魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。(5月)

咲良目線

 その日の帰り、私は本屋さんに寄りました。
 何でかと言うと、昨日から一緒に暮らしている火夏の為に歓迎会を開こうと思って、料理の本を買いに来たんです。
 料理本コーナーに行ってみると、なんと火夏がいました。
 とりあえず、火夏に何が食べたいかを聞くことにして彼に声をかけました。
「火夏、こんな所で会うとは奇遇ですね。」
 すると、彼は慌ててこちらを見ると
「そうだな。」
 と、さっき慌てていた割りには、冷静に頷かれて、私は少し戸惑ったもののすぐに
「あら、火夏、何を読んでいるんです?」
 と、聞いて見ると彼は
「何でもない。」
 と言って読んでいた本を背中に隠しました。
「あっ、どうして背中に隠すんです。隠されたら、余計に気になるじゃないですか。」
「・・・。分かった。」
 と言って渡された本は、『低カロリーで美味しいおかず』という題名でした。
 私はキョトンとして
「火夏、ダイエットでもしているんですか?」
 と聞くと火夏は明らかに話題を変えました。
「それよりも咲良、どうしてここにいるんだ?」
「えっと、私は小説と料理の本を買いに来たんです。火夏は何でここにいるんですか?」
 私は火夏には歓迎会を開こうと思っていることは黙って置くことにしました。
 すると、火夏は、
「ああ。俺は、昨日から世話になるお礼に料理を作ろうと思い調べていた。・・・何か食べたい物でもあるか?」
 と聞かれて私は"やばいですね。"と思いながら口を開きました。
「えっと、今晩は、私が作る日なんです。・・・よかったら一緒に作りませんか?」
「。良いのか?」
 と聞かれて私は笑顔で答えました。
「はい。良いですよ。・・・火夏は何が食べたいですか?」
「俺?俺はハンバーグが食べたい。お前は?」
 と聞かれましたが私は笑ってごまかします。
「良いですよ。私は明日好きなものが出るので。・・・それよりも、ハンバーグですね。お願いがあるんですけど私にハンバーグを作らせてくれませんか?」
「・・・、あ、ああ。分かった。じゃあ先に帰る。」
 と言うと本を棚に戻してから、帰って行きました。
 それを見送ると、私は恋愛小説コーナーに行きました。


 家に着くと私は部屋に荷物と有るものを置くと、エプロンを持って居間に行きました。
 居間でエプロンを着ると居間に有る台所に入りました。
 台所に行くともう火夏がいて、ご飯が炊けていました。
 なので私は火夏に話しかけました。
「ただいま帰りました。・・・火夏がご飯を炊いてくれたんですか?」
「ああ。いつ帰ってくるが分からなかったから、炊いて置いた。」 
 と言われたので、私はお礼を言いました。
「ありがとうございます。では、これから作りますね。」
 と言うと私は流しで手を洗って、冷蔵庫からハンバーグの材料を取り出すと玉葱を洗います。
 まな板と包丁を用意すると玉葱をみじん切りにしていきます。
(あっ、今思ったんですが、男の人と一緒に台所で料理をするのは初めてです。)
 と、今更なことを考えているとだんだん緊張してきました。
(うぅぅ。な、何で緊張するんですかぁ。)
緊張しているせいで集中力が散漫してしまいました。
 なので、
「いたっ。」
 左手の薬指を切ってしまいました。
 思わず目に涙を浮かべて治癒魔法の呪文を唱えようとしたとたん、私の怪我に気付いた火夏が慌ててこちらに来て心配している声音で、
「大丈夫か?」
 と、言われて私は
「は、はい。だ、大丈夫です。」
 と言いましたが、彼は眉を寄せると溜息をついて
「見せてくれないか?」
 と言われたので私は素直に火夏に怪我をした指を見せました。
 すると、火夏は左の手首を掴むとそのまま怪我をした指先を口に含みました。
「ひ、火夏、な、何をしているんですかぁ!」
 と、真っ赤になって火夏に言いましたが、彼は何も言いませんでした。
 そして、傷口に彼の舌が這う間、背中がぞくぞくしていました。
「ひ、火夏、な、何か背中がぞくぞくするので、やめて下さい。」
 と思わず頼むと、彼は私の指先を口から出すと不思議そうに言いました。
「消毒をしただけだが、何で顔が赤いんだ?」
 それを聞いて私は沈黙してしまいました。
 だけど言いたいことがあったので、じと目で言いました。
「・・・・・・。火夏、こういうのは好きな人にして下さい。・・・それに、消毒なら魔法を使って治して下さった方が助かります。」
 すると今度は火夏が沈黙してましたが、口を開きました。
『怪我よ治れ!』
 と、怪我が治る魔法・治癒魔法をかけて貰ったので怪我が治りました。
「火夏、ありがとうございました。」


 それから私は火夏と協力して夕ごはんを作りました。
「・・・ふぅ。火夏、お疲れ様です。」
「ああ。・・・咲良、おばさんと葵さんを呼んで来てくれないか?」
 と、頼まれましたが、私は顔を横に振ると口を開きました。
「すみません。私はちょっと部屋に戻らないといけないので無理です。なのでお願いします。」
 と言うと彼は渋々頷いてくれました。
「ああ。分かった。呼んでくる。」
「はい。お願いします。」
 と言うと、私は自分の部屋に有るものを取りに行きました。
 そして、その有るものを持って居間に戻るとまだ誰もいなかったので、私は安心して有るものを冷蔵庫の中に隠しました。
 すると、居間のドアが開いたので、慌てて台所から出ました。
「火夏、ありがとうございます。ご飯ができましたよ。」
 と言うと、皆は自分達の椅子に座りました。


 それから私達は夕ごはんを食べ始めました。
 私は火夏がハンバーグを食べているのを見ると不安になりました。
(う~ん。私は美味しいと思いますが、火夏の口に合うでしょうか?)
「咲良、俺が作ったスープは口に合うか?」
 と聞かれて私は
「はい。美味しいですよ。・・・ハンバーグは、ど、どうですか?」
 と言うと火夏は小さく微笑むと
「ああ。口に合って良かった。お前が作ったハンバーグもうまい。」
 と言ってくれたので私は嬉しくて、ニコニコと笑って口を開きました。
「フフ、お口に合って良かったです。・・・ところで、火夏っていつから料理をしているんですか?」
 と聞くと、火夏は一言、
「小三の時から。」
 と言われて私は
「へぇー。私は小六の時からです。」
 と言うと、食べ終わったので私は冷蔵庫から有るものを持ってくると皆に言いました。
「はい。ケーキです。食べませんか?」
 と言うと、皆は一瞬困った顔をしましたが、結局は美味しく頂きました。
 



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