ケーキなボクの冒険

丸めがね

その128

とっさのことで抵抗も出来ないまま、リーフは暗闇の中何者かに押し倒された。
口を押えられたまま「やめて!」と言うが、声は出ていない。たとえ声が出ていたとしても、人気のない夜の街道わきでは何の意味もないだろうが・・・。

襲ってきた男は無言のまま、リーフの服を脱がし始めた。(そんなぁ・・・せっかく男の格好しているのにっ・・・!女の子ってバレたんだ・・・!)
男がリーフの上着をはぎ取り、たわわな胸元があらわになった。雲間に隠れていた月が顔を出し、狙ったようにリーフの白く震える胸を照らし出す。
「や・・・だ!」泣きそうになるリーフ
「げっ!」
男の動きが止まる。
「・・・?」
「やっだぁー!女じゃないのよぉこの子ぉ」
「・・・・・????」
リーフが月明かりに照らされた男の顔を見ると、間違いなく男だった。それも凛々しい金髪巻き毛のハンサム。しかし、どうも雰囲気に合わない声がその口から聞こえてくる。
「っとに 紛らわしい格好しないでよね~!可愛い男の子だと思って、川辺のことろから目をつけてたのに!女なんか触っちゃったじゃない!あ~やだやだ気持ちっ!」
気持ち悪いとか言われて、さすがにムッとするリーフ。
「な、なんなんですか、あなたはっ!いきなり襲っといてなんつー言い草っ!」
男はドンッとリーフを突き飛ばして自分の乱れた服を整えた。「あら、ごめんなさいねっ。まあでもアンタ助かったじゃない、アタシが女好きじゃなくて。じゃなきゃいまごろイイコトの真っ最中よ!アタシはね、可愛い年下の男の子にしか興味がないの!」
その金髪巻き毛野郎は、ホモでショタだというかなり恥ずかしいことを堂々と言い放った・・・・・。



「で?」「で?って、なんですか?」なにせ一本道の街道、リーフとホモの金髪は並んで歩く羽目になっている。(まあ、もう襲われる心配はないからいいか・・・)と何とか思うことにしたときにこの態度。
「アンタ、名前は?」暇なのかホモはぞんざいに尋ねてきた。本当に、興味はないけど話のネタにしている感じである。リーフは現実世界のクラスメイトの、DQN組の女ボスに似てるなと思った。
「人に名前を尋ねるのなら、まずは自分が名乗るのが筋ってもんでしょう。」「きゃーナマイキっ!このガキっ!」ホモがぺしっとリーフの頭を叩く。
「・・まあいいわ、今夜の満月に免じて許してあげる。アタシの名前はアルフレッド。まあでも無粋な名前だから、ロザロッソって呼んでちょうだい。」
「ロザロッソ・・・・・・・・・。」ケッと思うリーフ。それに気づいたロザロッソにもう一度頭を叩かれる。
「ボクはリーフ。ツバサの国の城に行く途中なんだ。」「リーフ?まーお顔に似合ってしょっぼい名前ねぇ。てか、アンタ、城に行くなんて馬鹿じゃない?川辺で聞いてたでしょ、今、お城は大変なことになってるって!」
「・・・でも、どうしても行かなきゃいけないから・・・。」細かい事情はさすがに話せない。
「ふーん。まあいいわ、アタシには関係ないし。」
そんな不毛な会話をしながら、2人は深夜になって小さな集落に着いた。
「ちょっと、ラッキーよ!空いている宿があるわ!」ロザロッソが宿屋に向かって走り出す。「どうして空きがあるってわかるの?」くたくたのリーフもついて走る。「やだわ知らないの?空きがある場合は、ドアのところに緑の旗を立ててあるのよ」
確かに、緑の旗がドアの横にちょこんと立ててあった。その旗には何か数字が刺繍してある。
1★20002★3000
「この数字はなんですか?」「あー・・・。この宿の値段。一人一部屋が2000ゴルド、二人で一部屋なら3000ゴルドってこと。二人の方がだいぶんお得ねぇ・・・。」ロザロッソがチラリとリーフを見た。「ん?」

リーフとロザロッソはなぜか同じ部屋の同じベッドで寝ている。「朝まで数時間寝るだけだからもったいないでしょ」というロザロッサの提案で、二人は兄弟ということにして同じ部屋を取り、安上がりに済ませたのだ。ただしベッドは大きめとは言え一つ・・・。
しかしリーフとしても、シャルルにお金を十分もらってあるとはいえ、限りある資源は大事にしたいところなので悪い話ではなかった。(襲われかけたけど、まあホモさんだし大丈夫か。顔さえなければどっかのおばちゃんみたいだもんなぁ)
「え?何か言った?」「いえ別に。」「さあ、早く寝るわよ!お肌が荒れるわ~」
にゃ~
さあ寝よう、というときに子猫がベッドに入り込んできた。「わあ、可愛い!」思わず起き上がって抱きしめるリーフ。「あら、可愛いチビちゃんね。そう言えば宿のおかみが猫飼ってるって言ってたわね・・・。」子猫はリーフにじゃれつき、唇にちゅっとしてペロペロ舐めてきた。「あはは、舌がざらざらしてるなぁ~。よしよし」
ロザロッソはうとうとしながら子猫とじゃれるリーフを見ていた。「あら・・・?」少しずつ、リーフの形が変わっていく。「夢かしら?」ごしごしと目をこするが、幻ではない。
同じベッドに座っているのは巨乳の少女ではなく、可愛い少年に変わっていた。

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