繰り返す男

白都 告

テストテストテスト

「おはよー。」
「おう、シロ!昨日の殺人事件のニュース見たか?近くらしいぜ!」
「それはこえーな。」
すでにこの会話は昨日している。テストの朝にこんな話してくるって何事だよ…。ちなみに俺の名前は白村雪人。昔からシロって呼ばれている。
「絶対これ出るぜ!えーと、新渡戸稲造!漢字むずいぜー、順番が。」
ちなみにこの問題は出ない。そしてこいつはテスト終わった後の答案は悲しいほどスカスカだった。こいつの名前は佐藤大。名前の通り声も身長も大きい。
「それ、出ないよ…。」
「ん?何?」
しまった。つい口に出してしまった。
「何でもねえよ。ほら先生来たぞ。」
危ない危ない。たまについ口をついて知ってることを言ってしまいそうになる。
 この能力は誰にも言っていない。いや正確には小さい頃はよくわからずペラペラ話していたのだが誰からも取り合ってもらえずいつからか言うのをやめた。親もそれ以来何も言ってこないし気にもしていない。


「やめ!」
先生の声が静かな教室に響き渡る。みんなペンを置きガヤガヤし始める。
「答案前に送ってくれー。」
後ろから答案が回ってくる。自分の回答用紙を乗せて前の大に渡す。
 「死んだわー。」大が振り向きざま話しかけてくる。
「俺もだわ。〜が…」
適当に流す。
また同じ流れで今日も終わっていく。しかしまだ明日(今日)もある。また次の週も同じようにこなすだけなんだけどな。
 
ちなみに俺は1周目から3周目まで極力変えないように過ごす。変えたら変えたでめんどくさそうだし、どうせ殺人が起こっても防ぐ勇気も気力もないし誰も信じようともしない。たとえ何かしようと大して行き着くところは変わらないのだから、誰かを助けるために使ったりはしない。
3周目がみんなの1日となるわけだから1周目、2周目はみんなの頭からは消えてしまう。つまり2周目に関しては前にも言ったが本当に辛い。ぶっちゃけこの能力で助かったことはある。テストの点数はおかげでいいし(極力変えないとは言ったが都合よく変えることが多々ある。)、バイト先での仕事も早く覚えたりできる。まあ繰り返す日がランダムだから当然最悪な日もあるけど…。
今回はテスト期間でまだよかった。
しかし後々この能力によって人を助ける日が来るとはこの時はまだ知る由もなかった。

コメント

コメントを書く

「リプレイ」の人気作品

書籍化作品