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全てを失った少年は失ったものを再び一から手に入れる

きい

18話 仕返し


 ー幻舞の衝撃告白直後、北海道支部のとある部屋ー


「千鹿ちゃん、ごめんね、まさかあんなに取り乱すなんて…恥ずかしい姿を見られちゃったね」

「いえ、会長は実際にあんなことされてますし、敵か味方か疑心暗鬼になってもしょうがないと思います」

「ありがと」

「ところで、会長は月島が今ので全部話したと思いますか?私は、こんな短期間で手のひらを返したように人が変わるとは思えません」

「全部か…確かにそれはあるかもしれないけど、私はどちらかというと本当のことをまだ隠してるような気がするかな」

「嘘をついてるってことですか、確かそれもにありそうですね…あの、会長」

「ん?どうしたの?千鹿ちゃん」

「月島って楽しいんですかね、幸せって感じれてるんですかね、辛くないんですかね」

「千鹿ちゃんはどう思う?」

「私にはわかりません、だから会長に…」

「そうじゃなくて、そんな幻舞君を見てて千鹿ちゃん自身はどう思うの?」

「それは…うまくは言えませんがなんか苦しいです、胸がすごく苦しいです」

「そう…実は私も同じなの、本当に苦しいよね、でもこれは私たちが幻舞君を本気で思ってる証拠だよ、だからこの気持ちを持ち続けてれば幻舞君は絶対一人にはならない、そしていつか、幻舞君がこの苦しみから解放してくれる、だからそれまではこの苦しみと一緒にいなきゃいけない、絶対に自分から解いちゃダメだよ、千鹿ちゃん」

「わかってますけど、でもどうすればいいか…」

「そんなの簡単だよ、ずっと幻舞君を好きでいればいいの」

「す、すす、好きって何言ってるんですか、会長!」

「もう、可愛いな千鹿ちゃんは…千鹿ちゃんのその気持ちはれっきとした恋だよ、まっすぐにだれかを思う純粋で綺麗な恋、だから千鹿ちゃんがそれを失うことはないと思うんだけど、一応、ね」

「そうか、私月島のこと…って、じゃあ会長も?」

「うん好きだよ、幻舞君も千鹿ちゃんも」

「え!?それってどういう?」

「さぁ…一つ言えるのは、千鹿ちゃんの好きと私の好きはちょっと違うってことかな」

「…」

「まぁ、そのうちわかるよ」

「おーい千鹿」コンコン

 千鹿は、頭がハテナマークで満たされ楓に対して相づちを打つことすらできず黙っていた、するとそこに見計らったかのようなタイミングで幻舞が部屋に入ってきた

「会長と話は終わったか?まだお前に話したいことがあるから一緒に帰るぞ、緋離あかりは先に帰らせたから二人でな」

「ふ、二人!?月島と二人で帰るの?」

「何をそんなに驚いてんだよ初めてじゃないだろ、それに今からそんなに緊張してどうすんだよ

『俺がいれば聞き耳を立てられることはないから安心しろ』

って言っただろ」

「そんなことでこんなに硬くなるわけないでしょ!」

「じゃあどうしたんだよ」

「た、タイミングが悪いのよ!」

「は?タイミング?あ、お前もしかして…」

「あわ、あわわわ」

「まだ会長との話終わってなかったのか?わりぃな、それならそうと言ってくれりゃいいのに」

「はぁ、幻舞君…」

「ん?」

(大変な人を好きになっちゃったね、千鹿ちゃん)

「いやいいの、気にしないで月島」

「あぁ、そうか…」

「あ、それと、前にも二人で一緒に帰ったことがあるっていうことについての事情聴取はまた今度ね」ニコッ

「っ!じ、事情聴取って…」

 楓は笑顔を見せたがその顔はまるで笑ってはいなく、それはまさに鬼の形相だった

「ほら今日は帰った帰った」


 ー北海道支部からの帰路ー


「月島?ねぇなんで何にも喋らないの?私に何か話があったんじゃないの?」

「あぁ…千鹿」

「なに?」

「えっと、そのなんだ…千鹿、魔法闘士ストライカーはもう諦めろ、お前には正直言って才能がない」

「うん知ってる、でも諦めない、諦めたくないんだ、これは私がお父さんに認められた才能ちからだから」

波疾はるさんか…本当にあの人のとは思えないほど才能ないからな、お前」

「うっさい、それでもやるの!お父さんと約束したんだから、『絶対頂点に上り詰める』って…」

(俺も、あの人にこいつのこと頼まれてるしほっとく訳にもいかねんだよなぁ…めんどくせぇ)

「じゃあ俺と修行するか?相当厳しいだろうけど」

「え!?う、うん、やるやる!」

 そう返事をした千鹿は“厳しい”というフレーズを聞いていなかったのか何なのか、どこかウキウキしているようだった

「そうか…じゃあまずは当面の目標だが<見えない斬撃マッハシュナイデン>を習得してもらう」

「ん?ちょ、ちょっともう一回言ってもらっていい?なんか耳がおかしくなっちゃったみたい」

「あぁ…当面、修行は<見えない斬撃>の習得を目標に行うって言ったんだ、今のは聞こえたか?」

「うん、やっぱ聞き間違いじゃなかったんだ…」

「なんだ聞こえてたのかよ…って言うか、その修行今回の軍の試験には間に合わせるつもりだから覚悟しとけよ」

「は?当面ってあと二週間もないじゃん!そもそもそれって“移動ミグレイション”使わなきゃ無理だよね?」

「それは難しいんだが、それに答えるなら『無理だが無理ではない』というのが正しいだろう」

「それって無理なの?無理じゃないの?どっち?」

「それは見方によって異なるから見解は人それぞれなんだよ、ちなみに俺は『無理』の方かな…それを踏まえてこれからの修行内容を説明すると、まずはさっき<見えない斬撃>と言ったが実際に<見えない斬撃>を習得するわけではないということ」

「じゃあこれから何やんの?<見えない斬撃>って可視速度よりも速く動けるからこその魔法剣術でしょ?そんなの月島じゃなきゃ…」

 千鹿の言った通り“移動”を組み合わせなければいくらそれっぽい魔法を発動できたとしてもそれは<見えない斬撃>とはまた違う魔法に当たる、そこができるできないの見解に違いが出てくるとこである

「あぁ、確かにそうだな…でもそれっぽい魔法を作ることはできる、つまりこれからの修行でやるのはそのそれっぽい魔法をお前に合うように組み合わせて作り、お前なりの<見えない斬撃>を完成させるということだ」

「それって私が月島みたいに速く動けるようになるってこと?」

「正直、可視速度を超えるのは無理だ、もしできるんだったら俺だってこんなめんどくさい魔法使ってないしな」

「それじゃあ意味ないじゃん」

「意味ないことはないさ…可視速度を超えれなくても、それは十分速い攻撃になると俺は思う、どんな魔法ができるかはお前次第なんだけど俺はお前を信じてる、お前なら本物の<見えない斬撃>をも超える魔法ができる」

本物オリジナルよりもすごいのなんて…速さで負けてる時点で無理に決まってるでしょ」

「それはちょっと違うぞ…たとえ速さでまで負けてても他で勝てばいいだけのことだ」

「とは言っても速さが肝じゃん!」

「そうだな…確かに<見えない斬撃>速さが肝になる、だからその肝の部分で負けてれば勝ることはできないと思っても無理はないだろうな…このことは誰にも言わないと約束できるか?」

「え!?わ、わわ、私と月島だけの秘密ってこと?」

「そうだ、できるか?」

「う、うん!する、約束する!」

「よし…実はな<見えない斬撃>には一つ致命的な欠点があるんだ、それは俺の動きが見えないからなんとかなってるだけどな…」

 それを聞いた千鹿は目をキラキラと輝かせていた

「って、なんでお前そんな嬉しそうなんだよ」

「いいからいいから」

「はぁ…それはな……ということなんだ、つまりそれをお前の魔法でカバーできれば<見えない斬撃>は完成する」

「そ、それって私と月島が一緒に作った魔法、みたいな…」ボソッ

「ん?なんか言ったか?」

「い、いや何でもない、それより絶対に完成させよう!」

「あ、あぁ」


(何でこいつこんなやる気なんだ?まいっか)


 ーその翌日、壱華家ー


「まさか、ゲンが誰かを教えるなんて言い出すとは思わなかったよ」

「すいません、夏恋のことがあったのに場所まで借りちゃって」

「いやそれは構わないよ、むしろ嬉しいんだ…ゲンはあれからずっと他人を避けてるみたいだったし」

「バレてましたか」

「あんな姿見れば誰だってわかるよ、緋離ちゃんに今まであのことがバレなかったのが奇跡だよ」

「そんなにですか」

「そう、そんなに…これからはもっと感情を表に出さなきゃね、僕だってゲンの泣き顔見たのこの前が初めてだったし」

「そ、そのことは誰にも言わないでくださいね!それじゃあ僕は千鹿を待たせているので」

「うん、いってらっしゃい」

 総紀は肩の重荷がやっと取れたかのように

「ふぅ」

と一つため息をついて家の中に入っていった

「月島遅い!どんだけ丁寧にお礼したらこんなにかかんのよ!」

「ばかか、お礼は適当にやったら意味ねぇだろ!」

「なにそれただの屁理屈じゃん、どうせなんかくだらないこと話してたくせに」

「さぁ、早速修行に入るぞ」

「うわ、ごまかした」

「じゃあまず<自由空間ベンドロウィ>をやってみろ」

「え!?何で知ってるの?」

「いいから早くやれ!」

「はいはい」


 ーそして現在、日本軍北海道準本部ー


『let’s strike on』フォーン


 (さあ会長、驚いてもらいますよ)

「これが私の新しい技…合技、魔法剣術<追えない斬撃メルシュナイデン>」シュン

「「「「き、消えた!?」」」」

「あ、いた…ってかあいつあんなとこでなにしてんだ?」

「いったたー、勢いつけすぎて壁にぶつかっちゃった」

「「「「 」」」」ズコー

 なんと、千鹿は一瞬のうちに楓と向き合っていた位置から直角に壁に向かって突っ込んでいたのだ、つまり、<見えない斬撃>の欠点である“直角に近い方向転換”を完全に可能とする魔法を完成させたのだ、しかしその魔法に身体が対応しきるのには時間が足りず、残念ながら不発となった

「幻舞、千鹿君は今なにをしたんだ?」

「風早家の固有魔法は知ってますよね?」

「あぁ」

「その“無抗オベイ”によって、身体の関節などいたるとこにかかる慣性力を極限までゼロに近づけたんですよ」

「なるほどな、確かにそれならあんな角度で壁にぶつかったのはわかったが、あのスピードの説明にはならないだろ」

「あれは俺の<可視限界速度移動ソニックシフト>をあいつの無抗によって可能にしたものです」

「ほぉ、それはすごい…さすがはお前の弟子だな」

「総紀おじさんですか?」

「あぁ、それと

『このことは誰にも話すなとは言われてない』

って言ってたぞ」

「はぁ…」


『ピー』


「幻舞、そんな話をしてたら千鹿君負けちまったぞ」

「当たり前ですよ!たった二週間で会長より強くなれる方法があるんだったらみんなやってますよ!」

「おいおい、それ千鹿君に言ってやるなよ?」

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