地に堕ちた神へ告ぐ

nohzu

4話 自己紹介と雷

(1)新入生ロキは登校中
 今日から人間生活1日目、自分の通う高校への通学路は頭に入っていたし、人間として不都合の無いようには、転生時に設定されたようだ。とはいえ、初めて歩く下界の道に、ロキは少しの緊張を覚えていた。いや、緊張の原因はいつ他の神から襲われるか分からない、という不安にもあるだろう。今、この瞬間にも、誰か他の神に狙われているかもしれないと思うと、緊張するのは当たり前だろう──と、その瞬間

 目の前に何かが飛び出してきた。敵か?分からないが、弾丸が当たれば詰みだ。咄嗟にロキは叫んだ。

「やめろ!やめてくれ!」

 しかし...そこに居たのは一匹の野良猫だった。

 「────っ!!」

 恥ずかしさに顔を覆ったロキは、そのまま学校へ走っていった。


(2)新入生ロキの初めての学校
 「ここが僕の学校か。」
と、ロキは思わず人間っぽいリアクションをとってしまい、少しの恥ずかしさに咄嗟に口を塞いだが、今の自分は人間だったと思い出し、少し照れ隠しに笑った。

 「この学校、大きいよね。」
  「え?うわっ!」
 突如後ろから聞こえてきた声にロキは慌てて振り返ると、そこには同じく新入生だろうか、女子生徒がこちらを向き笑いかけてきた。
 肩ほどまで伸ばした茶髪。その髪が目にかからないように付けた、薄いピンクのヘアピン。くっきりとした眉にくりくりとした大きな目。小さな顔一杯に可愛さを詰め込んだ女子生徒がそこに立っていた。

 (3)はじめまして
「あ、びっくりした?急に話し掛けちゃってごめんね。」
 「いやいや、そんなこと無いよ。少し緊張しちゃってさ。」
 「私は楓(カエデ)よろしくね!」
 「僕の名前はロキ。よろしく。」
 「え?ロキって名前珍しいね。」
 「ロキって名前は...ほら、最近DQNネーム多いし。」
「そっか。まあ、いいか。とりあえずよろしくね!」
「こちらこそよろしく、楓。」
「それじゃ、また、入学式でね!」
というと、楓は、走り去っていった。

 今、胸に浮かんだムズムズする気持ちは一体?初めて抱く人間の感情に疑問を持ちつつも、ロキは、楓との出会いにこれからの高校生活に、明るい希望を──


「おい、お前たち。何を楽しそうにしているんだ。これは罰だと言っただろう。」

 突然、空から大きな声がしたと思うと、次の瞬間、空から巨大な雷が降ってきた。


「楽しい時間なんて要らないだろ。これは罰だぜ?さあ、堕ちろよ。どこまでも。私は思ったより、お前たちに怒ってるんだ。」

 雷の光が眩しい──
 ──僕達は、光に包まれて、そして何も見えなくなった。

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