聖女な妹を狙うやつは、魔王だろうと殴ります。
異世界の勇者―2話
「『全魔法操作』って……魔法が全種類使えるって事か?」
「ああ……正確には全ての『魔法の才』を得るって感じだな」
「魔法の才……ってなんだ?」
「魔法を使えるやつが持ってる才能の事だ。まぁ魔法の才を持つやつは少ないから、魔法が使えるやつは少ないんだけど」
なるほど、と納得するユート。
……こいつ、本当に何も知らないな。
「……アルヴァーナは?魔法の才は無いのか?」
「んや、あるにはあるんだが……俺は魔眼のせいで魔法が使えないんだよなぁ」
「アルヴァーナの魔眼って……」
「『消魔の魔眼』……視界に入る全ての魔法を消滅させる魔眼だ」
「へぇ……でも自分の魔法が使えなくなるのはキツいな」
そう……魔法の才はあるのに使えない……俺の使える魔法は強力なのに。
「その魔法って、どのぐらい種類があるんだ?」
「『炎魔法』『水魔法』『雷魔法』、『光魔法』『闇魔法』……あと『風魔法』『土魔法』。それと珍しい魔法で『回復魔法』ってのがある」
「7種類か……それで全部か?」
「んや、あと『獄炎魔法』『激流魔法』、『神雷魔法』ってのがあるんだがでこの3つは『全魔法操作』じゃ魔法の才を得ることができない魔法……だった覚えがある」
この3つは、言うなれば上位魔法……生半可な人が、簡単に使えるような魔法じゃない。
「ふーん……お、あそこが『人国』か?」
「ああ……まずは冒険者登録してもらわないとな」
「おお……!いよいよ異世界に来たって感じだな!」
こいつは何に興奮してるのだろう。
「……なぁユート。お前の服、見たことない作りだけど……何それ?」
「これか?これは制服っつってな。俺らの世界の学生は、ほとんどみんな着てたやつだ」
……わけわからん。
こいつの世界の学生ってやつらは、こんな奇抜なファッションが好きなのか?
「……ん、着いたぞ」
「おっ、ここか!」
嬉々としてギルドの扉を開けるユート……その後に続いて中に入る。
「あ!アル兄お帰りー!」
「おおう、ただいまシャル。いい子にしてたか?」
「もっちろーん!……ん?」
中に入ると同時、天使が迎えてくれた―――いや違う。天使じゃない。妹だ。
「アルヴァーナ、お帰りなさい」
「ただいまリオンさん」
「……あら。そっちの人は?」
「ユートって言うんだけど……まぁとりあえず冒険者登録をしてやってくれ」
「わかったわ……それじゃ、こっちに来てくれる?」
ユートとリオンさんが奥へと消えていく。
「んじゃ……帰るかシャル―――お?」
隣に立っていたはずのシャルがいない……と思うと、いつの間にか背後に、隠れるようにして身を縮めていた。
「ど、どうしたんだ?」
普段は見慣れない人にも元気に接するシャルが、声を低く、小さくしてボソリと呟いた。
「……あの人……嫌い」
―――――――――――――――――――――――――
「え?アル兄、ドラゴン倒してきたの?」
「ああ。あんまり強くなかったけどな」
「さすがだね!」
ニコニコ笑うシャルが、腕に抱きついてくる。
「……なぁシャル、さっきユートの事嫌いって言ってたけど……どうかしたのか?」
「うーん……笑わない?」
「笑わねぇよ」
言うかどうか迷うような仕草を見せ……意を決したように、口を開いた。
「……あのね?……私、あの人と会ったことがあるの」
「会ったことがあるって……どこで?」
「……夢の、中」
……少し、怯えたように見える。
「夢の中で……あの人とアル兄が戦っていたの……それで、アル兄が……」
「負けたのか?」
「………………うん」
絞り出したような、か細い声。
だが、ハッキリと告げた―――俺が、ユートに負けた、と。
「……ねぇアル兄?」
「ん?」
「負けない……よね?」
「何言ってんだ。そもそもあいつと戦る気は無いし……戦ったとしても、負けねぇよ」
心配そうに俺を見るシャル……その頭を撫で、帰路を辿る。
ユートは勇者だ。
あいつの目的は魔王を倒すこと……その前に立ちはだかるのは、魔王を守る『七つの大罪』。
もしユートが、俺の正体に気づいたら……戦うことになるだろう。
「……絶対に、負けない……誓ったんだ、あの日に」
遠き日の記憶を思い返し……空を見上げる。
……俺は負けない……そのために強くなった。シャルを守るために。
これからだってそうだ。シャルを守る。これが俺の目的で……目的のためになら、俺はどんな罪でも―――
「ああ……正確には全ての『魔法の才』を得るって感じだな」
「魔法の才……ってなんだ?」
「魔法を使えるやつが持ってる才能の事だ。まぁ魔法の才を持つやつは少ないから、魔法が使えるやつは少ないんだけど」
なるほど、と納得するユート。
……こいつ、本当に何も知らないな。
「……アルヴァーナは?魔法の才は無いのか?」
「んや、あるにはあるんだが……俺は魔眼のせいで魔法が使えないんだよなぁ」
「アルヴァーナの魔眼って……」
「『消魔の魔眼』……視界に入る全ての魔法を消滅させる魔眼だ」
「へぇ……でも自分の魔法が使えなくなるのはキツいな」
そう……魔法の才はあるのに使えない……俺の使える魔法は強力なのに。
「その魔法って、どのぐらい種類があるんだ?」
「『炎魔法』『水魔法』『雷魔法』、『光魔法』『闇魔法』……あと『風魔法』『土魔法』。それと珍しい魔法で『回復魔法』ってのがある」
「7種類か……それで全部か?」
「んや、あと『獄炎魔法』『激流魔法』、『神雷魔法』ってのがあるんだがでこの3つは『全魔法操作』じゃ魔法の才を得ることができない魔法……だった覚えがある」
この3つは、言うなれば上位魔法……生半可な人が、簡単に使えるような魔法じゃない。
「ふーん……お、あそこが『人国』か?」
「ああ……まずは冒険者登録してもらわないとな」
「おお……!いよいよ異世界に来たって感じだな!」
こいつは何に興奮してるのだろう。
「……なぁユート。お前の服、見たことない作りだけど……何それ?」
「これか?これは制服っつってな。俺らの世界の学生は、ほとんどみんな着てたやつだ」
……わけわからん。
こいつの世界の学生ってやつらは、こんな奇抜なファッションが好きなのか?
「……ん、着いたぞ」
「おっ、ここか!」
嬉々としてギルドの扉を開けるユート……その後に続いて中に入る。
「あ!アル兄お帰りー!」
「おおう、ただいまシャル。いい子にしてたか?」
「もっちろーん!……ん?」
中に入ると同時、天使が迎えてくれた―――いや違う。天使じゃない。妹だ。
「アルヴァーナ、お帰りなさい」
「ただいまリオンさん」
「……あら。そっちの人は?」
「ユートって言うんだけど……まぁとりあえず冒険者登録をしてやってくれ」
「わかったわ……それじゃ、こっちに来てくれる?」
ユートとリオンさんが奥へと消えていく。
「んじゃ……帰るかシャル―――お?」
隣に立っていたはずのシャルがいない……と思うと、いつの間にか背後に、隠れるようにして身を縮めていた。
「ど、どうしたんだ?」
普段は見慣れない人にも元気に接するシャルが、声を低く、小さくしてボソリと呟いた。
「……あの人……嫌い」
―――――――――――――――――――――――――
「え?アル兄、ドラゴン倒してきたの?」
「ああ。あんまり強くなかったけどな」
「さすがだね!」
ニコニコ笑うシャルが、腕に抱きついてくる。
「……なぁシャル、さっきユートの事嫌いって言ってたけど……どうかしたのか?」
「うーん……笑わない?」
「笑わねぇよ」
言うかどうか迷うような仕草を見せ……意を決したように、口を開いた。
「……あのね?……私、あの人と会ったことがあるの」
「会ったことがあるって……どこで?」
「……夢の、中」
……少し、怯えたように見える。
「夢の中で……あの人とアル兄が戦っていたの……それで、アル兄が……」
「負けたのか?」
「………………うん」
絞り出したような、か細い声。
だが、ハッキリと告げた―――俺が、ユートに負けた、と。
「……ねぇアル兄?」
「ん?」
「負けない……よね?」
「何言ってんだ。そもそもあいつと戦る気は無いし……戦ったとしても、負けねぇよ」
心配そうに俺を見るシャル……その頭を撫で、帰路を辿る。
ユートは勇者だ。
あいつの目的は魔王を倒すこと……その前に立ちはだかるのは、魔王を守る『七つの大罪』。
もしユートが、俺の正体に気づいたら……戦うことになるだろう。
「……絶対に、負けない……誓ったんだ、あの日に」
遠き日の記憶を思い返し……空を見上げる。
……俺は負けない……そのために強くなった。シャルを守るために。
これからだってそうだ。シャルを守る。これが俺の目的で……目的のためになら、俺はどんな罪でも―――
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