皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
34話 婚礼
ドキドキする~!
私は純白のドレスで身を包み、ティアラ、ベールも身につけ出番を待っている。
お化粧はネネが腕によりをかけてしてくれた。
「アリア様~ぎれいでずよ~」
ネネはお化粧が終わるといきなり泣き出した。
「一才の時がら~ぜいちょーを見てきたネネにどっでわ~」
ネネ······どこの言葉を言ってるの?って感じになっているわよ!
でもネネの言いたいことはよく分かるわ!
私もグッと込み上げてくるものを感じた。
ネネは滝のような涙を流しながらティッシュペーパーを手に取り
「ぶっちぃーっっ!」
と鼻をかむ。
そんなネネを見ていると、走馬灯のように色んなネネとの思い出が過よぎる。
私も涙が出てきた。
ネネとはお別れではないのに·····
人がしんみりとなっているときに突然ネネが叫ぶ。
「あっ!アリア様!泣いてはいけません!」
え!?
「ネネが渾身を込めて完璧なお化粧をしているのです!剥げちゃうじゃないですが!」
ネネはさっきまで滝のように出ていた涙をピタッと止めて私に注意をする。
ネネ·····そっち!?
いい雰囲気だったのにネネの一言で台無しになった。
·······でも·····。
鏡を見て思う。
「ネネ····これはやり過ぎじゃない?」
バッチリ白粉もつけて、いつもはぷっくりとした唇にうっすらとしか塗らない口紅も、バッチリ可愛いピンク色の口紅を塗っている。
目も睫毛をくるんっとさせてマスカラというものを初めてつけた。
大きい瞳がもっと大きく見えて、まるでお人形さんみたいになっている。
頬にもうっすらとピンクのほほ紅というものをつけている。
「いいえ!そんなことありませんわ!物凄く綺麗で可愛いですわ!」
「·····睫毛が重いわ·····」
マスカラってつけると重いのね····。
「我慢ですわ!」
「······。」
······ネネ、さっきの涙はどこへいったの?
ネネは「お化粧が少し剥げてます!アリア様が泣くから」などとぶつぶつと言いながら、お化粧直しを始めた。
·····ネネさんや、少しは感傷にひたらせておくれ·····
そんなことをネネとやりとりしていたら時間がきたようで、ランディが呼びにきた。
私が部屋から出るとランディとキースは私を見るとごくりと喉をならした。
ネネは勝ち誇ったように「ふふーん」と鼻を鳴らした。
「キース、ランディ様、アリア様に何か言うことがあるのではなくて?」
ネネの言葉にハッとなる二人。
「アリア様、とてもお綺麗です。あまりにも綺麗で言葉を失いました。申し訳ございません。」
ランディは頬を染めながら褒めてくれた。
「アリア様!本当に綺麗です!」
キースも何故か直立不動になり敬礼しながら褒めてくれた。
ちょっと照れるわね。
「ありがとう。」
私は少し頬を染めた。またもや二人から喉を鳴らす音が聞こえた。
リンカーヌ王国では教会に行くまでの間は花嫁姿を誰にも見られてはいけないと決まりごとがあり、私は上から布を被らされて、荷台みたいな豪華な台車に乗り、馬車まで連れて行かれた。そこからはランディとキースに支えられて馬車に乗った。
馬車にはネネも同乗をし、馬車のドアが閉まると布を取ってくれた。
「ネネありがとう。何も見えないからちょっと怖かったわ。」
ネネはニヤリとし、
「ふふふ、皆さん振り向いてアリア様を見たげでしたよ。クックック」
不気味な笑いをする。
ネネの人格が·····崩壊?
馬車はゆっくりと動き出した。外を見たいけれど、花嫁姿を見られてはいけないので小窓も開けれない。
ネネは私のチェックで忙しいそうに手と目を動かしていた。
そうこうしている内に教会に到着。
私はまた布を被り、ランディとキースに助けられながら豪華な台車へと乗った。
既に人々が集まっているらしく、
「花嫁様だ!」
「早くみたい!」
と、声が聞こえる。私の鼓動が早くなっていった。
そして、式会場に行くために教会の廊下を通り台車が止まった。
「アリア様着きました。」
ランディは、そう言って私の手を取ろうとした時に
「ランディ、そこからは私がしよう。」
ルイス王子の声が聞こえた·····と、思った瞬間に身体がふわりと浮いた。
「きゃっ!」
私は驚いて声が出てしまった。
ルイス王子は私を横抱きをして、そっと足を地面につける。
「アリア、布を取るよ。」
ルイス王子はランディと一緒に布を取った。
私はベールを被っていて、まだ顔が見えない状態だった。
「アリア、ベールも上げるよ。」
ルイス王子はゆっくりとベールを上上げていく。そして、私を見て目を大きく開けて
「····綺麗だ·····。」
と呟いた。
「アリア、とても綺麗だ。」
「ありがとうございます。」
「やっとこの日がきた。君と夫婦になれる。」
ルイス王子は私のおでこに軽くチュッとする。
「ルイス殿下、そろそろ····」
ドアの前で待機をしていた教会の服を着た人から促される。
「わかった。アリア、用意はいいかい?」
いよいよか····。
私はぐっと身を引き締める。
「はい。ルイス殿下。」
ルイス王子はにっこりと笑い、ベールを被せる。そして腕を出してきたので私は腕を組んだ。
「大丈夫だよ。」
ルイス王子は緊張する私に安心をさせるようにと声をかけてくれた。
「···はい····」
教会の者が私達が準備が出来たのを確認し、ドアを開けた。
ベール越しだからあまりよく見えないけれど、真ん中にはレッドカーペットが引いてあり、両側に綺麗に参列者が並んでいる。椅子などはなく皆立っていた。
私達はゆっくりとレッドカーペットを歩き始めた。色んな国の人々や、貴族などの顔が見える。
やはり最前列には王族が並んでいた。一番前の左側に立っていた。しかも王族のみ椅子がある。国王夫妻は椅子に座っていた。
右側にはギルバードお兄様とランクスがいた。
どうやら左側にはリンカーヌ王国の人達、右側には来賓の人が並んでいるようだ。
私達が壇上に上がると国王夫妻も立ち上がった。
私とルイス王子は向か合い、ルイス王子が私のベールをずらす為に一度ティアラを取り、司祭が持っている豪華な台の中に置いた。そして私のベールを後ろにずらしていく。私の顔がはっきりと見える位置までベールをずらすと、もう一度ティアラを私の頭の上に置いた。
私の横顔がはっきりと見える人からはため息や喉を鳴らす音が聞こえた。
そして私達は司祭の方に向いた。
司祭が婚礼の儀式を始める。
「ルイス・リンカーヌ、汝はアリア・サマヌーンを妃とし、苦楽を共にし生涯愛し守りぬき、リンカーヌ王国に尽くすことを誓うか?」
「我がルイス・リンカーヌはアリア・サマヌーンを妃とし生涯愛し、守りぬきリンカーヌ王国に尽くすことを誓います。」
「アリア・サマヌーン、汝はルイス・リンカーヌの妃となり、生涯愛し、リンカーヌ王国に尽くすことを誓うか?」
「私わたくし、アリア・サマヌーンはアリア・リンカーヌとなり、ルイス・リンカーヌを愛し共にリンカーヌ王国に尽くすことを誓います。」
あっ!生涯がぬけちゃった!
····まあいいや!
チラッとルイス王子を見ると少し眉間にシワが寄っていたが、すぐにもとの顔に戻った。
「皆の前で誓いが行われた。」
司祭が言うと、ヘルデス陛下が中央に出て来て、
「この婚礼を祝福する!」
結婚を認める言葉を述べて婚礼の儀式が終了となる。
そして一斉に拍手が鳴り響く。
この拍手もこの婚礼を認めるという意味もある。
無事に(ちょっと間違えたけど)終わりホッとした。
今度はヘルデス陛下とレイラン妃様が私たちの前に来て先導をしてくれる。
貴族や他の国の人達は私達をくぎいるように見ている。
ホッとしたけど、凄く注目されてるからまだドキドキするわ。
教会の式会場からの長い廊下を歩き、外へ出た途端に、「わぁぁ!」という国民達の声が聞こえた。
「ヘルデス国王様!」
「レイラン王妃様!」
様々な呼び声が聞こえる。
ヘルデス陛下は手を上げ、それを見た国民は黙る。
「本日は我が息子、ルイスとサマヌーン国のアリア姫との婚礼で二人が結ばれた!皆のもの祝福を!」
ヘルデス陛下の言葉で国民の歓声が凄く地響きがした。
「「「「「おめでとうございます!」」」」」
「「「「ルイス殿下!アリア様!ばんざーい!」」」」
国民の相手をヘルデス陛下がしている間に私とルイス王子は屋根のない馬車に乗った。
準備が出来たのでゆっくりと馬車が動きだす。これからパレードが始まるのだ。
ルイス王子は私の腰に手を回してがっちりとホールドをする。
私達は国民に熱烈な祝福を受けながら王城へと向かった。
「すげぇ綺麗な姫様だ!」
「アリア様はあの美しさはまさしく女神様だ!」
「我が国に女神様が来てくださった!」
「「「「アリア様!ばんざーい!」」」」
いやいや、女神様ではありませんよ?私は普通の人間ですわ。
若干、国民の言葉に引きつつも圧倒するような歓声に包まれて馬車が走る。
私は笑顔を絶やさずに手を振り続け王城へと戻った。
·····つっ、疲れた~·····
隣のルイス王子を見るとケロリとしている。
色んな国に行って慣れているのね·····。
ルイス王子は私の方をニコニコとして見て
「アリア、国民の言うように君は女神様だね。」
臭いセリフを吐く。そしてキスをしてきて、ぎゅっと抱き締めてくる。
「やっと私の物になったね。」
「·········。」
「夜は寝かさないよ」
夜!
私はハッとしてルイス王子を見上げる。
ルイス王子はいやらしい笑みをしていた。
「で、でも夜は舞踏会が·····」
そうよ!婚礼式の後は御披露目みたいなのがあるじゃない!
「あれ?聞いてない?舞踏会は明日だよ。」
「へ?」
え!?え!?
「当たり前じゃないか。婚礼式の後は来賓の人にはゆっくりしてもらって、明日のお昼過ぎに舞踏会をするんだよ。」
「····聞いてない·····」
「うん?そんなはずはないけどね。これからは私達の時間だよ。」
ルイス王子はふふふと笑う。
私の背中には冷たい物が伝う。
「夕食が終わったら初夜だね。」
クックックとルイス王子は笑った。
えー!
「しょっ、初夜は夜ですわよね?」
「うん?まあ、夜かな····というより夕方からだね。早めに夕食を取り二人で一緒にお風呂に入ろうね。」
ルイス王子は色欲を帯びた目をしにっこりと笑っている。
いきなり言われて呆然としている私をルイス王子はお姫様抱っこしてスタスタと私達がこれから過ごす部屋、(実際はルイス王子の宮)へ向かった。
待って~!心の準備出来てなーい!
ネネ助けて~!
私は心の中で叫んだ
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