中二病たちの異世界英雄譚

隆醒替 煌曄

24.冒険者編 そうだ、仕事を探そう

「ノア、私達働かなければいけないと思う」
「おう、急にどうした、ニートが立ち直った時の言葉みたいなことを言って」

 1週間の休暇が終わり、久しぶりの鍛錬が終わった後、真雫がそんなことを言い出した。本当にどうしたよ。

「私達は今は国の金、つまり税金で暮らしている。そんなのでは、税金泥棒と呼ばれても文句が言えない」
「……欲しいものがあるだけだろ?」

 真雫は明後日の方向を向いた。俺は精一杯のジト目を送る。ほらなやっぱり。

「いや、別に集めるのには反対はしないんだが、何を買うんだ?」
「バッグ」

 バッグ?まぁ、真雫とて女の子だ。ファッションとかに拘りたいのは分からないでもないのだけれども……。とりあえず、理由を聞くことにする。

「なんでバッグが欲しいんだ?」
「この前、私達に必要そうなバッグを見つけた」

 俺達に必要そうなバッグ?俺としても気になったので真雫に案内してもらう。

 案内されたのは、『平和フリーデン』という過去に何があったか聞きたくなるような魔法道具店だった。

 ここは確か、真雫と温泉に行ったあとに来た店だ。あの時は見るだけで、特に何も買わなかった。

「これ」

 そう言って指し示したのは、全体的に黒で、所々白の彩色が施されているトートバッグだ。魔法道具店に置いてあるだけあって、魔法効果があるようで、どんな重量の物を入れても一定の重さを保ち、そしてどれだけものを入れようと、容量にそこがないようだ。スペア〇ケットのバッグ版、と言った方が分かりやすいだろうか。

 確かに俺達に今後必要そうになりそうな物だが、問題は金額である。前回来た時も、何も買わずに帰った理由がこれ。

「……白金貨1枚、か」

 と言った風に、とにかく高い。1番安いものでも、7金貨必要である。

「これが欲しいのか?」
「うん」

 まぁ、この店で売っているやつでは、中間くらいの金額だけどさ。だが、そうやすやすと手を出せる金額ではない。これなら、自分で稼いで買いたいというのも分からないでもないが……。

「まぁ、これなら俺も欲しいかもな。よし、買うか」
「本当!?」
「でも、今すぐは買わない。少なくとも、リーベの護衛の報酬からは出さない」
「じゃあ、どうするの?」
「真雫がさっき言ったみたいに、稼ごう」




「それで、私に稼ぎがいい職がないか聞きに来たと?」
「はい」

 というわけで、現在パラストにて、国王陛下に相談していた。知り合いの中で、この国の稼ぎに詳しそうなのが、この人しか思い当たらなかったのだ。

「別に国の税金で──」
「いえ、それは人間としての矜持が許さないみたいです。主に真雫が」

 嘘は言っていない。別に矜恃ではないだろうが。

「うーん、実を言うと、私はそれにはとても詳しいわけではないのだよ。精々一般人より上なぐらいだね」
「それでも聞きたいです」
「そうか、なら教えよう。──」

 国王陛下曰く、継続的にいい収入を入れるならやはり公務員らしい。食料自給率100%超で、金額的にも豊かなこの国では、公務員はそれなりに給料がいい。

 しかし、公務員になるには一年おきにある試験に合格しなければならない。もう既に今年の試験は終わったので、次回開催は来年である。なので、ボツ。

 次に、一発でかいのを当てることが出来るのは、冒険者という職業らしい。アニメでもよくあった職業だ。元はこの世界の未開拓領域へ足を踏み入れ、探索をする職業だったのだが、いつしか雑用から魔獣退治まで、幅広い仕事をこなす何でも屋になってしまった職業だ。

 よくあるアニメのように、ギルドという場所でクエストというものを受注して、そのクエストをクリアすると、そのクエストに見合った報酬が出るらしい。クエストによっては、最大で50白金貨が手に入るらしい。確かに一発でかいのを当てることができそうだ。

 冒険者になるには簡単。ギルドにて軽い試験をこなせばなれるそうだ。その試験も、ただの質疑応答らしい。

「なら、一度その冒険者というものやってみます。ありがとうございました」
「ああ、役に立てて嬉しいよ」

 手を振る国王陛下を尻目に、俺達は国王陛下のいる部屋から出た。




 ついでに今回買うものを確認しておくと、

魔法トートバッグ×2 合計金額 白金貨2枚
魔法ベルトポーチ×2 合計金額 白金貨1枚
                   金貨4枚

 最終合計金額 白金貨3枚、金貨4枚

 と言ったところだ。元はトートバッグしか買おうとは思ってはいなかったのだが、臨時のものも必要と思ったため、ベルトポーチも範囲にいれた。

 しかしまぁ、高い買い物になりそうだな。そのためにもそれなりのクエストを受注しないといけない。

 ギルドとやらは、ここから約数km、そ東区画のど真ん中にあるらしい。今思えば、1度も東区画に行ったことがない。確か、ラウト公爵家という家ががずっと治めている区画のはずだ。そのラウト公爵家には関わりは一切無い。面倒ごとは起こしたくないな。

「真雫、準備完了か?」
「完了」

 いつも通りの服装に、俺達は着替え、部屋を出る。そこでばったり、真雫に変なことを吹き込んだ、パッと見清楚な感じの侍女と会った。

「あら、お出かけですか?」
「えぇ、まぁ。少し職探しを」
「ニートみたいなことをおっしゃるのですね」

 ……意外に言葉も辛辣だな。見た目と中身が違う人、というのはこういう人のことだな、とつくづく思う。

 侍女さんと別れ、パラストを出て東区画へと向かう。東区画への馬車が出ているのだが、なんかぶらぶらしたい気分だったので、歩くことにした。真雫も異議はないらしい。

「ノア、あれ!」
「ん?……なんだあれ?」

 真雫が指さしたのは、教会の上空を飛行する謎の生物だった。見た事のない生物だ。魔獣かなんかだろうか。一応俺には危害が加わらないようなので、ほおっておく。

 数分歩くと、大きな石橋に出た。確か名前はブルック橋だったはず。ヨホホホー!みたいに笑う骸骨がいないか心配だ。

 特に何もなく橋を渡り終わろうとした時、検問から声がかかった。

「おっと、君たち、ここからは身分証明書が必要だよ」

 むっ、身分証明書だと?もちろん俺たちは持っていない。プリンゼシン宅に向かった時には、1回目はリーベ達に送ってもらったし、2回目は転移なので、検問はスルーしているため、発行していない。

「あー、すいません、私達、持っていなくて」
「……なら君たちは、どうやってこの国に入ったんだ?」

 ……?この国に入った時に検問なんてあったか?なかったと記憶しているんだが。でも、そんなこと言っても言い訳にしか聞こえないだろうし、これはどう切り抜けよう?

「ノア、あれが使えるかも」
「あれ?」
「あのレリーフ」
「……あぁ、あの」

 そう言ってポケットから掌代のメダルを取り出す。これは、今は亡き元ネイヒステン王国国王陛下と、ケーニヒクライヒ王国国王陛下からの贈り物だ。もしかしたら、これが使えるかもしれない。

「これ、身分証明書になるか分かりませんけど」
「……!これは失礼しました。転移者の方々でしたか。どうぞ入ってください」

 あっさり入れた。このメダルは転移者だけが持てるものなのかな?まぁ、移動する分には役立つから、重宝しよう。

 東区画は、とても賑わいを見せていた。東区画は1番海に近く、全区の中でも漁業に秀でている。この国は漁業が主な産業なだけあって、この区画の重要性は高いようだ。だから、こうも賑わいを見せているのだろう。

 活気のある街並みを見ながら、ギルドへと進む。国王陛下に聞いた話によれば、もう見えるはずだが……。

「ノア、あった」
「ん、本当だ」

 高さは20mぐらいだろうか。とても大きい、市役所のような建物があった。真雫が言うのであれば、あれがギルドなのだろう。木造で、見た目が新築だから、毎日外壁の清掃を欠かしていないのだろう。普通に新築の可能性もあるが。

 やば、めっちゃwktkだ。アニメのような展開に1人、いや真雫を見れば目がキラキラと輝いているから、2人で興奮する。

 右奥に酒場があるのが見えた。ギルドは、少なくともここは酒場も兼ねているようだ。また左側面の壁には、所謂掲示板のようなものがあり、沢山紙が貼られていた。紙にはクエスト内容と、その報酬が書かれているみたいだ。

 とりあえず、まっすぐ進んで、受付嬢がらしき人がいるところへ行く。受付は、美人としか形容のできない容姿の方が、冒険者らしき人達に愛想を振りまいていた。殆どの方が冒険者相手に大変そうだったので、少し暇そうな根暗な雰囲気が漂っている受付嬢の所へと行く。

「……ノアは、こういう娘が好きなの?」
「どういう意味だ」

 別に顔で選んだわけではない。単純に空いていたからだ。下心なんて一切持ち合わせていないし、持っていたとしても、踏み切る勇気がない。

「ようこそ、いらっしゃいませ、ギルドケーニヒクライヒ王国支部へ。何の御用でしょうか?」

 暗かった顔が明るみを取り戻したと思ったら、これまた手本のような作り笑顔を俺に向けた。洗練された作り笑顔だ。

「あっ、はい、冒険者登録をしたいのですが……」
「冒険者登録ですね、分かりました。お二人共でよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、私に付いてきてください」

 そう言って受付カウンターから出て、奥の部屋に俺たちを連れていった。

 案内されたのは、防音の壁で囲まれた、話し合いのためにあるような部屋だ。

 中央に置いてある椅子に座らせられる。

「ここにギルド長が来ますので、暫しお待ちください」

 バタン、とドアを閉じて、受付嬢は去っていった。今から質疑応答があるのは分かるのだが、もう少し説明が欲しいな。彼女がテキトーなのか、マニュアル通りなのかよく分からない。

 これはあれだな、国王陛下と初めて会った時に少し似ている。

 コンコン、と受付嬢が出ていったドアこらノックが鳴る。入ってきたのは、そこらの美人なんて相手にならないと言わんばかりの美貌の持ち主だった。中性的な顔だが、少し胸が膨らんでいる。おそらく女性だろう。ただ、気になるのはそこではない。彼女は耳が軽く尖っている。ファンタジーによく出てくる『エルフ』にそっくりだ。

「エルフを見るのは初めてですか?」

 部屋に響き渡るような澄みきった声で、エルフの彼女が話しかけてくる。

「あ、はい。すみません、初めてです」
「別に謝ることはないですよ。閉鎖的な部族ですので、仕方がありません」

 そうして、やおら俺達に近づき、向かいにあった椅子に座った。

「はじめまして、ここの支部のギルド長を勤めています、クラー・シューナハイトと申します」
「あ、神喰 希空です」
「星宮 真雫です」

 俺達の名前を聞いた瞬間、エルフな彼女の双眸が大きく見開いた。何を驚くことがあるのだろう。

「転移者の方々ですね。噂は聞き及んでいます。1万の軍勢を、お2人で追い払ったと」
「いえいえ、そんな大層なものではないですよ。手伝いをさせてもらっただけです」

 「ご謙遜を」とシューナハイトさんはにこやかな笑顔を見せた。流石はエルフ。笑顔も一流だ。

「それでは本題ですが、何故冒険者に?」
「えっと、それは……」
「あぁ、別に国民の不安を取り除きたいから、とか大層な事じゃなくても大丈夫です。真実を教えてください」

 会社の面接みたいだな、と1人少し緊張していたが、そういう堅苦しいのでなくてもいいみたいだ。欲しいものがあるため、お金が欲しいというウマを伝える。

「在り来りな話ですね。分かりました、従業員に冒険者登録を命じておきます。少々お待ちください」

 そう言ってドアの外へ数十秒行ってから、すぐに帰ってきた。どうやら伝えてきただけのようだ。

「えっと、カードが完成するまで冒険者の詳しい説明をさせてもらいますね」

 アニメとかでよく見た冒険者だが、この世界の冒険者はランク制とかではなく、どのようなクエストも、例え冒険者したのがその日であっても受けられるらしい。しかし、それで命を落とそうとも、ギルドからは保険金も何も出ない。精々死者の家族に死が伝えられるぐらいだ。つまり、全て自己負担というわけだ。

 しかし、レベルの高いクエストを最低5つクリアすれば、冒険者としての価値が上がり、指名のクエストを受けられる。最もレベルの高いクエストをクリアした人は、国直々から指名でクエストを受けたやつもいるらしい。

 そのクエストの内容は千差万別なため、いくつかの種類に分けているらしい。その中でも多い種類が狩猟系と護衛系。実際雑用は他の万屋とかがあるため、そちらに仕事が行く。狩猟系は名の通り魔獣の狩猟、護衛系も名の通り依頼人及び依頼人が指名したものの護衛。無論、人殺しや窃盗など法律に抵触するクエストは存在しない。

 また、クエストのクリアはカードに魔法で記入されるらしい。

 クエスト受注には、ボードに貼られているクエストを受付嬢へ提出するだけとのこと。

「また、亜人種の冒険者の方々もおりますので、ご了承ください」
「あの、亜人種ってなんですか?」
「知らないのですか?私のようなエルフや、犬の耳を持つ犬人種などの、人間の姿に近い種族の総称です」

 なるほど、アニメの知識とほぼ同じで良さそうだ。今まで亜人を見たことがなかったのは、全亜人種が閉鎖的だからとのこと。殆どの亜人種が人里離れた場所に集落を作って、住んでいるらしい。聞けば、醜い緑色のゴブリンやその大型のオーガは亜人種には入らないらしい。判断基準は知能があるかどうかみたいだが、ゴブリンたちは知能がないみたいだ。

「失礼します」

 ノックが鳴ったと思うと、ドアからなんだかパッとしない男性が入ってきた。手にはお盆を持っている。

「こちらがカードになります」
「えぇ、ご苦労様。下がってください」

 そう言って、そそくさと出ていった。なんか、シューナハイトさんを見る目が俺達を見る目と違ったな。恋心でも抱いていそうだ。

 お盆の上に乗っていたのは、薄い黄金色をした、掌代のカードだ。とても軽いが、思ったより硬い。

「それがあなた達の冒険者としての証明書となります。それでは、冒険者ライフを頑張ってください」




 さて、これで冒険者登録は完了したのだが、まずどうしようか。このあと俺は用事があるが、それまでには結構時間がある。

「ノア、どのクエストやる?」
「もう既にやる気満々だな」

 それほどまでにあのバッグが欲しいか。まぁ、簡単なクエストだったらすぐにこなせるか。

「そうだ、あの村の近くのクエストをやろう」
「シューネがいる村?」
「そう、あの村」

 村の名前を今度聞いておこう。他の村に行った時に混ざりそうだ。

 村周辺のクエストはすぐ見つかった。メイジックベアーの狩猟か。どうやらあそこら辺に魔法を扱う熊が数匹住み着いたみたいだ。その狩猟らしい。

 ついでにシューネとの約束も果たしておこう。確か『黒い何か』の退治だったはず。

 というかメイジックベアーって確かリーベと一緒に街へ行った時に俺が食べた角煮に入っていた謎の肉だよな。あれ熊の肉だったのか。

 紙をはがして、受付嬢へと提出する。

「このクエストを受注しますか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。馬車などの手配ができますが如何なされますか?」
「いえ、結構です」

 受付を済ませて、ギルドから出る。さて、初クエストだ。締まっていこう!

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