中二病たちの異世界英雄譚

隆醒替 煌曄

32.冒険者編 殲滅クエスト(2)

 【気配操作】によって、莫大な殺気を黒装束のヤツらにぶつける。一応情報を聞き出すため、オカマ野郎には向けていない。

 バタバタッ、と次々に黒装束のヤツらが倒れていく。オカマ野郎は戸惑いを見せた。

「な、何やってるのよ!早く立ちなさい!」

 オカマの命令虚しく、黒装束のヤツらは立ち上がらない。

 俺はオカマ野郎にいやいや、されどそれをいやいや感をおくびにも出さずに近づく。同時に、軽い殺気を放つ。

「ひ、ひいぃ」

 ズリズリと地面をこするような音を響かせながら、ヤツが後ずさる。そんなヤツに、俺は絶対零度の声で聞いた。

「お前がオーガニザチオンの頭か?」
「え、ええええそうよぉ」
「オーガニザチオンの構成員と、そいつらの位置を教えろ」
「わ、わわわ私と受付のシュワッフだけよぉ」
「嘘をつくな、まだ他にも何人もいただろうが」

 更に声の感情を消してヤツに問いかける。もし、本当に2人だけだったら……。

「本当よぉ、ほかの黒い服のやつらは雇ったやつらよぉ」
「それは、ゴット・ストゥールっていう組織から雇ったヤツらか?」
「そうよぉ」

 ゴット・ストゥールが絡んでいたか。チッ、面倒な。

「なら、その雇ったヤツらの居場所は?」
「もうあなたが全部倒したわよぉ」

 さっきからべそをかきながら発言するこいつにイラッとくるが、今のこいつは見る限り嘘はついていなさそうだ。

 分かった、とヤツに伝え、気絶してもらおうと、蹴りを入れる。が、とあることに気づき、寸前で止めた。

「そういえばお前、俺のことを好みの顔とか言っていたな。どうして仮面の下の俺の顔が分かる?」
「そういう能力をオン……」

 そこで、ヤツはまるで時が止まったかのように動かなくなった。オン?何かの名前だろうか?

 途端、ヤツが叫び出す。

「……ぐ、うあ、あぁあああああああああぁあああああ!!」

 メキメキメキッ、とヤツの体がみるみる変貌していく。背中から羽が生えた。皮膚質も、元の色から赤黒く染まっていっている。これはまさか……悪魔化か……!?

 【感覚強化】が反応。強さ的に悪魔で間違いなさそうだ。クソッ、なんで急に……!?

 咄嗟に斬滅剣カラドボルグを召喚。完全に悪魔化する前に木っ端微塵に切り刻む。さらにそこに火焔剣フランベルジェの炎で焼き尽くし、焼けカスを全て雷破槌ミョルニルで叩き落とす。床に大きなクレーターができた。

 それから数秒待ってみたが、ヤツが復活する気配はないようだ。ふぅ、危なかった。悪魔は前回のゴルゴーン以来、すぐさま叩きのめすと決めているのだ。でなければ、周りに被害が及ぶかもしれない。

「今のは……悪魔?」
「あぁ、そうみたいだ」

 真雫は俺の行動が早すぎて、捉えきれなかったようだ。

 とりあえず、意識を飛ばしたヤツらを全員拘束鞭アインシュレンクンで拘束し、そのまま放置して、ジェニのところへ向かう。ヤツらの処置は、グースト公爵家に任せるとしよう。

 周辺に意識があるヤツがいないか確認して、事前に設置して置いたグースト公爵家の敷地の転移剣ウヴァーガンへ転移する。

 ちょうど、ゼバスさんがいた。転移したところを見られて一瞬、本当に一瞬だけ目を見開いた。そしてすぐさま俺達に声をかけてきた。

「どうでしたか?」
「一応殲滅はできたと思います。少なくとも、頭は倒しました。残党などに関しては漏らしがあるかもしれません」
「いえ、頭を潰せただけで十分です。ご主人様に報告してきます」

 それだけ言い残して、颯爽と去っていった。俺達もついて行きます、と言って、彼の後を追う。

 この館に最初に入った応接間に、ゼバスさんがノックした後に入る。中には、ジェニと、その父のグースト公爵がいた。

「おぉノアさん方、どうでしたか!?」
「はい、頭はどうにかしました。構成員や雇われたヤツらも全員拘束して置きっぱなしです」
「おぉ!それは素晴らしい!」

 心底喜んだ感じで、座っていたソファから彼は勢いよく立った。彼の喜びが娘の危険が遠ざかったことへの喜びだということを願おう。

「向こうに行く前に言いましたが、呉々もこのことはご内密に。オーガニザチオンが壊滅したのも、あなたの部下がしたということにしてください」
「分かりました」

 それでは、と言って、踵を返し、帰ろうとする。そこで、公爵に引き止められた。なんだろう?

「報酬はいらないとあなたがたは仰りましたが、私たちはあなたがたに何か礼をしたい。せめて、夕食でも振る舞わせてください」

 別に報酬はいらないとは言っていないのだが、別にそんなことはどうでもいいか。

 一応夕食は作ってあるけど、保存食のようなものだし、別にいいか。

「真雫、確かクエストクリアの報告って、クエスト完了後2日以内なら大丈夫なんだよな?」
「……(コクッ)」

 なら大丈夫だな。彼らの言葉に甘えさせてもらおう。

「それでは、私は料理地にあなたがたの分も用意するよう、言っておきます。ジェニ、それまで彼らとお話しておきなさい」
「はい、お父様」

 彼はゼバスさんを率いて、部屋から出ていった。

「ノア様、マナ様、ありがとうございました」
「いえ、仕事ですので」

 そう微笑みながら言うと、彼女もニコッと微笑んだ。嘘は言っていないぞ?でも、すぐに彼女は顔を顰めた。

「もう、お父様はいません。あなたの仕事も終わりました」
「はい、そうですね」
「……もう、今はプライベートの時間となります。敬語と様付けはやめてください」

 なるほど、そういうことだったのか。それなら構わない。

「分かった。ジェニ」
「はい、それでよろしい」

 ジェニも満足したようだ。今更だが、何故俺に呼び捨てと敬語を強要するのか、不思議に思った。

 それから、真雫とジェニとだべっていた。好きなものとか、想い人がいるとか、そういうどうでもいい話。俺は、割とこういう話が好きである。なんか、理由もなく好きなんだよね。

 ちょうど話に折り合いがついた頃、公爵達が帰ってきた。食事ができたらしい。彼らに招かれ、俺達は部屋を出た。




「ノア〜」
「ノア様~」

 俺は今、カオスの真っ只中にいる。右肩を見れば、青みのかかった黒髪とは対照的に、顔が上気した美少女。左肩を見ても、顔が上気した銀髪の眼鏡美少女。言わずもがな、真雫とジェニその人だ。

 彼女らは絶賛、俺に艶めかしく抱きついてきている。はっきり言って意味が分からない。いや、こうなった経緯は分かるんだが、抱きつく意味が分からない。

 時は少し前に遡る。

 グースト公爵に導かれ、俺達は長いテーブルについた。置いてある椅子共々、非常に高そうだ。でかいので、あまり欲しいとは思えないが。

「改めまして、ノアさん、マナさん、この度はグースト公爵家の危険を退いてもらい、感謝申し上げます。囁かですが、食事を用意しましたので、お召し上がりください」

 そんな公爵の言葉をキッカケに、奥から入ってきたメイドらしき人達が、次々と検索テーブルに皿を並べていく。そのうえには、豪華としか形容出来ない料理が乗っていた。

 公爵が、メイドに何の料理か一つ一つ説明しているが、如何せん料理が多すぎたため、覚えるのを諦めた。真雫が記憶しているかもしれないから、困った時は真雫に頼ろう。

 ちなみに席配置は、向こう側に公爵とジェニ、こちら側に真雫と俺だ。間に料理を挟んでいる。

 真雫が真っ先に料理にありつく。頬に料理を詰めて幸せ顔だ。まさに至福、と言った感じだな。

 俺もお腹が空いていたので、手前にあったパテを口に放り込む。パテなんて初めて食べたが、意外と美味しいもんだな。

 他にも、鯖らしき魚の味噌煮や、何かの野菜のサラダも口に入れる。どれもさっぱりしていて、上品な味だ。もしや、公爵はこういった料理が好きなのだろうか?

 そんなふうに、多くの料理に舌鼓を打っていると、隣にジェニが来た。

「お行儀が悪いですよ?」
「大丈夫です。まだ食事には手をつけていませんので」

 そういう問題なのだろうか?まぁ、どうでもいいか。公爵にも許可は取ってあるみたいだしね。

「お隣で食べてもいいですよね?」
「えぇ、どうぞ」

 彼女の懇願を了承し、再度料理に手をつける。真雫は相変わらず黙々と食べている。

 それから、腹も膨れて手を休めるようになった頃。真雫とジェニは、さらにデザートに手を出していた。この娘達、どんだけ食うの……?毎度の事ながら、真雫の底知れない食欲に戦慄する。彼女らがデザートを食べている間に、俺は公爵に話しかけた。

「公爵様」
「どうしましたか?」
「つまらない質問ですけど、何故フリーラン国に?確か、グースト公爵家は確かネイヒステン王国の貴族でしたよね?」

 とてもどうでもいい俺の問いかけに、彼は快く答えてくれた。

 どうやら、彼はフリーラン国の調査を現ネイヒステン王国国王陛下に命じられここに来たようだ。表向きは両国の親睦を深めるというものだが、この国にゴット・ストゥールが潜伏している可能性があると見て、国王陛下直々に命が下ったようだ。

 そんなことを俺に教えていいのか、と問いたいが、恐らく娘の命の恩人だから、とかの意味で自己判断したのだろう。

 そして、グースト公爵家はネイヒステン王国の貴族ということに疑問を持つ。何故、ジェニはネイヒステン王国ではなくケーニヒクライヒ王国で護衛クエストをお願いしたのか。気になり、左をむくと。

 ジェニがクラクラしていた。顔が火照っている。まるでかのように。

 もしやと思い、右も振り向くと、真雫の頬も火照っていた。

 真雫達が食べていたデザートはケーキだ。恐らくこれは……。

「公爵様、このスイーツは、もしやブランデーケーキですか?」
「えぇ、そうですよ。私のシェフの得意料理です」

 やはりか。この娘達は完全に酔っているみたいだ。なんか、フラフラしている。

「ノァ、ノアァ~」
「ノア様ぁ」

 突然彼女らが抱きついてきた。腕を柔らかい感触が包む。ちょ、ちょ、ちょちょちょちょ何やってるんですかね!?突然の出来事に俺の頭は混乱に陥った。顔面が、この娘らばりに赤くなる。

「ほぅ」

 ほぅ、じゃねぇよ。助けてくれよ公爵様!目で訴えるも彼の優しい視線は以前変わらない。

 そして現在──。

 あれから五分くらい、俺達はずっとこの体勢だ。ゼバスさんの視線が突き刺さる。俺は何もしていない、むしろ被害者だ。見てないで助けて……。

 そんな俺の心の声虚しく、両肩の美少女はさらに俺に攻撃を仕掛けてきた。

 突然、真雫の手が俺の首を回った。そして真雫の顔が近づいてくる。おいおいおいおい、嫌な予感しかしねぇぞ!?

 真雫の唇が、俺の頬に触れようとする。真雫への対処を考えるなか、左肩からも攻撃は来た。彼女は俺の腹に抱きついてきたのだ。これ、どうやって逃げればいいの?

 ゼバスさんの視線がさらに痛くなる。俺にどうしろと!?

 とにかく、1番危険な真雫の顔を右腕でガードし、ジェニを左手で剥がそうとする。なかなか強い。

 それから、約数分間、俺と彼女達の攻防が続く。

 すると、寝息が聞こえてきた。右と左、両方向からだ。恐る恐る見ると、二人ともすっかり寝入っていた。この体勢で眠るとか、この娘達どういう神経しているんだよ……?

 とりあえず一難去った。一難去ってまた一難、なんてことにならないように、二人ともテーブルに突伏させる形にする。ふぅ、今の時間が1番俺の精神を削った。

「2人ともおつかれのようです。食事も終えたので、おいとまさせていただきます」
「えぇ、本日は本当にありがとうございました」

 見送りが来ないように、颯爽と自室に転移する。真雫はお姫様抱っこの形で抱えている。忘れてきてはいない。

 ギルドへの報告があるが、それはまた明日にしよう。

 すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている真雫を、ベットの上に置く。

 さて、俺も風呂に入って寝るか、とその場をあとにしようとする。が、腕を掴まれた。振り向くと、真雫が掴んでいた。目が閉じられていることから、多分無意識だろう。真雫の手を解こうとする。

「……も……」
「?」
「……もう……傷つかないで……ノ、ア……」

 寝言なのは分かっている。ただ、寝言であるが故に、本心でもあるのだろう。見えないだろうけど、俺は微笑んで、

「大丈夫。俺は基本は傷つかない。だから、安心して寝てな」

 真雫の頭をひと撫でする。心做しか、彼女の表情か綻んだ気がした。

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