皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
25話 お披露目会
大きな拍手の中、ルイス王子にエスコートされて国王夫妻がいる壇上まで行く。
「見事な白銀色の髪の毛だわ······」
「なんとも美しい方だ。」
ヒソヒソと讚美の声も聞こえる。挙げ句にはご高齢の貴族の男性が
「女神様が我がリンカーヌ王国へ来てくださった。」
と私に手を合わせて拝む。
止めて!私は女神様なんかじゃありませんから!
心の中で叫ぶ。
それでも笑顔を忘れずに歩いた。
そして三段階段を上り国王夫妻がいらっしゃる壇上へ上がった。
私達が自分の側へ来たのを確認したら、ヘルデス陛下が参加者に向けて声を放つ。
「皆の者!今日は我が息子の第一王位継承者であるルイスの婚約者のお披露目会に来てくれて感謝する。ルイスの隣に居るのが、はるばるサマヌーン国から嫁ぎにきてくれた、第三皇女のアリア殿だ。結婚は来年になるが、将来の皇太子妃だ。本日来られたばかりで、慣れていないので優しく接してやって欲しい。頼むぞ!」
ヘルデス陛下の言葉にまたもや大きな拍手が鳴り響く。
そしてルイス王子が私の腰を持ち一歩前へと出た。
「皆の者!今、国王陛下からご紹介があった私の婚約者のアリア嬢だ。」
ルイス王子が私に笑顔を向けきたので、挨拶しろと言われているのだと判断して、ドレスの裾を持ち上げ軽くお辞儀をした。
「初めまして。サマヌーン国から来ましたアリア・サマヌーンと申します。まだまだ未熟者ですが、早くリンカーヌ王国に慣れるように頑張って参りますのでどうぞよろしくお願いいたします。」
私の挨拶が終わると、ルイス王子がドアの近くにいる従者に手を上げた。
従者はそれを見るとお辞儀をしてドアを開けた。開けた先にいたのはランディだった。ランディは小さく高価そうな装飾が施せれている赤い色をした分厚い布の真ん中の上に、小さいな四角の箱がちょこんとのっかっている物を持っていた。
ランディが通ると、ご令嬢たちが
「ランディ様よ!素敵だわ。」
「ランディ様、こちらへ向いてくださらないかしら。」
等と黄色い声が聞こえた。
ランディは静かにこちらへ向かってきて、壇上の下で膝まついて頭を下げ、両手に持っている物を高々に上げた。
ルイス王子が壇上を降り、真ん中にある小さな四角の箱を手に取り、また壇上へ上がってきた。そしてその箱を私の前でパカッと開けた。
そこに入っていたのは、ピンクのダイヤモンドの指輪だった。
驚いている私をよそに、ルイス王子は箱からピンクのダイヤモンド指輪を取って、箱は近くいる側近に渡した。そして私の左手を取り薬指にそのピンクのダイヤモンドの指輪を嵌めた。
これやもしや·····婚約指輪兼結婚指輪·····?
これはリンカーヌ王国の王族、貴族の慣わしなのだが、伴侶の相手に家紋、もしくは紋章が入った指輪を贈るのだ。
王族のみ家紋と紋章と2つあって、一つは国旗にもなっている獣の虎の顔ような家紋と、それとは別に自分の独自の紋章を持っている。王子は10才になったら自分で決めるらしい。ちなみに王女にはない。
ルイス王子から貰った指輪には、ルイス王子の紋章であるユリのデザインで、プラチナリングでユリの真ん中に大きいピンクのダイヤモンドが嵌め込まれている。
うっとりするほどの品物だ。
「素敵······」
「気に入ってくれたかい?」
「はい····ありがとうございます。」
私はお礼を言って、皆様に指輪を見せるように左手を上げた。
会場からは大きな拍手とともに指輪に対しての讚美の言葉が飛び交っている。
「なんと!ピンクのダイヤモンドではないですか!しかもあんな大粒なんて滅多にない品物だ!」
「素敵ですわ!」
うん、そう!ピンクのダイヤモンドなんてこの世界でもほとんど発掘されていない。私なんて見たこといわ。多分、ここにいる方々のほとんどの人が見たことないと思うわ。
素敵だけど、金額が気になるのは貧乏な国にいたからでしょうか·····。
それからは音楽が流れ始めて、挨拶会が始まった。
ルイス王子は最初に兄妹を紹介してくれた。
国王様夫妻はダンスホールで踊っている。
まずは兄弟から。第二王位継承者のルーベルト様、ルイス王子の弟で年は1才年下。第三王位継承者ナカル様、こちらはルーベルト様と同い年らしい。あと王子様は全部で六人。一番小さい王子様は三才のバール様。
そしてお姫様は全部で10人。
ルイス王子と同腹のお子様は私と同い年のメイラン様、、ヨーラン様は10才。
ルイス王子は16人兄妹ですわね。
その他の方は兄妹が多いので割愛します····。
まずはルーベルト様から挨拶をした。
「初めまして。ルーベルトです。」
「初めまして、アリアと申します。宜しくお願いいたします。」
「アリア殿は本当に綺麗だ。人間ですか?」
それはどういう意味かしら?失礼な!
私はちょっとムッとした。
「貴女は女神様ですか?天使なんですか?」
なんかうっとりとした目で私を見ているのですが······。
その視線を遮るかのようにルイス王子が私の前に立つ。
「そんなことある訳ないだろう。」
ルイス王子はルーベルト様にそう言って次にナカル様を紹介してくれた。
「ナカルです。宜しくお願いいたします。」
「初めましてナカル様。私はアリアと申します。宜しくお願いいたします。」
お辞儀して顔を見るとナカル様は少し冷たい目で私を見ていた。
ルーベルト様とは対象的ね。
でも目線をチラチラと胸に向けているけれど!
一通りルイス王子の兄妹達の挨拶が済み、次は叔父やらと色々な方と挨拶を交わした。
その中には以前この一年早くの輿入れの打診にきた、ダンバル宰相もいた。
もちろん、側妃のローゼンリタの実家である、マイヤー公爵候とも挨拶を交わした。
笑顔で挨拶してくれたが、目は笑っていなかった。
そしてマイヤー公爵候はルイス王子に話しかけた。
「ルイス殿下、いつお子をお作りになるつもりでしょうか?ローゼンリタが早くルイス殿下のお子が欲しいといつも言っております。」
それって今言うことかしら?
「ルイス殿下の寵愛を誰よりもローゼンリタが受けているのは本人も分かっておりますが、早く愛する人の子を····」
「口を慎みたまえ、マイヤー公爵候。」
ルイス王子はマイヤー公爵の言葉を遮り冷たい目でマイヤー公爵を見ながら低い声で言った。
それにはマイヤー公爵もびびり、顔を強張っている。
「も、申し訳ございません。」
マイヤー公爵は頭をペコペコ下げながら謝ってきた。
「ローゼンリタのことは今は関係ない。下がりたまえ。」
ルイス王子に下がれと言われた以上は下がらないといけない。マイヤー公爵はまだ何か言いたそうでしたが、お辞儀をして去った。
ルイス王子は私の方に向き
「すまない。」
謝ってきた。
「大丈夫ですわ。ルイス殿下が悪い訳ではありませんもの。」
単に娘が寵愛を受けていると言って牽制してきたのだと思いますし。
私よりも娘の方が愛されいるとでも言いたいのでしょう。
私にはどうでもいいことですけど。ただまだお子が出来ていないというのは気になるところだけれど。
それからは滞りなくいった。
覚える人が多くて大変だわ·····。
夜会が終わるまで休む暇もなく、挨拶を受けて回った。
貴婦人からはもっぱら、このピンクのダイヤモンドの指輪のことで、夢中で見て賛美を言っていたけれど。
夜会は国王夫妻から退出し、次は私達と続いた。ルイス殿下と私は挨拶をしてから退出した。
退出してすぐにルイス王子は気使う言葉を言ってくれた。
「疲れただろう?」
「はい。とても疲れました。本日リンカーヌ王国に到着し、当日にこんな大きな行事がありましたので·····」
私は疲れ切っていた。顔なんか笑顔を作りすぎて頬がピクピクと痙攣している感じだ。
「今夜はもうゆっくり休むといい。明日は側妃達との対面がある。それまでは部屋でゆっくりしておくといい。」
····ああ、とうとう側妃達の対面なのね。
側妃達は今日のお披露目会には参加していない。別に対面をすることを設けているからだ。
これは明日も気が抜けないわ。
ちょっとうんざりした私だった。
そこへルーベルト様がやってきた。
「兄上。」
「ルーベルトか····どうした?」
ルーベルト様は笑顔でとんでもないことを言ってきた。
「はい。兄上、アリア殿を私に譲ってください!」
はいー?この方はいきなり何を言っているのでしょう!?
私もルイス王子もルーベルト様の唐突の言葉に驚愕した。
「何?アリアを譲れと?」
ルイス王子の顔が険しくなっていく。
「はい。よくあることではないですか。アリア殿はローゼンリタ以外の兄上の側妃を身分を考えると一番低いではありませんか。皇太子妃ならもっと大国の皇女を迎え入れるべきではないですか!?」
「······」
ルイス王子は黙って聞いているが、かなり怒っているのが表情で伺える。
「その点、私は王位継承者でも第二位です。私の正妃になるのには身分も合っていると思います。」
そ、そうなのかな?
思わず考えてしまう私。
でも····
「でも、私は先ほど、ルイス殿下の婚約者としてお披露目しましたので····」
「それは大丈夫だよ。稀だけれど、婚約を発表してもその者を兄弟に譲渡することもある。同じ王家の間でね。」
え?そんなこと許されるの?
少しえげつない話しだわ!
「話ならん。アリアは私のものだ。私の伴侶になるのだ。誰にも譲るつもりない。」
ルイス王子はそう言って強引に私を抱き寄せて歩きだした。
後ろでルーベルト様がわーわーと何か言ってますが·····。
ルイス王子は私を宮迄送ってくれた。
そして別れ際に
「アリア、私は貴女を誰にも譲るつもりはない。これからはルーベルトが来ても無視するように。」
そう言って唇にキスをチュッと軽くして自分の宮へと帰って行った。
私は部屋に入り、ネネに「もう疲れたから寝るわ」
そう言ってベッドにダイビングした。
······疲れた····もう何も考えたくない!
最後の最後まで疲れたわ!
何か色々とありそうな予感·····。
それよりも明日の側妃達の対面よ!
明日のことを考えると憂鬱になる。
あっ!ピューマとシャルの様子を見にいかなきゃ。
そう思いながらも、疲れが一気にきたのか、瞼が重くなりそのまま眠りについてしまった。
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