全てを失った少年は失ったものを再び一から手に入れる
9話 新たな仲間たち
「まさかばれてたとはね、じゃあ何でべらべら喋ってたんだい?」テクテク
「お前は、自分が敵のスパイとでも言うのか?壱華 総紀」
「ははっ、まさか正体までばれてたとはね、さすがは日本軍の大将さんだ」
「はぁお前まで…何度やめろって言ったらわかるんだ、ていうかお前に関してはわざとだろ、総紀」
「あははすまんすまん、勇…で、僕がここに来た理由は聞かないのかい?」
「聞かなくても大体想像がつく、どうせ幻舞のとこに俺たちを行かせないように監視してたんだろ?幻舞が他人に何か頼むとも思えんから、自主的に幻舞の手伝いってとこか…」
「まあそんな感じかな、強いて言えば監視してたんじゃなくて、君たちの力を審査してたんだけどね…僕も、ゲンを一人にしておくわけにはいかないとは思ってるけど、かと言って足手まといを近くに置いておくわけにはいかないんだよ、詳しくは言えないんだけどね…そういうわけだから彼女らがゲンの近くにいるにふさわしいか見させてもらったよ、結果は当たり前だけど不合格だね…戦闘能力よりもまずは索敵能力をつけないとね、僕を見つけられないようじゃまだまだだね」
「ゲン?ゲンっていうのは幻舞のことか?」
「そーだけど何?」
「いや、随分と親しいんだなと思っただけだ…それよりも、審査基準がお前を見つけられるかどうかなんていかさまが過ぎるんじゃないか?そんなの今のあいつらには無理だ、何年かかるんと思ってる!」
「さあね、頑張れば5年でいけるんじゃないか?まあ幻舞には初めて会った時にばれたけどね、確か2、3歳の時だったかな…」
壱華一族の改竄は情報改竄を基本とするので、身を隠すのにも使え、そうすることで五感で捉えることは不可能になる、見つけるには、魔法の発動や魔法そのものを感知しなければならない、これは高校生には到底不可能な技術である
「はぁ、なんでお前はそうまでしてあいつに固執する、それにお前のやってることは矛盾してるぞ!確かに闘いにおいては足手まといにしかならないと思うが、それと日常生活とは関係ないだろ、普段一緒にいてあいつに何の支障があるって言うんだ」
「さっきも言ったはずなんだけど、詳しいことは言えないって、まあゲンの傍にいることになったらその時に教えてあげるよ、ゲンの過去を…傍にいるなら知っておいてもらいことだからね」
「その過去は力と何か関係あるってことか?」
「聞いてなかった?詳しくは言えないって言ったんだけど…まあいいやそれよりも、修行僕も一緒にやらせてよ、ゲンよりも弱いのにゲンよりも成長速度が遅くてね…このままじゃ僕も、ただの足手まといになりかねないんだよ」
「はぁ…別に構わんがお前の審査項目を教えてもらおうか、それによって修行内容が変わってくる」
「そんなのただ単に力だよ、僕も口頭では聞いたけど会ったことないから、正直言って『あいつら』がどのくらい強いのか正確にはわかんないんだよね、だから基準はゲン、あいつとやりあえるぐらいなら合格かな…ちなみにさっき言った索敵能力は、力量を測る一つの方法ってとこだね」
「あいつとやりあえる程度って、それこそ何年かかんだよ…それだけお前が聞いただけでも『あいつら』ってのは脅威だと思ったわけか、そんな奴らとあいつは一人で闘ってるのか想像するだけで恐ろしいな…わかった、じゃあ放課後またここに来てくれ、その時あいつらにこのことを話す、いいな」
「ああ、それじゃまた…あそうそう言い忘れてたけど、あいつの前でゲンって言っちゃダメだよ、それと僕がそう呼んでたのもね、本当に殺されちゃうからね…」
「 」ゴクッ
幻舞の殺気を身をもって体験した者は、たとえ日本軍大将であろうと幻舞の本気は、息をのむほど恐ろしいものである
「それじゃあね」
「ああ」
ー同刻、月島学園、校門前ー
「いい?千鹿ちゃん、いつまでもしょげてちゃダメだよ!みんな心配しちゃうから」
「…はい…わかってます」
「はぁ、千鹿ちゃん、この前幻舞君がね
『千鹿をほっとくことはできない』
って言ってたの、だから大丈夫、幻舞君は千鹿ちゃんをおいてどっかへは行かないよ!絶対に戻ってくる、だから千鹿ちゃんは元気に迎えてあげなきゃ」
「そ、そそ、そんな、つ、月島が…私を…はい、元気出して行きましょう、会長」
「ははっ、じゃあ行こっか」
(千鹿ちゃんだけに言ってたわけじゃないのは内緒かな!)
ー月島学園、3-Aー
「「また、日本軍大将鳳 勇さんから呼び出しがあったんですよね、いつもお勤めご苦労様です、会長!」」
「「おつかれー、楓」」
「(勘違いされてるし)ははっ、いつもありがと、ごめんね」
「全くだ楓、確かに忙しいのはわかるが、お前は周りに心配をかけすぎだ!いくら謝っても足りないぐらいだぞ」
「ごめんね、椎名君、これから気をつけるね」
「まあまあ、落ち着け大牙、お前の言いたいこともわかるが、楓が悪いわけじゃないだろ」
「ああ、すまん…楓もすまない」
「いいの遥ちゃん、私が悪いんだから、心配してくれてありがと、椎名君もありがとねっ!」
「っ!」ドキッ
「まったく…」
(私が入る必要はなかったみたいだな…てか、他クラス来てまでなにやってんだよ、大牙)ヤレヤレ
この時楓は何を思ったのか、どこか幻舞のようだった、わざと真似ていたのだろうか、それとも自然になってしまったのだろうか
ー同じく、 1-Bー
「ちょっとー、何も連絡入れないで遅刻なんてどうしたのよ、千鹿」
「ああごめんね撫子、心配させちゃって、でも大丈夫、ちょっと寝坊しただけだから」
「なんだそんなことか…てっきり何かあったのかと思って心配したんだよ、もー心配して損した!」
「ごめんって…そうだこの後ってさあ、1-Aとの合同実践演習だったよね?」
「そうだねー…ってまさか千鹿、演習に合わせて来たの?」
「違う、違う、そんなわけないでしょ!」
「おーい風早 千鹿、なんで遅れて来たのか言ってみ?聞いてやるよ」
「えーっと、その、寝坊しました、すいません」ペコリ
「はぁ、次はないようにしろよ」
「はい、すいませんでした」
「それで遅れた分の罰だが、今日の演習の時に働いてもらうから覚悟しておけ」
(鏡写しの剣士としてな…ここに見えない魔法剣士もいればよかったんだが…)
「え!?さっきのは罰がない展開じゃないの…」
「この後じゃん、頑張ってねー」
「はぁ、最悪」
「あはは、演習に合わせて来た罰だね」
「だーかーらー、違うって言ってるでしょうが!」グリグリ
「あー、痛いよ〜、や〜め〜て〜」ブルブル
「ごめんなさいは?」
「うぅ〜ごめんなさい」
「よし、ほらもう体育館行くよ!」
「うん、でもその前に1-A寄るね、ちょっと連れて行きたいのがいるんだ、千鹿も知ってる人」
「撫子、もう他クラスに友達作ったの?はやっ!」
千鹿は、楓の嘘で少しは元気になっていたがやっぱりまだ胸につかえるものがあるようだった
ー同じく、体育館ー
「まさか連れて行きたいのがこいつだったとはね、期待して損した」
「悪かったな俺で…それより千鹿、今日お前も幻舞とやるのか?まあ俺が先だけど」
「…つ、月島は…今日は軍の仕事で休みだよ」
「え!?あいつ軍辞めてなかったの?」
「表向きは辞めたことになってるけど、本当は…休暇ってことになってる、それで…この仕事が終わるまでは…学校休みだって、いつまでかかるかは…わからない」シクシク
そう言うと千鹿は、胸を痞えていた思いを我慢することができなくて涙を流した
「軍の仕事で学校休むとかかっけぇ、入ったばっかなのにやっぱすげぇな、あいつ」ポンポン
一見能天気な発言だが、言葉とは裏腹に拓相の行動は紳士たるものだった、もしかしたらその言葉も千鹿に投げかけた言葉なのかもしれない
「ごめん…ありがと、もう大丈夫だから」フキフキ
「ああ…そっか、幻舞今日休みなのか、じゃあ誰とやろっかなぁ」
「わ、私がやってやってもいいけど…」
「なんだその言い方、せっかくさっき気ぃ使ってやったのに」
「う、うるさい!どうするの?やるの?やらないの?」
「いいよ、お前にはあちらのお姫様がいるだろ」
「撫子ぉ…今日の実践演習こいつとやっていい?」
「あ、うん…だっていつもやってるじゃん、そう思って一緒に連れてきたんだけどなー」
「「え!?知ってたの?」」
「こっちこそ『え!?』だよー、もしかして気づかないと思ってたのー?」
「もう最悪、こんなやつと一緒にいるとこ見られてたなんて」
「おい千鹿、お前さっき俺と演習やりたいみたいなこと言ってなかったか?」
「だから、しょうがなくって言ってるでしょ」
「はいはい、さようですか」
「うふふ」ニヤニヤ
「あんたはなんでニヤニヤしてんのよ」グリグリ
「あー、痛い痛い」
(うわぁ、こいつこの国の王女になんてことしてやがる…なんかある意味すげぇな)
「あ、そうだ、授業が始まる前に2on2やろーぜ!あと一人は俺が連れてくるからさ」
「まあ別に構わないけど、元々何かしらやろうと思って早めに来たんだし」
「じゃあ呼んでくるから準備しといて、二人で魔法の得意魔法の確認とかしててもいいぜ、俺一回教室戻るからそれなりに時間あるし」
2on2は、1on1とは違い支援魔法も使えるので、攻撃面でも防御面でも1on1より頭を使う実践演習である、そして最も重要なのが連携である、2on2では一人でも戦闘不能となったらその時点で負けとなるので、チームワークがなければまず勝てない
「呼んできたぜ、準備のほどはどうだ?」
「はやっ!もう戻ってきたの、準備なんてできるわけないじゃない!何が時間はそれなりにあるよ」
「ああそれなんだが途中の廊下ですれ違ってな、それでもゆっくり来たつもりなんだが」
「そう…でもよくあんたなんかのお願いなんて聞いてくれたわね」
「まあこいつはそういうやつだってわかってたからな、って『なんか』ってなんだよ!」
「まあまあ、細かいことは気にしない気にしない…友達も引いてるよ」
「引いてねぇよ…てか撫子は何やってんだよ、あんなんで2on2大丈夫か?」
「あぁなんか
『私も思考詠唱やりたーい』
って言ってなんか始めたからほっといてんの、作戦会議は先にしちゃったから準備は私一人でもできるし…あんたたちもほっといていいよ」
皇 撫子とは、天然でマイペースであほ、でもそんなとこがどこかあざとくてかわいい、この国の将来が不安になるような姫殿下である
「はぁ、あいつの性格は知ってたが、まったく困った姫さんだな…準備は俺がやっとくから千鹿は撫子をどうにかしてきってくれ、いつまでたってもこいつの紹介ができん」
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「よし集まったな…こいつの名前は信楽 飛鳥、これでいて総合武術の世界チャンピオンだ!」
「へー、結構やるんだ」
「すごいねぇ、もしかしたら千鹿ちゃんよりも強いんじゃなぁい?」
「信楽 飛鳥です、よろしくお願いします…多分、僕の魔法では風早さんには勝てません」
「そっかぁ、でどんな魔法なのぉ?」
「そうですね…んぐっ」
「それはやってからのお楽しみな!じゃあ紹介も終わったとこだしそろそろ始めようぜ」
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「よし準備オッケーな」
『let’s strike on』フォーン
新たな仲間の実力はどれほどなのか、2on2で本当の実力を測ることができるのか
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