ケーキなボクの冒険

丸めがね

その144

医師クロードは、リーフを二階の部屋のベッドに寝かせた。
「調子はどうですか?」洗った手を拭きながらリーフに尋ねる。
「はい。体の調子はいいです。記憶は戻りませんけど・・・。それで・・・あの・・・」リーフは、気になっていることを相談しようかどうか迷っていた。(お医者様だけど・・・男の人だし・・・言いにくいなぁ)
もじもじしているリーフを見てクロードはフッと笑う。「どうしました?何かあるなら、言ってください。私で分かることなら何でもお答えしましょう。」
寝ているリーフの横に腰かける。「診察をしますので、気が向いたら話してください。」いつもならリーフに、自分で服を脱ぐように言うのだが、今日はクロードが脱がし始めた。シャツの胸元のボタンを1つづつはずしていく。クロードの顔がリーフの顔に近づいた。
珍しい緑色の髪。前髪をかなり長く伸ばしているせいか、今まで分からなかったが、近くで見ると美しい顔をしている。鋭い瞳は深い森のようなグリーンとブルー。「あの・・・自分で脱ぎます・・・」リーフは急に恥ずかしくなった。
「で?話してくれる気になった?相談ごとを。」
半裸になったリーフの身体をじっと見つめている。
逆らえない何かを感じるリーフ。
「あ・・・あの・・・。ボク、記憶喪失なんですが、生活に必要なことは覚えているんです。たとえば、食事の仕方や、お風呂の入り方とかなんですけど・・・。」「そうだね」「でも・・・あの、ジャックさんとのことを思い出せないんです。その、夫婦のこととか。いろいろ・・・」「夫婦のこと?」「・・・・夜の・・・」これ以上は言えそうにないリーフ。「ああ、そういうことですか。」「思い出せないから、どうしていいのか分からなくて・・・。」「最初から知らないんじゃない?」「え?」
クロードは横たわるリーフの上に乗ってきた。「診察もかねてね、見てあげましょう」
まだ冷たい手でリーフの身体のあちこちを触る。「細かい傷は、まだ残っていますね・・・。」クロードの舌がリーフの傷を舐めた。「!!!やめてください」「反応を見てるんですよ」「反応・・・?」クロードは悪びれる様子もなく続ける。
その手が下半身に伸びて、指が無理矢理挿入されそうになった時、リーフはあまりの痛みにクロードを跳ね飛ばした。「す・・・すみません・・・。でももうやめてください・・・」「まだ、本当の夫婦ではないようですね。」クロードは乱れた服を治しながら言った。「まだ・・・夫婦じゃないって・・・じゃあボクたちまだ・・・・」「そういうことです。ジャックさんは若い男性ですからね、リーフさん。心も体も慰めてあげないとダメですよ。じゃあ、ケガの具合は良さそうなので、今日の診察はこれで。・・・何か相談事があったらボクのところにいらっしゃい。この町の人間は親切ですが、おしゃべりですから・・・。」

クロードが帰った後しばらくリーフは、体に残る彼の指と舌の感覚で動けなかった。(クロード先生のしたことって・・・。ううん、診察だよね・・・。でも・・・まだ夫婦じゃないって、どうしてだろう?結婚してるのに・・・。)考えれば考えるほど分からなくなる。(もしかして、ホントは夫婦じゃないの?でもジャックさんがボクたちは夫婦だって言ったんだし・・・。でもジャックさんはすごくカッコよくて優しいから、こんなチビのボクとじゃあそもそも釣り合わないし・・・。)
ベッドから起き上がって、乱れた服を整える。「ジャックさんの聞いてみよう。今すぐ。」リーフは部屋を出た。

そのころクロードは、泊まっている宿屋に帰りついていた。「おかえりなさい、クロード先生。さっき、果物屋のカンナおばあちゃんがきて、腰が悪いから診てくれって言ってたんだよ。頼めるかい?」と、太った宿屋の主人が声をかけてきた。
クロードはニコリと笑って、「もちろんですよ。一度部屋に戻りますが、すぐに行ってきましょう。」と言った。
「いやあ、助かるよ!医者がいないこの町で、一か月も崖の上に行けなくなった時はどうしようかと思ったが、アンタのおかげで町の人間は大助かりだ!」
「いえ、こちらこそ。弟までお世話になって恐縮です。」「いやいや、弟さんも元気で明るくて、近所の奥さんの人気者さ。うちで食事をとることなんてめったにないくらいお呼ばれしてるよ。ああでもいまはめずらしく、部屋であんたを待ってるよ・・・。」
宿屋の二階の角の部屋。日当りが良くて広く、この宿で一番上等な部屋だ。
クロードがドアを開けると、ベッドに寝転がる緑色の髪の少年が見えた。少年はニコッと笑って出迎える。「おっかえり~!クロード先生!・・・にいさん!」
「ただ今戻りました。ロック様。」「だめだよサスケ。ここでは、ボクの名前はアベルでしょ?」ロックの前で跪くサスケ。「で?どうだった?可愛いリーフは。」ロックはベッドの上に座りなおした。

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