ケーキなボクの冒険

丸めがね

その80

「マジですか?!」
思わず心の声がポロリと出てしまうリーフ。
クルクルの、何でも知っているような美しい微笑みは「イエ~ス」と言っていた。
「不死の大賢者が欠片の宿主になるとは・・・。このぼくでも信じられないけどね。竜の舌の洞窟で空間のゆがみを感じた時、確信したんだ。これは、今までは歴史の傍観者だったぼくにも関係のある物語だってことを。」
空間のゆがみ・・・。ブルーが倒れて、地震が起こり、赤のドラゴンの亡霊みたいなのが現れた時だろうな、とリーフは思った。
「そうだ、森の大賢者のクルクル、キミなら知ってるんじゃない?赤い欠片を集めるのかの方法・・・・。ボクが、男の人と愛し合う以外の。」
クルクルはニャッと笑って言った。「知ってるけど教えてあげな~い!」「えーーーーっ!」
リーフの叫び声が雪山にむなしく響いた・・・。


その日一日天気に恵まれて、リーフたち一行は無事に雪山を下ることができた。まだ寒いが緑が見え始めた街道に、ちらほら家が建っている。
「ブルー王はすでに城に到着されておりましょう。ここからですと2時間もかかりませんから」ベイドは懐かしそうにあたりを見回しながら言った。「山を下りるのは3年ぶりです。」
「そうなんだ・・・。あ、そう言えば、迎えに来た兵士さんが言ってた、エリー姫ってどんな人なの?」
お姫様と聞くと嬉しくなって、無邪気にリーフが聞く。
ベイドはちょっと困った顔をした。「エリー様は・・・。そうですね、ご説明しておいた方が良いでしょう。これからすぐにお会いになるでしょうし。エリー様は、ツバサの国の第三王女、ブルー王と婚約なさっていたお方でございます」「婚約うっ?!」もの凄く驚くリーフ。
「そんな、愛する人がいたのにボクにあんなことするのか・・・」ブツブツつぶやく。
「いえ、リーフ殿、ブルー様は決してあの方を愛してなどおられませんでした。エリー様は・・・」何か言おうとして躊躇するベイド。しかし意を決したようにリーフに話し始めた。
「エリー様は、ひどく心を病んだお方なのです。全ての者を憎むことしかしません。お体も醜く太り、つぶれたようなお顔は決して美しいとは言えないのです。上の姉王女二人はお顔は美しいのですが、妹であるエリー様を醜いがゆえにさげすんでおられました。王と王女もあまり末娘に愛情があったとは言い難い態度でした。そんなエリー様が唯一お心を許されたのがブルー様です。
ブルー様は、姉君カナシャ様がお亡くなりになる以前は、誰よりも優しいお方でしたので、哀れなエリー様を救って差し上げたいと、ツバサの国に人質として送られた幼少期以来、ずっとエリー様を励ましてこられたのです。」
「そうだったの・・・。それで、懐かしくなって、エリー姫がブルーに会いに来たのかな?」
「それが・・、ただお会いになるためにお越しになったとは思えないのです。ブルー王は父君と母君、兄君を暗殺されたためヒョウガの国に帰るとき、追いすがるエリー姫を振り切って来られましたから・・・。噂では、エリー様はブルー王がいなくなってから、手が付けられないほど発狂されていたそうです。」
「そのエリー姫が、いまお城にいるんだ・・・」リーフはいや~~~~な予感で一杯だった・・・・・。


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