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全てを失った少年は失ったものを再び一から手に入れる

きい

15話 それぞれの武器


 ー幻舞の衝撃告白から一週間が過ぎたある日、軍北海道支部ー


 約4か月後の9月中旬に行われる“BOS”に向けて千鹿、楓、拓相、撫子、飛鳥の5人は総紀と幻舞に修行をつけてもらっていた

「一回休憩入ろう!」パンパン

「はぁ疲れたー、月島のメニューきつ過ぎ!」

「まったくだ、なんか前と人が変わってねぇか?明るくなったのはいいんだけど、急にこんなやる気出しやがって…前まではドMだったのに今は完全にドSだよなぁ」

「ドがつくほどかよ…でもまあ確かにそうだな、ちょくちょく出てたと思うけどこっちが本来の俺だ!本当はこの闘いが終わるまでは他人ひととは関わらないようにしようと思ってたんだけどあんなこと喋っちゃったらな…でもあのままだったら多分この闘いが終わってもずっと一人だっただろうな、ずっと一人ってのも正直嫌だし今は本当に感謝してるよ、ありがとう」

「もー月島君、そういうのはなしって何回も言ってんじゃん!」

「すいません」

「だーかーらー、次言ったら罰金だからね、これ王女命令!」

(なんだそれ、どこの暴君だよ!)

「でもよぉ幻舞、なんで訓練施設でやんないんだ?別に学校じゃなくてもここにだってあるだろ」

「それは魔力を増やすためだ!軍関連の訓練場ならどこもついてる完全回復機能“Healing Perfect System”略して“HPS”は、その施設から出るときに、入った時に自動的に登録された自分の情報に戻すことでその施設に入ってから一定時間内に受けた傷とかを治すもの、その中には魔力も含まれてるから施設というよりもHPSを使うと魔力を増やすことはできないんだ」

「へぇ、それにしても幻舞はこんなのを何年もやってんだよな?とても同い年とは思えねぇぜ」

「ほーんとそう…でも今は、今まで頑張ってきた分車椅子に座って王様気分みたいな?」ニヤニヤ

「ちょっと、撫子!」

「撫子ちゃん、幻舞君はただ座ってただけじゃないよ…幻舞君、私たちの修行を見ながらずっと結界生成と索敵をしてたでしょ?」

「はぁ…途中の会長の表情からして気づかれてるとは思いましたけど、まさか何をしてるかまでばれてたとはさすがは鳳一族次期当主候補ですね」

「ふん、私とあなたは何年の付き合いだと思ってるの?」

「何年って、会ってまだ一年も経ってませんけど…」

「あ、あははそうだったね、誰と間違えたんだろ私」

「もー、会長ったらー」

「それよりも幻舞、さっきのって同じ次期当主候補の俺は全然みたいに聞こえたんだが」

「そういうつもりで言ったわけじゃねぇが…確かにお前と会長じゃ比べもんにならないだろうな」

「ふん、はっきり言ってくれやがって」

「でもそれは生まれ持ったにおいてだけだ、お前が会長を超えることは不可能じゃない、もちろん俺を超えることもな!てか今の俺ぐらいは超えてもらはなきゃ困る」

「へぇ幻舞を俺が…」

「ばっかじゃないの!何十年、いや何万年先のことを考えてんのよ」

「そんなのわかんねぇだろ!」

「わかるわよ!それより月島、限界魔法力って何?」

「そのまんま魔法力をどのくらい増やせるかその限界を数値化したもので、それは生まれた時から変わらないいわば才能みたいなもの…ちなみに千鹿は5万2千、お前才能ねぇな」

「余計なお世話よ!ちなみに…へ、平均ってどのくらいなのよ、てかどうやって分かったのよ」

「平均は星によらず大体10万ってとこだ、それでどうやって分かったかだっけ…それはこの“全てを見通す眼ルーベルグ・アイ”でさっきちょっとだけ見たからな」

 幻舞が黒のカラーコンタクトを外した右目には機械でできた義眼がはめ込まれていた

「えっ!なにそれ…」

「どうだ、かっこいいだろ?」

「ちゃんと話して、約束したでしょ!」

「はぁ…戦地に赴けば目を失うことはよくある、魔法闘士ストライカーっていうのはそういうもんだ、片目しか失わなかっただけでも運がいい方だよ」

 千鹿を含めた幻舞以外のみんなは幻舞がこういうことを話してくれえるようになった成長を喜んでいるのと同時に、本当にこういうことを平然と言う幻舞ことが恐ろしくもありどういう表情をしていいかわからないようだった

「ねぇ幻舞君、その眼にはいったい何が映っていったい何を見ているの?」

「この眼は普通の眼と変わらず機能するので距離がつかめなくなるとかはありません、ただ普通の眼に特殊な機能がついてると思ってもらえればいいと思います…例えば会長の場合だと『限界魔法力:150000、魔法力:28666、固有魔法力:13980、汎用魔法力:14686』と、魔法力と魔力の大まかな内訳が数値として見えます」

「おおすげぇな、俺のも見てくれよ!」

「あぁ、拓相は『限界魔法力:100000、魔法力:25162、固有魔法力:11407、汎用魔法力:13755』だな」

「へー、拓相って意外と固有魔法力の方が少ないんだね固有魔法ばっかに頼ってるくせに」

「お前もだろぉが!」

「じゃあ次私ー」

「無視すんなし!」

「撫子は『限界魔法力:235000、魔法力:25684、固有魔法力:20731、汎用魔法力:4953』ついでに千鹿と飛鳥も…」

「いや僕は別に…」

「私だってどうせ…さっき才能ないって言われたし!」

「じゃあ飛鳥からな『限界魔法力:88000、魔法力:23168、固有魔法力:22725、汎用魔法力:443』それじゃあ最後に千鹿な『限界魔法力:52000、魔法力:21192、固有魔法力:3087、汎用魔法力:18095』か…こんなに固有魔法力が少ねぇのもまた才能か?」

「う、うるさいわね!あんたはどうなのよ」

「千鹿ちゃんそれは…」

「自分で見れねぇし…まぁ、他に方法がないわけじゃないんだけどな、前にその方法で見た時は『限界魔法力:1582000、魔法力:64476、固有魔法力:42282、汎用魔法力:22194』だったと思う…今はどうか知らんが、たぶんそんなに変わってないと思う」

「ちょっと幻舞君、限界魔法力の桁間違ってるわけじゃないんだよね?」

「はい、間違ってませんよ…限界魔法力に対して魔法力が少ないのが気になりますか?」

「えぇ、まぁ…その異常なまでの限界魔法力も気になるけどなんかそれと関係ありそうだし」

「関係なんて別にありませんただバランスが悪いだけですよ…この世界において、限界魔法力才能とは魔法力努力あってこそのもの、つまりは宝の持ち腐れってやつですね、この世界では才能なんて正直言ってほとんど意味を持ちません、そこまで魔法力を高めた例は聞いたことがありませんし、限界魔法力なんてただ目安に過ぎませんからね」

「そうなんだ、なんか魔力を封印された、とかだったら面白かったんだけどなー」

「面白いって…あそうだ、ついでに前見た僕のいとこたちのも聞きます?」

「いえ、遠慮しておくわ…今聞いたら当分立ち直れそうになさそうだから」

 それもそのはず、楓は入学時から2年間ずっと主席の座を守り抜き、次世代の魔法闘士を兼任する存在とまで言われていたのだ、しかしそれが、地球という小さなくくりの中ででしかなかったと改めて思い知らされたのだから
 いくら、その地位や評価に固執しているわけではないとはいっても、何年も前から、まさに、それが当たり前の日常のようであれば嫌でも自覚する
 その地位や評価日常を一瞬にして砕かれたのだから、当分立ち直れないなどまだいい方なのかもしれない

「そうですか…ちなみにこの全てを見通す眼は、ただの義眼に魔法力などを数値化して測る専用の機械“ルーン・エルガー”の機能をただ入れただけの代用品に過ぎないので、固有魔法力と汎用魔法力のそれぞれの詳しい内訳を知りたかったら、今日はまだ修行をやるので、また今度にでもその専用機械で試してみてください、僕が前見たときは会長でも魔法力が10000ちょっとだったのにみんなこの一週間で相当伸びましたね、ここにあるやつにはそれぞれの前の魔法力だけは入れといたので自分で見てもびっくりすると思いますよ…っと、そうだ!こんな話よりも今日はみんなにプレゼントを持って来たの忘れてました」

「こんな話…ね、で何?」

「それはこれです!」ジャラン ジャラン

 幻舞が取り出したのは大量の武器収納用硬貨ルーン・ヴァッフェだった

「なんだこれ、コイン…か?」

「拓相君、これは武器収納用硬貨っていって魔法闘士ならだれもが持ってるものだよただのコインとは少し違うかな…それにしてもこんな数どうしたんだい?

「これは僕がシンツウから派遣される前に奪ってきたものです、シンツウはすごく好戦的な惑星のため武器ヴァッフェの生産が盛んで、そのため一級品も多いんです、僕が奪ってきたこれらはすべてシンツウでも指折りの一級品です、今までこれらを託せる人を探してはみたんですが、これといった人がいなくてやっと見つけたってとこです…会長は確か弓を使ってましたよね?」

「えぇ」

「それならこれなんかどうですか?“聖弓せいきゅうクピッド”これはシンツウ産ではなくて、僕の母月島 紅葉(もみじ)の形見なんですが、会長になら渡してもいいかなと思って持ってきました…きっと上手く扱えますよ」

「そんな、私なんかで本当にいいの?たぶん上手になんて扱えないと思うんだけど…」

「楓ちゃん、ゲンに力を認められたんだここは素直に受け取っていんじゃないかな」

「そうですよ会長、僕が認めるなんてそうそうないですから」

「そ、そうなんだ…」

 幻舞は総紀にゲンという呼び方をされても冷静さを保てたり楓に冗談交じりの話をできたり、前とはいい方向に変わっていた

「幻舞、俺これもらっていいか?」

「あぁ…“ネルイダーラ”薙刀なぎなたか、お前に合うかどうかは置いといてなかなかいいのを選んだじゃねぇか、それはなかなか扱うのが難しいけどまぁ頑張ってみろよ」

「おう!」

「ねー月島君、私これなんかどー?似合いそーかな?」

「いやぁ、お姫さんが斧はちょっと…」

「今は姫なんて関係ないでしょ、私はこれがいいの」

(じゃあ聞くなよ!)

「撫子、月島は似合わないんじゃなくて扱いきれないって意味で言ったの、だから別のにしよ…これなんかどう?」

「わーきれー、月島君今度こそどーよ、似合うでしょ?」

「“針剣しんけんトムデューク”か、うんなかなか似合ってるぞ!」

「じゃあ次は私か、何にしよっかな?」

「千鹿、お前はどうせ剣だろ?」

「まあそうだけど…まさか別に用意してくれたとか?」

「いや、ない」

「ちぇ、なんだじゃあこの中から探そっと」

「いやだから、そんなかにも剣の武器収納用硬貨はないぞ」

「え!?なんで私のだけないの?もしかしていじめ?」

「いやいじめてるわけじゃなくて剣だけ奪えなかったんだ、すまん」

「まあ別に月島が何か悪いことをしたわけじゃないからいいんだけど…」

(窃盗って十分悪いことじゃね?って言いたいけどなんか今言っちゃいけない気がする)

「じゃあ最後に飛鳥だな、お前にはとっておきを用意した…お前は固有魔法を今までサポートで使ってたと思うが、これを使えばメインとしてお前の固有魔法を使えて、なおかつその戦闘スタイルにも合うと思うぞ」

「おぉ、ハードル上げるねぇ」

「そんなに期待しちゃっていいのかな?」

「お前らの期待してるほどのもんを出せるかどうかはわからないが、使う本人からしたら期待以上のもんだと思うぞ…“クールカン”手につける装甲だ、飛鳥は総合武術の世界チャンピオンらしいしな」

「うーん、ハードル上げ過ぎじゃない?なんかシュール」

「だから使う人にはって言っただろ!」

「よっしゃ、これで“BOS”は優勝いただきだな」

「それなんだが“BOS”ではルール的に訓練用武器しか使えないから、今渡したのはもしものときのためだ」

「「「「えー!」」」」

「幻舞君。それいつの話?今はとっくに使えるよ」

「そうなんですか。よかったな」

「うん」

「まぁ…だからって優勝出来るかどうかはわかんねぇけどな」

 今まで“過去”を生きていた少年は、初めて一歩“現在”に踏み入れた

「千鹿、お前にはまだ早い…」ボソッ

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