皇太子妃奮闘記~離縁計画発動中!~
4話 出発!
いよいよ出発日になった。
当初大所帯で旅をする予定だったが、私がそれを嫌がった為、当初の3分の1くらいまで減らした。
リンカーヌ王国までの道のりは約10日間ほど。ただ、山を越えるので、山の天候のよってはもっとかかる場合もあると言っていた。
護衛は40人。騎士団から30人。私専用の近衛隊10人が護衛として来てくれる。付き人にはネネが付いてきてくれることになった。
三週間ほど留守にするので、シャルにしばしばのお別れの挨拶をした。
「シャル、ちょっとルイス殿下に会いに行ってくるわね。お前は連れてはいけないないからお留守番よ。いい子で待っていてね。」
シャルは繭を作っていた作業を止めて私を見ていた。
ちょっと悲しそうな目をしているように感じて胸がきゅんとなった。
シャルの世話は専門家に任せることになっていた。小屋ごと移動して、シャルは三週間ほどハウスで仲間と過ごすことになっている。
「じゃあ行ってくるわね。」
お城の外に出ると、お父様、お母様、アベルトお兄様が見送りに立っていた。
「気をつけて行ってくるだぞ」
はい、お父様。
「危ないと思ったらすぐに帰ってくるのよ。」
お母様は少し涙を浮かべていた。
お母様、今生の別れでありませんわ。
でも旅は何が起こるか分からない。心を引き締めた。
勿論危ないと思ったら帰ってきますわ!
「アリア、気を付けるんだぞ。」
アベルトお兄様はそう言って抱擁をしてくれた。
「アリア様、そろそろ馬車にお乗りくださいませ。」
ネネが呼びに来たので、馬車に乗り込んだ。
すでに他の者は用意が出来ており、全員馬に乗り待機をしていた。
私の希望で、王家の紋章入りの馬車は止めてもらった。
向こうに着いたら、絶対に王城に報告がいって、ルイス王子にバレると思ったから。
それでも大きい馬車をお父様は用意をしてくれた。
私は馬車の小窓を開けて、顔を出した。
「それでは、お父様、お母様、アベルトお兄様、いってまいります!」
私は笑顔で挨拶をした。
私の言葉が合図になり、馬車がゆっくりと動き出す。
お父様もお母様も、お兄様もお互いが見えなくなるまで見送ってくれました。
さあ!旅の始まりです!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回は、ルイス王子に内緒の旅なので、身分を隠さなければならず、どうしようかと思っていましたが、商人の振りをすることにしました!
ちょうど、着れなくなったドレスなどもあるので、ついでにリンカーヌ王国の商会に売ることにしました。
リンカーヌ王国は繁栄もしているから、上等な品物も溢れてかえっていると思うけど、我が国でしか作れないムシュムシュの糸を使った高級ドレスなのでそこそこの値段で売れると思っている。
その為に、馬車を3台用意した。1台は私が乗る馬車、二台目はその売る品物を乗せている。3台目は皆の食料や護衛者の荷物など。
護衛をしてくれる騎士団はサマヌーン国の中でも選りすぐった部隊がついてきてくれている。
「アリア様、私達は商人の一行なんですよね?」
向かいに座っているネネが聞いてきた。
「そうよ。」
その為に、ヒラヒラドレスは着てないわ。ふんわりしたシンプルな淡いブルーのワンピースを着ている。だが、上質なものなのは見た目でも分かる品物だった。
ドレスより動きやすくて、断然こっちの方がいいわ!
それに、その為に護衛の人には国家の紋章が付いた騎士団の制服は着せず、普通の服を着てもらっている。
護衛の騎士団の方には冒険者で商人の護衛をしている設定になっていた。
ネネは外の護衛を見ながら
「商人の旅に冒険者の護衛が付いているのは分かりますが、普通は護衛の方は馬ではなく歩きで旅をしていると思います。」
「えっ!?」
そうなの?
私が驚いていると、ネネはふうとため息をつき
「今さらいっても仕方がないですけど。結構目立つと思いますよ。」
「うそー!!」
私は国民の一般常識に疎かった····。
少し無知の自分に落ち込んでいると、小窓をコンコンと叩く音がした。
小窓を見ると、騎士団の隊長である、キース隊長の顔が見えた。
ネネは小窓を開けた。
キース隊長が通る声で聞いてきた。
「アリア姫、今日中にコイル村まで着きたいと思いますので少し馬の速度をあげたいのですが、大丈夫でしょうか?」
私はその言葉に頷き
「大丈夫よ。キース隊長にお任せするわ。」
返答をした。
キース隊長は私に敬礼してから
「ありがとうございます。」
と言って、部下に指示をしにそこから去って行った。
ネネが小窓を閉めながら言ってきた。
「キース隊長って、格好いいですよね。」
「そうね。」
キース隊長は身長は182センチと長身で、身体は服の上からでも分かるくらいがっちりしている。かなり鍛え上げているのが分かる。赤茶毛で短髪。瞳は淡い紫色をしていて二重瞼で切れ長の目をしている。
しかも甘いマスクをしており、年齢も25歳、独身で平民の身でありながら1個隊を任されている。将来が有望なので、騎士団の中では女性達に絶大の人気を誇っている。
「服の上からでも分かる、あの筋肉!いいですわ~。触りたいです。」
ネネはうっとりしながら言う。
ネネは筋肉質の方が好みなのかしら。
ネネは20歳。本来なら結婚適齢期。
「ネネ、キース隊長と付き合ってみたらどう?」
私はからかうつもりで言ってみたら、ネネは顔を真っ赤にして、両手で顔を隠し
「アリア様!そんなこと····無理ですわ!」
頭を左右に振りながら照れている。
ありゃりゃ、これは脈ありね。
ネネの為に、少し協力をしようかしら。
私は小窓から、動くのどかな風景を見ながらニヤリと笑い作戦を練るのであった。
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