ケーキなボクの冒険

丸めがね

その98

「毒・・・!エリー姫の食事に毒が入ってるの?!」
リーフはロックがくすねてきた、パンとお茶の葉をまじまじと見た。
「毒と言っても、すぐに死ぬとかそういうものではないんだよ。幻覚草のたぐいだね。闇ハーブなんだ。まずお茶のほうは、体の調子を悪くさせ、むくんで太りやすくするもの。しかもこれを飲まないとイライラしてきて苦しくなり、常に飲まずにはいられなくなる。パンの方は、体の毒素を貯めやすくするもの。内臓が弱って肌が荒れるね。つまり女性がこれらを口に入れると、醜くなるんだ。」
「太って、肌が荒れて・・・って、まんまエリー姫の症状じゃない。」戸惑うリーフ。「そんなバカな!あの食材は、姫様の母上が直々に調達された特別なものなんだよ・・・!可愛がっておられる上二人の姉姫様たちにもそんなことなさらないのに!」クルトには信じられない様子だった。
「えっ、ちょっとまって。じゃあ、あれを食べてるのは、姉妹でもエリー様だけなの?」「そうだよ、リーフ。正直美味しいものではないが、エリー様は、母君の愛だと信じて召し上がっているんだ。普段はエリー姫に冷たい母君が、食事のことだけ気に掛けてくれるからと・・・。」
「それ、おかしい!」ロックがぴょっこり顔を挟んでくる。
「ボクの計算によると、、、っていうか、ボクの計算じゃなくても、それは母君がエリー姫に毒を与えているとしか思えないよねっ!で、ボクの推測によると、母君はエリー姫を醜くしておきたいわけがあるんだ。醜い姿、つまり本当の顔でないエリー様にしなくてはならないってこと!なぜ?たぶん、知られたくない誰かに似ているから!自分に似てる分には不都合はないよね。じゃあお父さんである王様に似ちゃまずい?まさか!現に姉姫二人はお父さん似だよ!
ということは・・・」

「お・・・お父さんが違う・・・?」恐る恐るリーフが発言。
「ピンポーン!大正解!姫様のお父さんは王様ではありませーん!」
「なんてことを!」クルトがはしゃぐロックの口を手でふさぐ。
しかし、がっくり肩を落としてクルトは乾草の上に座り込んだ。「噂は・・・あったんだ。退屈な召使たちは噂が大好きだからね。王様が長い間遠征に行かれてお戻りにならなかったとき、王妃様のもとに夜、城の護衛を任されていた騎士が足しげく通っていたと・・・。そしてその後ご懐妊なさったと。」
「じゃあ、エリー姫は・・・。」「たぶん,その騎士にお顔が似ていらっしゃるんだろうね・・・。姫様の本当のお顔が分かれば、その騎士の立場が危ういと、お妃さまはお考えになったのだろう。」
「王妃様、エリー姫をさっくり殺さなかっただけマシだよねー」ロックが思ってても言っちゃいけないことを言う。
「ロック・・・黙ってて・・・。でもまあ、とにかくエリー姫にこれ以上このパンやお茶を食べさせないようにしないと。エリー姫が憎しみのあまり”泉の者”になっちゃったら大変だもの」
「でもどうしたら・・・。」しばらく悩むクルトとリーフ。
「ああ、ごめんよリーフ、ぼくはもう行かないと。」クルクルが言った。「どこに行くの?」「これでも森の大賢者、黒のドラゴンの復活の噂のおかげで、色々忙しくてね。でもリーフがボクを必要だと思ったらいつでも呼んで。どこにいても、誰といても、何をしててもすぐに来るから。」リーフのおでこに軽くキスをすると、目の前に魔法の扉を出した。リーフとクルクルが、ホシフルの国の城の地下室を抜けだした時の扉と同じだったが、今度のは形と色が鮮明だった。「うわぁ、すごいすごい!」嬉しそうにロックが声を上げる。扉の向こうに行くクルクルを追いかけようとして、扉に激突、鼻の頭を思い切りぶつけていた。
「いてて・・・。残念、行けなかったかぁ!ところでさ、リーフ。姫様に普通のご飯を食べさせるには、ブルーさんの協力があればいいんじゃない?」
「えっ・・・。ブルーさんの・・・。」森の出来事以来、ブルーとまともに目も合わせていない。「あの・・・ちょっと・・・無理かな・・・。ボク、大嫌いとか言っちゃったし・・・頼めないっていうか・・・。」
「でもさ、ブルー王が、姫に、妻になるなら我が国の食べ物を食べてもらわなければ困るとかなんとか言えば、案外いけるんじゃないの?」
「う~ん、でも、やっぱりぃ・・・」うじうじ煮え切らないリーフ。
「なにさぁ、リーフったらだらしない感じ!じゃあ第二作戦しかないか!けっこう大変だよ!」「第二作戦なんてあるの?いい、いいね!大変でもそれにしよう!」聞く前から食いつく。
「じゃあ、姫様誘拐大作戦だ!」「誘拐?!!!」リーフとクルトが同時に叫んだ。

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