皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~

亜里沙 海里

16話 突然ルイス王子がやってきた。

本文

 

 リンカーヌ王国から帰国して半年が経とうとしていた。

 その間にも私は13才の誕生日を迎え、ルイス王子から沢山の誕生日プレゼントも頂いた。


 私はいまだにルイス王子の側妃のことを引きずっていた。


「はあ····割り切らないといけないのは分かってるのだけども·····」


 割り切れないのよね······。裏切られた感が半端なく感じじゃって······。


 週に一回程度にルイス王子から手紙がやってくる。いつも楽しみにして、すぐに返事を書いていたけど、今は2、3回きたら一回返す程度になっていた。

 何を書いていいのか分からなくなってしまったのだ。

 なのでもっぱらピューマのことをしか書いていない。


 私が急にあまり返事を書かなくなったので、「体調が悪いの?」「大丈夫?」「返事があまりないけどどうしたの?」

 などと書いてきて、今では頻繁に手紙がくるようになった。

 それと一緒にプレゼントも。ドレス、宝石····機嫌取りかしら。


 正直·····鬱陶しい·····。


 気持ちの整理がつくまではそっとしておいて欲しい。

 まあルイス王子は側妃のことが私にバレてること知らないから仕方がないのかもしれないけど。


 それでも日常は変わらない。相変わらずリンカーヌ王国のことを勉強や教養をしている。



 コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「アリア様、そろそろピューマのお散歩のお時間です。」


 ネネに言われて思い出す。

 もうそんな時間なのね。


「すぐ行くわ。」


 私はピューマにリードを付けて散歩の用意をする。


 ピューマはこの半年でぐっと成長した。サマヌーン国に帰国した時は小型犬くらいだったのに、今では大型犬より少し大きい位まで成長していた。


 脚の二本立ちさせたら私の身長より大きくなる。ちなみに私の身長は155センチ。

 ピューマはなかなか獣としての貫禄が出てきていた。

 ピューマの散歩は夜に行っている。近衛隊と騎士団を引き連れての散歩だ。

 夜で森に行くから散歩に行くのも大所帯になる。


 私はランクス副隊長の馬で二人乗りで行っている。


 森に着くとピューマを離して自由にさせる。

 城で窮屈な思いをさせてるいるからね。


 本能なのか狩りとかをしてくる。最初は兎を咥えて帰ってきた時は本当に驚いた。

 一時間ほど自由にさせているので他の者は剣の練習をしたり、周りの警備をしていた。


 私はネネに紅茶を入れてもらいゆっくりと飲む。


 最初は森の暗闇が怖かったけど今は大分慣れてきた。

 本来なら城の外には出さない約束だったが、やはり獣なので狭いところにずっと閉じ込めておいたら、ストレスが溜まって人間を襲うってことになるかもしれないと、キース隊長がアベルトお兄様に助言をしてくれて、夜とはいえ、王城の外の散歩が実現したのだ。


 キース隊長には感謝しかないわ。


 ネネもキース隊長との恋は順調にいっているし。


 それに比べて私は·····ダメダメ!そんなこと考えちゃ!

 私はまたゆっくりと紅茶を味わった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ある日。


 急にお父様に呼ばれて、執務室に向かった。


 コンコン


「お父様、アリアです。」


「入れ。」


 私はドアを開けて部屋に入ると、そこにはアベルトお兄様と皇太子である上のお兄様のギルバートがいた。


 何事かしら·····。


 私は顔をしかめた。


 まずはお父様から話しを始めた。


「アリア、ルイス殿からの手紙で近々この国に訪問をすることを書いてなかったか?」


 うん?ルイス王子がくるのはまだ数ヶ月先のはず。お父様も知っているはずだわ。


「いいえ。ルイス殿下はいつも同じ時期に来られるではありませんか。」


 私がそう言うとギルバートお兄様が


「嘘をつくなよ?」


 失礼な!


「嘘ではありません!」


 次はアベルトお兄様が言ってきた言葉に驚愕した。


「実はルイス殿下がこちらへ向かっていて既にサマヌーン国に入国している。夕方には王城に到着する予定なんだ。」


「え!?」


 私の驚きでお父様もお兄様達も、私が本当に知らなかったと認識したらしい。


「父上、アリアは本当に知らなかったみいです。」


「うむ。突然の来訪だな。しかし何故なにゆえ·······」


 お父様は自分の髭を触りながら考え込んでいた。


「とりあえず、ルイス殿下、リンカーヌ王国の者の受け入れの体勢を何とかしなければ!父上、失礼します!」


 ギルバートお兄様は焦ったようにお父様の執務室から出て行った。


 アベルトお兄様も後に続いて出て行った。


「アリア、お前もルイス殿を迎える準備をしなさい。」


「······はい。」


 お父様に言われて執務室から出る。


 いきなり何なの?

 何故ルイス王子が来るのよ!いつもはもっと先のはずなのに·····。

 まだ気持ちの整理もついてないのに······。


 私は自分の部屋に戻り、パタリとベッドの上に寝転んだ。するとピューマが私の様子がおかしいのに気付いたのか、慰めるようにペロペロと顔を舐めてきた。

「ふふふ。ピューマありがとう。」


 私はお礼にピューマの顔にキスをして頭をワシャワシャと撫でる。


 ネネも心配そうに聞いてくる。


「アリア様、先ほどの国王様の呼び出しは一体何だったのですか?」


「ルイス殿下がやってくるみたいなの。」


「え?」

 ネネはよく分かってないようなのでもう一度言った。


「ルイス殿下が何の連絡もなしにこの国に来てるのよ。」


「ええー!本当ですかー?」


「本当よ。既に入国しててもうすぐこの城にも着くそうよ。」


「どうして····」


 こっちが聞きたいわ!


「そうね。本当に急で····何をしにくるのかはさっぱり分からないわ。お父様がその事を手紙で書いてきてないかって聞かれたのよ。」


「アリア様はご存知だっだ·····」

「訳ないでしょ!私も驚いてるわよ!」

「そうですよね。しかし何故今頃?」


 お互いに首を傾げる。


「ではお迎えをしなくてはいけませんね。すぐにお着替えを。お召し物はいかがいたしましょうか?」


「そうね。会いたくないけどそういうわけにはいかないから。前にプレゼントで頂いたドレスと宝石をどれでもいいからお願い。」


「かしこまりました。」


 ネネはクローゼットを開けて品物を選ぶ。

 リンカーヌ王国から帰国してからのルイス王子のプレゼントは見ずに全てネネに渡していた。


「アリア様、このお召し物でよろしいでしょうか?」


 ネネはドレスを広げて見せる。

 青色で凝った刺繍や飾りがあり、肩を出す色っぽいドレスだ。


「それでいいわ。」


 早速着替えに入る·····が


「胸がきついわ。」


 そう私はこの半年で急に胸が結構出てきていた。ドレスの長さなどは大丈夫だけれども。


「アリア様、少しお直ししますので脱いでくださいませ。」


 私はドレスを脱ぎネネに渡す。


「アリア様、デザインが変わっても大丈夫でしょうか?」


「いいわよ。他のドレスでもいいけども。」


「いえ。他のドレスの方が着れないと思います。この肩が出るデザインなら胸の方も大丈夫だと思ったのですが····」


 なるほど。頂いたドレスはどれも着れないのね。


「わかったわ。お願い。」


 ネネはもう一人侍女のサリーを呼び、二人がかりで裁縫を始めた。

 大胆に袖から切り落として、チャックをほどき胸の部分に布を足して補強をしていく。胸の辺に残りの布を使い装飾もしている。

 二人がかりでもあるがあっという間に修整したドレスができた。


「アリア様、出来ました!早速着てみてください!」


 私はその修整したドレスを着用した。

 それを見て


「凄く大人っぽいわ。」


 大胆に肩と腕を出して、胸も強調されていた。

 何か胸が····


「盛り上がってるわ····」


 何かえっちな感じがする。私には大人過ぎやしないかしら?

 このデザインはたまに公爵婦人や身体に自信がある人が着ているセクシーなドレスだわ。


 清楚なイメージできている私にはどうかしら?


「大丈夫です!アリア様の魅力を見せつけてやらないと!あんな側妃なんか目じゃないって!」


 こらこらネネさん。皇太子の側妃のことを「あんな」と「なんか」を言ってはダメよ。


 それからネネはルイス王子から頂いたダイヤのネックレス、髪の毛はおろしていた方がルイス王子は好むので、おろしたままで飾り付けをする。

 お化粧も少しして、ちょうど出来上がったころにルイス王子が到着したと知らせがきた。


 私は王の間へ向かって、そしてドアの前に立ち一呼吸をした。


 いよいよ対面ですわ!

 私は気合いをいれ、名前が呼ばれるのを待った。


 ドアの前の従者がドアを開けて名前を告げる。


「第三王女アリア様が来られました!」


 私は胸を張り、真っ直ぐに見据えながゆっくりと部屋へ入っていった。


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