ケーキなボクの冒険

丸めがね

その124

その青い光は、リーフが竜の舌の洞窟でブルーをかばい炎に包まれたときに癒してくれた時と同じ、青い妖精の姿になった。
妖精はリーフとシャルルの周りを飛び回り、最後にシャルルの顔に軽く口づけをした。
「あっ・・・!」カーテンを開けたように、シャルルの右半分の顔のやけどの跡がみるみるうちに剥がれ落ちる。首まであった火傷の跡が綺麗な肌に生まれ変わっていた。
「これは・・・!」川面に映る自分の顔を見て驚くシャルル。潰れて閉じていた眼球もまた光を取り戻していた。
「シャルルさん・・・!顔・・・なおってるよ・・・!」「リーフ・・・。」
シャルルはリーフを抱きしめた。優しく、強く。「あ・・・あの・・・、よかったね、シャルルさん・・・。」「君の力はなんて凄いんだ・・・!リーフ・・・。ありがとう・・・。」「えっ、ボクの力じゃない・・」そう言いかけた時、バシャバシャと川にヒューが入ってきた。捕まえてきたウサギをそこいらに放り投げて。
「シャルル!シャルル!シャルル!」感極まった様子で名前しか呼べない。両目で見つめるシャルルを泣きながら、リーフごと抱きしめた。「なおったのか、なおったのかお前・・・・!!右目も見えるんだな?!」「ああ、ヒュー。リーフがなおしてくれたんだよ。」「えっ、ボク違う・・・」「たいしたやつだな!お前は!シャルルの恩人は俺の恩人だ!!これからはお前にも忠誠を誓おう!!」

夕食のウサギを焚火で焼きながら、ヒューはしみじみと語り始めた。「シャルルの顔のやけどは俺のせいだったんだ。」シャルルは静かに微笑んで首を横に振っている。赤い炎が天使の顔をさらに美しく照らしていた。
「シャルルをあの預言者メリッサに引き合わせたのが俺だったんだ。絶対こいつは普通じゃない、凄い運命を背負っているに違いないって思ってな。果たして・・・その通りだった。赤のドラゴンに選ばれた男だったんだ。俺は誇らしかった。世界を救う男の側にいられるんだからな。シャルルは誰にも言わないようにと言ったんだが、俺は・・・ついしゃべっちまったんだ・・・。」
シャルルが13歳、ヒューが8歳の時。シャルルの能力を欲しがっていた男によってヒューは誘拐された。
「ヒューの命が惜しくば、赤のドラゴンの欠片をよこせ」シャルルは男に決断を迫られた。シャルルは1秒も迷うことなくヒューの命を選んだ。
男がシャルルの目をえぐり取り出そうとしたが、赤の欠片は男を寄せ付けなかった。
「それで、怒り狂った男がシャルルの顔を焼いたんだ・・・。それでもこいつはうめき声一つ上げず、俺を救い出してくれた・・・。」「その男はどうなったの?」「シャルルを焼いた炎に包まれて灰になったよ。それ以来・・・俺は・・・。」
「ヒュー、気に病むことはなかったんだ。ボクは誰も恨んでいないから。それにあの男は、ボクの父だったのだからね。」
シャルルは完璧な微笑浮かべた。


人間は生まれながらの悪人なんていないと言うが本当だろうか。同じものを食べて同じことをして育っても、全然違う性格になるのはなぜか。
そして、もし、生まれながらの天使がいるとしたらそれは彼だ、とリーフはシャルルを見ながら思っていた。「あれ・・・?」シャルルの白髪が少しグレーになっている。「これも君の力のおかげかな・・・?」シャルルはリーフの頭をなでた。夜になり、上機嫌で眠ったヒューをおいて、二人は焚火の近くで並んで座っている。
「リーフ。ボクはね、こう見えてもすごく喜んでいるんだよ。両目でキミを見ることができることを。」キスされるかな、と思ったが、シャルルはただリーフを両目で見つめたまま。
「リーフちゃん・・・。」「なに・・・?」
「こんなこと言うと怒られるかもしれないけど・・・。ツバサの国へ行ってリーフちゃんの心配事がなくなるまで待つつもりだったけど・・・。」視線を焚火の火に移す。「今夜、キミが欲しい。」
リーフの心臓が大きく速く動いた。拒む理由がないのは分かっている。
心の準備なんてこの先いつになっても出来るわけがない。
「・・・・・はい・・・。」リーフは心を決めた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品