聖女な妹を狙うやつは、魔王だろうと殴ります。
妹と喧嘩した日―3話
走る、走る、走る。
頭にあるのは、妹の事と―――脳を焼き尽くすほどの熱い『憤怒』だ。
「シャル、シャル、シャルッ……!」
立ち塞がる木を殴り飛ばし、脳裏に1人の女の子の姿を思い浮かべる。
ただただ愛しい、大切な妹の姿を。
「……久しぶりだな、アルヴァーナ……!」
「ふー……!ふー……!お前、エルビスか……!」
全力疾走し続けた影響か、それとも許容範囲を超す怒りの影響か……なんだか、息が苦しい。
「アル兄っ!」
「……シャル……!」
「おいおいおーい……美しい兄妹愛は良いんだけど……俺の事、あんまり無視するんじゃねぇよ?」
目を細め、獲物を見定めるような眼光……そうだ、こいつはエルビス。『強欲』を司る『七つの大罪』の1人。
油断してると……殺される。
「……俺は、お前と戦いたくない……シャルを返せ。でないと……本気で、お前を殺しちまう」
シャルの発見により、少し怒りが落ち着いたが……ちょっとしたキッカケで、憤怒は簡単に再燃するだろう。
「ははっ……わかってないな、アルヴァーナ……俺はお前と殺し合いに来たんだ」
「……何となくわかってたけど……魔王の命令か?」
「違う違う、お前を殺したいのは―――俺の欲望さ」
ギラギラと眼光を輝かせ、欲望に舌舐めずりする……その姿、まさに『強欲』。
「お前が、ずっと気に入らなかった……『魔族』しか入れない『七つの大罪』……そこにノコノコと入ってきやがった、お前とオーガが……!」
「エルビス……」
「勝負しろアルヴァーナ。お前の全力を、本気を、正面から受け止めて……それを上から叩き潰す」
腰から短刀を抜き、切っ先を俺に向けてくる。
「しょうがねぇ……『憤怒の上昇』」
「……はぁ……そんな生半可な怒りじゃ、こっちもまったく面白くねぇんだよ……ちょっと手伝ってやる、怒りやすくなるようにな」
言いながら、エルビスがシャルに手を向け―――
「―――『強欲の狩猟』」
『強欲の狩猟』……エルビスの『能力』。
確かこの『能力』は……視界内に存在する『物』を手元に瞬間移動させる『能力』だったはず。
「……あれ……?」
「おい……お前……シャルに何をした?」
「あ?さっき言っただろ―――」
手に握り締めたそれを広げ、エルビスがイヤラシく笑った。
「―――怒りやすくしてやるって」
「ぱっ、私の、パンツ……!」
白色の布切れ……それを見た瞬間、『ブチッ』と何かが切れるような音が、ハッキリと聞こえた。
「……殺す」
「ははっ、そう来ないとな……けど、お前が俺に、勝てるか―――?!」
喋り続けるエルビス……一瞬で距離を詰め、その頭を思いきり地面に叩き付ける。
起き上がろうとする―――前に、頭部を殴り付け、陥没させた。
「殺す」
「ちょ、待―――」
腕を掴み、振り回す。
勢いを付け―――木に叩き付け、地面に叩き付け、投げる。
飛んでいくエルビス……それに追い付き、蹴り上げ―――
「殺す」
「……………」
上空に浮いたエルビスを、殴って急降下させる。
『ズンッ!』と地面に何かがめり込むような音。
俺は、音の鳴った地点に落下し―――
「殺す」
「ぐっ、ぶ……!」
地面に寝転がるエルビスの腹を、落下の勢いのまま、踏みつける。
エルビスの口から、大量の血が吹き出し、さらに追い打ちしようと―――
「アル兄……!」
「…………シャル」
シャルの声で……少し、頭が冷静になる。
落ちている布切れを拾い、手渡す。
……長い沈黙が続く。
何を言うべきか……ふと、リオンさんの言っていた事を思い出した。
「シャル……」
「……アル兄……その、私―――」
「好きだ」
「ぇ……え?」
「愛している……シャル」
さて……まだ戦いは終わっていない。
腹を押さえながら立ち上がるエルビス……その眼は、しっかりと俺の姿を捉えていた。
「……アルヴァーナぁ……!」
「まだヤンのか?そろそろ本気で潰すぞ?」
「チッ……この傷じゃ分が悪い……退かせてもらう!」
「あ、おい……!」
あれだけの傷を負いながら、一瞬で森の中に消えていってしまった。
「シャル……怪我は無いな?」
「うん……」
「んし……んじゃ、帰るか」
「あ、アル兄!」
「ん?」
振り向き……何かを迷うようなシャルの姿が目に入る。
「あの……アル兄……」
「……来い」
「え?」
「だから、来いって」
両腕を広げ、抱き止めるような体勢を取る。
「……いいの?」
「当たり前だ……来い、シャル」
「……アル兄ー!」
しっかりとシャルを抱き締め、頭を撫でる。
……ゴメンとか、許すとか、そんな言葉は必要ない。
抱き締めて、お互いの気持ちを確認し合って……俺たちの仲直りは、それだけでいい。
頭にあるのは、妹の事と―――脳を焼き尽くすほどの熱い『憤怒』だ。
「シャル、シャル、シャルッ……!」
立ち塞がる木を殴り飛ばし、脳裏に1人の女の子の姿を思い浮かべる。
ただただ愛しい、大切な妹の姿を。
「……久しぶりだな、アルヴァーナ……!」
「ふー……!ふー……!お前、エルビスか……!」
全力疾走し続けた影響か、それとも許容範囲を超す怒りの影響か……なんだか、息が苦しい。
「アル兄っ!」
「……シャル……!」
「おいおいおーい……美しい兄妹愛は良いんだけど……俺の事、あんまり無視するんじゃねぇよ?」
目を細め、獲物を見定めるような眼光……そうだ、こいつはエルビス。『強欲』を司る『七つの大罪』の1人。
油断してると……殺される。
「……俺は、お前と戦いたくない……シャルを返せ。でないと……本気で、お前を殺しちまう」
シャルの発見により、少し怒りが落ち着いたが……ちょっとしたキッカケで、憤怒は簡単に再燃するだろう。
「ははっ……わかってないな、アルヴァーナ……俺はお前と殺し合いに来たんだ」
「……何となくわかってたけど……魔王の命令か?」
「違う違う、お前を殺したいのは―――俺の欲望さ」
ギラギラと眼光を輝かせ、欲望に舌舐めずりする……その姿、まさに『強欲』。
「お前が、ずっと気に入らなかった……『魔族』しか入れない『七つの大罪』……そこにノコノコと入ってきやがった、お前とオーガが……!」
「エルビス……」
「勝負しろアルヴァーナ。お前の全力を、本気を、正面から受け止めて……それを上から叩き潰す」
腰から短刀を抜き、切っ先を俺に向けてくる。
「しょうがねぇ……『憤怒の上昇』」
「……はぁ……そんな生半可な怒りじゃ、こっちもまったく面白くねぇんだよ……ちょっと手伝ってやる、怒りやすくなるようにな」
言いながら、エルビスがシャルに手を向け―――
「―――『強欲の狩猟』」
『強欲の狩猟』……エルビスの『能力』。
確かこの『能力』は……視界内に存在する『物』を手元に瞬間移動させる『能力』だったはず。
「……あれ……?」
「おい……お前……シャルに何をした?」
「あ?さっき言っただろ―――」
手に握り締めたそれを広げ、エルビスがイヤラシく笑った。
「―――怒りやすくしてやるって」
「ぱっ、私の、パンツ……!」
白色の布切れ……それを見た瞬間、『ブチッ』と何かが切れるような音が、ハッキリと聞こえた。
「……殺す」
「ははっ、そう来ないとな……けど、お前が俺に、勝てるか―――?!」
喋り続けるエルビス……一瞬で距離を詰め、その頭を思いきり地面に叩き付ける。
起き上がろうとする―――前に、頭部を殴り付け、陥没させた。
「殺す」
「ちょ、待―――」
腕を掴み、振り回す。
勢いを付け―――木に叩き付け、地面に叩き付け、投げる。
飛んでいくエルビス……それに追い付き、蹴り上げ―――
「殺す」
「……………」
上空に浮いたエルビスを、殴って急降下させる。
『ズンッ!』と地面に何かがめり込むような音。
俺は、音の鳴った地点に落下し―――
「殺す」
「ぐっ、ぶ……!」
地面に寝転がるエルビスの腹を、落下の勢いのまま、踏みつける。
エルビスの口から、大量の血が吹き出し、さらに追い打ちしようと―――
「アル兄……!」
「…………シャル」
シャルの声で……少し、頭が冷静になる。
落ちている布切れを拾い、手渡す。
……長い沈黙が続く。
何を言うべきか……ふと、リオンさんの言っていた事を思い出した。
「シャル……」
「……アル兄……その、私―――」
「好きだ」
「ぇ……え?」
「愛している……シャル」
さて……まだ戦いは終わっていない。
腹を押さえながら立ち上がるエルビス……その眼は、しっかりと俺の姿を捉えていた。
「……アルヴァーナぁ……!」
「まだヤンのか?そろそろ本気で潰すぞ?」
「チッ……この傷じゃ分が悪い……退かせてもらう!」
「あ、おい……!」
あれだけの傷を負いながら、一瞬で森の中に消えていってしまった。
「シャル……怪我は無いな?」
「うん……」
「んし……んじゃ、帰るか」
「あ、アル兄!」
「ん?」
振り向き……何かを迷うようなシャルの姿が目に入る。
「あの……アル兄……」
「……来い」
「え?」
「だから、来いって」
両腕を広げ、抱き止めるような体勢を取る。
「……いいの?」
「当たり前だ……来い、シャル」
「……アル兄ー!」
しっかりとシャルを抱き締め、頭を撫でる。
……ゴメンとか、許すとか、そんな言葉は必要ない。
抱き締めて、お互いの気持ちを確認し合って……俺たちの仲直りは、それだけでいい。
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