ケーキなボクの冒険

丸めがね

その71

大きな音と地震は体を包むように響く。まるで、すぐ横でうねっているように・・・。
恐ろしくなったリーフは倒れたブルーを起こそうとした。「ブルー、起きて、地震だよ、なんか変だよ!」しかしブルーは、高熱のせいか意識がもうろうとしている。立ち上がることもできないようだ。「いくら熱でも、いきなりこれはおかしいよ・・・」
リーフは助けを呼ぼうと、扉の所へ行き開けようとするが、鍵がかかっていてビクともしない。「うそっ・・・内側から掛けてたはずなのに、どうして?」
そう言えば、これほどの地震なのに家来たちが王の様子を見に来ないなんておかしい。
「だれか!だれか来て!地震が・・・ブルー王が熱で・・・」しかしリーフの声は響くことなく、部屋の中に吸収されているようだ。「おかしい、おかしいよ・・・!」
この部屋だけが違う空間に投げ出されたような恐怖を感じるリーフ。ブルー王は息苦しそうにベッドに突っ伏したままだ。
「どうしよう・・・」リーフがなんとかしようとドアと格闘していると、すべての部屋のろうそくの火が ボッ と燃え上がった。その炎が一か所に集まり、黒い煙になる。
その煙は何かの形になった。恐ろしさでリーフは声も出ないが、その煙から目が離せない。煙はやがて、赤く燃えるドラゴンの姿になった。
「ぐううっ・・・」ブルーがよりいっそう苦しむ。「ブルー大丈夫?!」リーフはブルーのそばに近寄った。
赤いドラゴンは体をうねらせて 大きく吠えた。
「私の心臓はどこだ。私の心臓はお前の物ではない」
ドラゴンはブルーに話しているようだった。
「があああ!!」ブルーは自分の心臓を押さえて苦しんだ。「ブルー!!」
「そこか」
赤のドラゴンはゆっくりブルーとリーフに近づき、腕をブルーの心臓に伸ばした。「何するのっ!」とっさにブルーをかばうリーフ。「返してもらうまでだ」
「心臓取っちゃったらブルーが死んじゃうじゃない!」
ドラゴンがリーフの腕を掴んだ。ジュッ っという音とともに、焦げた匂いがした。リーフの腕の掴まれたところが焼けている。「あああっ!」火傷の痛みに、リーフは腕を押さえて倒れ込んだ。
「なぜ・・私をかばうんだ・・・リーフ・・」かろうじて意識を取り戻したブルー。しかし動けない。
「かえせ・・・」ドラゴンはブルーの心臓に迫り、その手が服を焦がした。「やめてっ」
リーフがドラゴンを止めるように抱き付く。「なんてことをリーフ・・・!燃え尽きてしまうぞ・・・!」
リーフは瞬く間に炎に包まれた。視界が真っ赤になる。リーフは気を失って床に倒れた。炎は服を消し去り、裸になったリーフはなおも燃え続けていた。
その時、リーフの足の妖精の紋章が蒼い光を放つ。それはリーフを包み込んだ。
光は炎を消し、何人もの小さい氷の精を生み出した。
氷の精はリーフの傷口を癒し、ウフフ、と小さな笑い声を残して消えていく。ドラゴンもいつの間にか消え、最後の一人の妖精がブルーのおでこにキスをすると、ブルーの熱も消えていった。
動けるようになったブルーはリーフを抱き起す。手にはなぜか赤い宝石が握られていた。

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