ケーキなボクの冒険

丸めがね

その204 瞬とロック

リーフは自分に覆いかぶさってくる瞬を全力で拒否していたが、いつの間に怪我をしたのか分からない、包帯をした脇腹が痛んで思うように動けないでいた。

瞬がリーフを組み敷いて片手でネクタイを外そうとした時、スマホが鳴った。

「兵頭さんか・・・」
瞬は手を止めて電話に出る。

「瞬君!まずいよ!今から小次郎君がここに来る!キミに情報を流したことがばれたんじゃないかなぁ!ほんとヤバいんだけど!」
兵頭は小次郎の父親が絶大な信頼を寄せている人物で、小次郎も彼の科学的であり不可思議な理論を信じていた。

「ねえ、ボクは瞬君に脅されただけだって小次郎君に言ってよ!病院にいる妹を人質に取られたんじゃあ言うこと聞くしかないんだから!」
兵頭は興奮すると動き回る癖がある。重い体重のせいか、電話越しにもハァハァと荒い息使いが聞こえてきた。

兵頭自身も天才だが、その妹も天才だった。ただ妹の方は、”記憶を忘れる事が出来ない”という特殊能力に恵まれ過ぎたせいで精神を病み、ずっと病院に入院している。

瞬は小次郎と兵頭のつながりを突き止めて、妹を探し当て、兵頭を脅して情報を手にしたのだった。


リーフの役割と、小次郎の使命について。


リーフはここではない異世界を救うために、小次郎を含めた男たちに抱かれる、ということ。
それはこの世界にも少なからず影響があること。


そして、瞬の運命についても。

瞬もまた、赤のドラゴン復活の鍵となる人物なのだ。


瞬は穏やかに言う。
「大丈夫ですよ、兵頭さん。小次郎さんはもうお見通しでしょうし、だからといってあなたをどうこうすることはないでしょう。あなたはただ、ただ真実のみを語ればいいんです。」

「真実・・・そうか、うん、真実のみが必要なことだからな、うん、よし。」
兵頭は落ち着いたようだった。



小次郎が山奥にある兵頭のラボに来たのはそれからすぐだった。

いつものように兵頭がインスタントコーヒーでもてなそうとするのを初めて遮る。

「兵頭さん、大くんが・・・リーフがこの世界に帰ってきたようです!瞬のところにいるのですか?」

「そそ、そうだね!」
兵頭は”真実”を語るように努めた。

「瞬に・・・話したんですね。」

「そうだ!なぜなら、妹を人質に取られてしまったからなんだよ!あれでも最後の肉親だから失うわけにはいかなくてね。それに・・・」

「それに?」

「瞬君は無関係ではないからね!」

「では・・・瞬も欠片の保持者なのですか?!」

兵頭は、自分のためにインスタントコーヒーを用意しながらため息をついた。いつもカップを落としたり粉をばらまいたりして失敗しながら入れるのに、妙に上手に入れている。少し前とは別人のように落ち着いていた。

「そうなんだが、彼の場合は少し特殊だね。瞬君は両方の世界に存在してるんだ。存在してはいけない、世界の歪みとして。」




*****



毒の矢を受け、死の淵をさまようアーサー。

同じく毒を受けて倒れたジャックと共に、ブラックファイヤードラゴンの羽で看病を受けている。

体は常に燃えるように熱く、とめどなく汗が流れ、体力の消耗が激しかった。

サンゴの町の宿屋でアーサーの兄にしてツルギの国の第1王子ダグラスは、二人が横たわるベッドのそばで腕組をして考え込んでいた。

「あの、リーフが瞬と呼んだ男・・・」

同じだ、と思う。見かけは違うが、あの”気”。

昔から側で感じていたよく知る人間の”気”と一緒だ、と。

「あれは・・・まさに我が弟ロックだ・・・!」

ツルギの国の第3王子、ロック。

それが何を意味するのか、ダグラスは考え込んだ。

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