御力も落ちないと。
試してみるか。仮に防御力低くなってたとしてもイーラは物理無効を持ってた気がするし。


なんの合図もなくいきなり殴ったが、やっぱり傷1つつかなかった。
かなり再現できてんじゃん。

「ビックリするからやめてよ〜。」

イーラは文句をいいながら、歩の姿に戻った。


「悪い悪い。ちなみにいろんな魔物を合わせることはできるか?」

「もちろん!」

だいぶ便利な能力だな。
ってかあのムカデを再現できるなら、今のイーラってかなり強いんじゃねぇか?

「そうか。ならあの魔物も食べておけ。今後イーラにも戦闘に加わらせるから、いろんな魔物を取り入れとけ。イーラの場合はそれだけで強くなるっぽいしな。」

「は〜い。」

返事をしたイーラは蜘蛛に向かって元気よく走り出した。

歩の姿でだ。


「イーラ待て!」

イーラが振り返って首を傾げる。

「その姿で捕食したら、俺は一生お前を許さない。」

ビクッと肩を震わせたイーラがスライム形態になって蜘蛛に近づいていった。

ちょっといい方がキツかったかもしれないが、さすがに歩の姿で虫なんか食われたらトラウマになるわ。

時計を見ると18時を少し過ぎたあたりか。

なんたかんだでたぶん6時間くらいいたんだな。
そりゃあ疲れるわ。

「セリナ。予定変更だ。近々お前との約束を果たしてやる。だから心の準備をしておけ。」

「はい!」

「それじゃあ一度ダンジョンを出るぞ。近くの村で宿を取ってから作戦会議だ。」

「はい!」

「…はい。」


イーラが捕食を終えるのを待ち、キングピードの外皮をなんとかアイテムボックスにしまい、近くの村に向かった。


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