中二病たちの異世界英雄譚

隆醒替 煌曄

26.冒険者編 初クエスト&約束(2)

 ズバアァァン!と盛大に地面が悲鳴をあげる。それは、ヤツが俺に向かって放った衝撃波が、地面へとあたったからだろう。今回の悪魔、ゴルゴーンは少々厄介な相手のようだ。

 距離を詰めようとするが、ヤツは距離を取って戦うのを好むタイプのようで、中々詰めさせてもらえない。

 突如、ヤツの目が赤い光を帯びる。目を合わせないようにしている俺でも、それはすぐに分かった。

 ヤツの目から光線が発射。当たりそうになったところを俺はギリギリ避けたが、逆に当たったところには、数瞬遅れて爆発していった。リアル目からビームかよ。こんなのが放てるのなら、村から離して正解だったな。

 早急に片づけたいところだが、悪魔の情報を手に入れるためのいい機会かもしれないので、まだ殺していない。

「お前のような悪魔は、まだ他にいるのか?」
「知レタコト。オ前モ既ニ把握シテイルノダロウ?」

 把握はしていないが、その口振りだとまだ悪魔はそれなりにいそうだ。今後、悪魔の対処も視野に入れておこう。

 まだ情報が欲しいな。

「お前らの目的はなんだ?」
「我ガ主ノ危険ノ排除」

 なるほど、邪神と敵対するものの排除か。こうも易々と教えてくれるとは、裏がある気がするが、とりあえず聞いておくに越したことはない。多少の真実も混ざっているだろうからね。

 こうやって会話している間も、俺とヤツは攻防を繰り返している……わけではなく、俺が距離を詰めようとしても逃げられるという鬼ごっこ的なものに変わってしまっていた。

 そのまま山奥に突入。ゴルゴーンの足は意外と速い。リターさんよりも速そうだ。この地形のことを知り尽くしているのか、木々を慣れた感じで避けながら進んでいく。思ったより木が入り組んでいるのに、よく進むものだ。

 木のせいで攻撃もできず、そのままさらに進む。途端、視界が開けた場所に出た。しまった、罠だったか。仕留め時を間違ったか。

「──”罪ナル者ガ居座リシコノ空間ヲ、神聖ナル主ノ断罪ヲ受ケヨ。空間破壊ラウン・ザシュトゥーオン”!」

 俺が開けた場所に入った瞬間、俺を囲うように濁った立方体が出現した。見たことないが、確実にこれは上位魔法だ。本能がやべぇよコレ!と叫んでいる。今の俺には、これを防ぐ術はない。

「死ネ」

 立方体が一気に収縮され、その場から消える。あとには塵すら残らなかった。




「あっぶね!」

 土壇場での転移により、俺はちゃっかり回避していた。余裕そうな見た目に反して、内心焦っており、心臓バックバクである。いや、本当にあと少しで死んでいたから。マジで危なかったから。

「ノア、大丈夫!?」
「あぁ、まぁ、何とかな」

 ちなみに真雫の近くへと転移していた。俺が無傷なのに真雫が心配しているのは、多分冷や汗をダラダラとかいていたからだろう。

 しかし、迂闊だった。罠があるのは、森に入った時から何となしに気づいていたが、引き際を誤るとは。

「倒した?」
「いや、逃げてきた」
「そんなに強かった?」
「倒せたけど、失敗した」

 というより、ナメていた。悪魔って確か1匹で軍隊と渡り合えるんだっけ?いや、リターさん曰く1小隊だったか。リターさんか言うなら確実だろう。

「また行くの?」
「あぁ、倒さなきゃな」
「なら、私も行く」
「危ないぞ?」
「でも行く」

 こういう時の真雫は頑固なので、俺の話を大抵聞かない。しょうがない、連れていくか。真雫の防御壁マウアーならある程度なら大丈夫だろうしな。

「なら、見ていてくれ」
「私に出来ることは……ない?」
「いや、ヤツは速いから、ヤツに減速魔法陣ファランザモンを頼む」
「分かった」

 そうして、転移する直前にまたちゃっかり設置させてもらった転移剣ウヴァーガンに転移する。先程のあの上位魔法は相当な魔力を使うのか、ヤツは疲れ気味だった。後ろから狙って終わり、というのもあれなので、声をかけてしまった。

「よぉ、さっきぶりだな」
「──!!?」

 声をかけた瞬間、自分の失態に気づき、思わず「あっ」と声を漏らした。何やってんだよ、俺。すぐに気を取り直し、不壊剣デュランダルを片手に召喚。

「何故、オ前ガ生キテイル!?」
「お前が魔法を外したんだよ」

 そう言って駆け出し、下方から剣を振り上げる。ヤツはその長い爪で止めた。

 が、それを気にもせず腕を振り払い、今度はヤツの頬に蹴りを入れる。ヤツは顔を変形させたまま、木々の中へと突っ込んでいった。

 また距離を詰めて、顔元に不壊剣デュランダルをの刃先を構える。

「ちょっとベタだけど、言い残すことは?」

 アニメとかの主人公が敵役に追い詰められ、崖っぷちに立った時によく言われる台詞を言い放つ。言ってみたいことが言えて、ちょっと爽快。

「──フン、オ前ニハ、コレカラ災イガ降リ注グダロウ。精々苦シメ」

 災いが降りかかるとか……前に占い師の人にも言われたんだけど……。やはり俺は災いに会う運命のようだ。

「ハァ、折角瘴気ヲ纏ッテ一生懸命働イタトイウノニ、コンナ最後トハ。アァ、主様──」

 意外と最後の呟きが長かったので、途中で終わらせるように心臓を一突き。これで生きながらえているヤツはそういないだろう。

 そして、コイツが今回の対象というのは確実となっただろう。今は黒くないが、最後に呟いていた『瘴気』は恐らく黒いヤツだろうしな。

 踵を返して真雫のところへ向かう。途端、後方から猛烈な殺気を感じた。まさか、仕留め損なったか……!

「”減速魔法陣ファランザモン、展開”!」

 目の前にまで迫っていたゴルゴーンの爪が急激に遅くなる。ナイス、真雫……!

 斬滅剣カラドボルグを召喚し、木っ端微塵にしてから、追撃に火焔剣フランベルジェで焼き尽くす。

「グゥ、ァァァアアアアアアアア!!」

 声帯も恐らくないはずなのに声が木っ端微塵にした塵から聞こえてきたが、火焔剣フランベルジェの炎で焼けた。ヤツはもはや塵も残らなかった。ふう、少し焦った。油断大敵だな。

 突然、脳天に衝撃が走る。それなりに痛い。

「ノア、何か言うことは?」
「油断してしまって、申し訳ございません」
「正座」
「いや、でも……」
「正座」
「……はい」

 久しぶりに真雫が怖い。相当怒っているみたいだ。俺のために心配してくれて嬉しいが、正座は少し古いだろ……?

「ちゃんと聞く!」
「イエスマム!」

 思わずそんな言葉を言ってしまうほど、真雫の怒気は凄かった。




 小一時間で解放された。ゴルゴーンと戦った時間より説教の方が長いって、どういうことよ……?

「シューネに報告」
「あぁ、そうだな」
「まだ気を抜かないで。上級悪魔がまだ潜んでいるかも」
「それ冗談でも言うな。気が持たない」

 異世界に中二病が来ると紛らわしいことになるのがよく分かる。

 とりあえず、来た道を戻っていく。改めて見ると、本当に入り組んでいた。よくあんなふうに器用に走っていたな、と今更ながら感心してしまう。

 普通に歩いて数分したら森を抜け、村に着いた。村人達が、あちらこちらに破片が散っている倉庫を見て、ああだこうだどざわめいている。

「見ろ、帰ってきたぞ!」

 その中の1人が俺を見つけたようだ。俺達に指を指して、叫んでいる。

「あの、一体これは……?」

 人混みを掻き分けて村長さんが、俺達に話しかけてくる。もしかして、これは俺が壊したことになっていたり……?

「いや、中に魔獣が潜んでいて、そいつが壊しました」

 正確には、壊したのは悪魔だが、魔獣でも別にいいだろう。悪魔から魔獣に変えて、誰かが困るわけでもあるまい。

「なんと!?それで、その魔獣は……?」
「倒しましたよ、真雫と2人で」

 敢えて2人で、ということを強調。それならば、俺一人のみがこの村に頼られることもないだろう。力を誇示する必要はないのだ。

「いやはや、村の者達の不安を払拭して下さり、有難う御座います。このお礼は──」
「先程も言いましたが、これは俺の個人的な約束です。報酬等はいりません」

 それでも渋る顔をした村長さんだったが、本当にここでは何も必要なもの及び欲しいものはないので、何を貰おうと意味は無いのだ。本当に気持ちだけで十分。

 尚粘った村長さん。俺は負け、結局村の持ち物の中で最も高級な、ナイフを貰った。ナイフなんて、何に使えばいいんだ?というか、俺はナイフを召喚出来るので、マジで要らない。でも、返すわけにはいかないので、懐にしまい、その場をあとにする。すると、シューネが走ってきた。

「お兄ちゃん!ありがと!」

 とびきり弾けた愛らしい笑顔を見せた。癒されるの一言に尽きる。お返しにまた頭を撫で、「どういたしまして」と言って、次こそその場をあとにする。ちなみにその場で転移しないのは、村人達に俺のこの能力を知られるのをある程度は避けるためだ。念の為だけどね。

 村人が完全に見えなくなったところで、自室に転移する。

「……ノア」
「ん?何だ?」
「……ギルドに報告」
「………………あ」

 忘れてた。




 ギルドまで歩いて向かう。このあと寄る場所があるのに、これでは二度手間だ。

 ギルドに着くと、もう日が傾いているからか、人が少なかったのでとても静かだった。酒場は大体5時には閉店するらしい。早すぎやしないか?

 そんなことはあまり関係ないので、受付嬢のところへ向かう。

「クエスト完了しました」
「承知致しました。少々お待ちくださいね」

 穏やかな人だな。口調がなんか寝惚けているみたいで、締まらない。

 カウンターの奥へ消えた受付嬢が戻ってくるのを待つ。数分と経たず戻ってきた。

「お待たせ致しました。メイジックベアー五体の狩猟ですね。袋を提示してください」

 そう言われ、熊の青鬣が入った袋を渡す。

「……クエスト完了にございます。カードをお見せ下さい」

 また言われるがままにカードをカウンターに出す。すると彼女は何やらハンコのようなものを取り出して、カードに重ねた。一瞬だけ、赤い紋様が映ったが、すぐに消えた。

 そして、受付嬢から報酬の銀貨8枚を貰う。安いな。

「これで終了となります。本日はお疲れ様でした」

 終了を告げられたので、ギルドから去ろうとする。そこで受付嬢に呼び止められた。

「クエストをまた受注できますが、よろしいですか?」
「あ、はい、また後日来ます」

 そう言って次こそギルドから出る。今日はよく呼び止められるなぁ。

 とりあえず、転移でパラストの自室に戻る。ここに余計なものを置いていこう。

「真雫、俺は少し用があるから出かけてくる」
「私も行く」
「ダメだ、付き人はなしになっている」
「……むぅ」
「ごめんな」
「……別に、謝らなくていい」

 うん、そう言ってもらえると助かる。見送る真雫を最後に、俺はまた転移した。

 転移した先は、プリンゼシン宅。何故ここかと言うと、バータ公爵とここで待ち合わせなのだ。丁度なタイミングで公爵が扉から出てくる。

「おぉ、時間ピッタリだね。さぁ、入って」
「お邪魔します」

 相変わらず豪華な玄関その他諸々を通り、この屋敷の1番奥へと案内された。なんか、学校の教室を彷彿とさせる部屋だった。公爵が俺が部屋に入ったのを確認して、扉を閉める。

「さて、聞きたいこととは?」
「はい、まずは──」

 実はこの時間は、俺が公爵に取り付けてもらった時間。ゴット・ストゥールの騒動の時に気になるワードを幾つか言っていたので、それを実際に問いただすための時間なのだ。

 まず、『黒服』とは何のことかを聞いた。

 彼は長年、秘密結社や犯罪結社の調査を国王陛下から依頼されていた。それで、ゴット・ストゥールのことは元々知っていたらしい。しかし、統率の取れた組織なのだろう、全く尻尾を掴めなかったらしい。そして、最近になってようやく掴んだのが、組織は主に黒服を会員に着せているということ。しかし、それだけでは何の役にも立ちやしない。

「そして、ごく最近になって襲撃事件のことを聞いてね、それで君に父としてリーベの護衛を頼んだわけだよ」
「……その節はすいませんでした」
「謝らないでいいよ。娘は無傷だったし、精神にも何の問題もないからね。人間恐怖症を除いて、だけど」

 未だに悔やんでも悔やみきれないが、それは今は置いておこう。公爵と話を続ける。

 公爵との話し合いで分かったことはそう多くはなかったし、どれもあまり使えそうではなかった。でも、情報があるだけマシだろう。公爵とは、常に連絡を取り合うようにしてもらい、俺も彼に情報提供をする、ということが最終的に決まり、話し合いはお開きになった。

 転移でまた自室に戻る。

「ん、ノア、おかえり」
「あぁ、ただいま」

 真雫は風呂に入ってたようで、顔が少し赤く、髪も湿っているようだった。ドライヤーはこの国にはないということが残念だな。俺あまり使わないけど。

 明日もクエストに行くつもりだから、さっさと風呂に入って、英気を養うために早く寝るとしよう。

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