魔女の秘密~魔女は、急の事態に戸惑う。(5月)

3、い、いきなりクラスの男子と一緒に住むことになりました〈咲良目線〉

 家に着くと私は、居間に寄らず自室に戻りました。
 玄関に見知らぬ男性用の革靴があったからです。
 私が思うに、お姉ちゃんの彼氏さんが来ているんでしょう。
 そんな所に行くとお姉ちゃんカップルの邪魔になってしまいます。
 そう判断し、速やかに自室に戻るのでした。

 自室に戻ると、鞄を机の上に置いて、制服から私服に着替えました。
 そして、夕ごはんまで読みかけの小説を読もうとベッドの上に横になって読みかけのページを開くと読み始めました。
 しばらくすると、急にドアを叩く音が聞こえました。
「どうぞ」
 ドアが、開きました。
 そして表れたのは私のお姉ちゃんの飛龍葵でした。
「咲良、お母さんが呼んでるよ。」
 と言われて私は内心、何でしょうか?と思いつつ慌てて立ち上がりました。
「はい。行きましょう。」
 そう言って、お姉ちゃんと一緒に自室から出ました。
 
 お姉ちゃんに付いていくと一階の居間に着きました。
 中に入ると、テレビの前にお母さんと、ここに居るはずのない人が座っていました。
 その人は、目を見開いて私をガン見して来ました。
 一方の私はというと、目の前の光景が信じられなくて目を擦りました。
 目を開くと幻のように消えていることを願って。
 だけど私が目を開いても、私の意思に反してその人──────高瓦火夏(たかかわらひなつ)君は、今も目を見開いて私をガン見しています。
「高瓦君。あのぅ、どうしてここに居るんですか?」
 ガン見されていることの居心地の悪さに思わず聞いてしまうと、高瓦君はやっと目を見開いてガン見するという行為をやめると言いにくそうに口を開きました。
「あ、ああ。実は母が家出した。それで今日からこの家でお世話になることになった。」
 彼の言葉に私は驚いて、お母さんを見ました。
「お母さん、どういうことですか?」
 すると、お母さんはニッコリと微笑むと説明を始めました。
「咲良、火夏君はね、直子ちゃんの一人息子さんなのよ」
 そう言われ私は、その言葉に微笑みました。
「そうなんですか。高瓦君が、直子さんの息子さんだったんですね。で、直子さんが家出を・・・・・・。けど、何でここで預かるんですか?」
 と聞くと、お母さんはニヤリと笑うと
「直子ちゃんに頼まれたからよ。」
 と言われたので私はお姉ちゃんに止めて貰おうと救いの視線を送ってましたがお姉ちゃんは
「私は大丈夫だよ!」と言いました。
 なので、自分で止めることにしました。 
「・・・。あのぅ、私は大丈夫じゃないです。だって、間違いがあるかもしれませんし・・・。」
 と、言うとお母さんは、
「誰と誰か間違えるの?」
 と、ニヤニヤして聞いて来たので私は
「えっ、それは、お姉ちゃんと高瓦君です。」
 と答えると、何故か高瓦君が、
「それはない。」
 と、否定して来ました。
 だけど、私はその否定にイラッとして、高瓦君に言いました。
「・・・高瓦君。言って置きますが、お姉ちゃんは美人でとてつもなくモテるんですよ。そんなお姉ちゃんに何の不満があるんですか!」
 と熱くなる私とは反対に高瓦君は冷静に口を開きました。
「不満はない。だが、俺には、好きな人がいる。だから、葵さんとは間違いを起こさない。」
 淡々と告げられて私は気になったことを聞きました。
「好きな人って誰ですか?」
 すると、お母さんに止められました。
「咲良、これ以上はやめてあげて!」
「何でですか?・・・・・・はっ、ご、ごめんなさい。確かに、あまり仲良くない女には言いたくないですよね。」
 と、謝ったのですが、高瓦君は、何故か私を睨んで来ました。
「とにかく、今日からしばらく一緒に住むから、仲良くしなさいよ。」
お母さんに言われたので、渋々頷きました。 
「ハァー。・・・分かりました。高瓦君、今晩から、よろしくお願いします。」
「ああ。よろしく。」

 しばらくすると、お父さんが帰って来たので、夕ごはんを食べることになりました。
 私は、さっきのことで、腹が立っているので、無言で、食べ進めていると、お母さんに
「咲良、ちょっとこっちに来なさい。」
 と呼ばれたので私は、お母さんを見るとお母さんは、笑顔でしたが目は笑っていません。
 なので、私は少し怯えながら
「は、はい。今行きます。」
 と、言うとお母さんが席を立ったので私はお母さんの後を付いて行きました。
 
 お母さんの後を付いて行くと、お母さんの部屋の前に着きました。
 そして私が部屋の中に入るとお母さんは部屋のドアを閉めました。
「咲良、そんなに嫌なの?」
 と聞かれたので私は少し考えて口を開きました。
「い、嫌とかではなくって、私はお姉ちゃんを馬鹿にしたことに怒っているだけです。だって、自慢のお姉ちゃんですから。」
「咲良は相変わらずお姉ちゃん子ね。・・・とりあえず火夏君は葵のことを馬鹿にした訳じゃなくて、咲良を安心させようとしたんじゃないかしら。火夏君だって、直子ちゃんの家出で急に家を出ることになったんだから。不満もあるでしょうし、今頃"自分はここに居て良いのだろうか"って不安になってると思うわよ。咲良、火夏君にそんな態度で良いの?」
 と、言われて私は首を横に振ると、口を開きました。
「駄目です。・・・分かりました。高瓦君と仲良くなれるように頑張ります。」
 そう言うとお母さんの部屋から出て行きました。
 
 居間に戻ると高瓦君がいませんでした。
 なので、お姉ちゃんに高瓦君の居場所を聞くと、高瓦君が、自分の部屋に戻っていることが判明しました。
 なので私はすぐに高瓦君の部屋(私の部屋の隣)に行きました。
 
「高瓦君、話しがあるので入っても良いですか?」
「あ、ああ。別に構わない。」
 と、言ってくれたので、私は高瓦君の部屋の中に入りました。
 そして、高瓦君の近くに行くと謝りました。
「高瓦君、さっきまで怒って態度が悪くなってしまってごめんなさい。あと、高瓦君も大変なのに自分のことしか考えてなくてごめんなさい。」
「お前は悪くない。俺もお前の立場ならそうすると思うから、気にしなくても良い。・・・俺は、出来たらお前とも仲良くなりたい。・・・・・・駄目か?」
 と言ってくれたので、私はホッとして思わず微笑むと首を横に振って言いました。
「駄目じゃないです。私も高瓦君と仲良くなりたいです。」
「本当か?・・・・・・ありがとう。これからよろしく。」
 と、彼は嬉しそうに言ったので私は、
「はい。よろしくお願いします。」
 と言うと彼は小さく微笑むと口を開きました。
「では、居間に戻ろう。」
「はい。戻りましょう。」
 そして居間に戻りました。

 居間に戻るとお母さんが、
「火夏君に謝ったの?」
 と聞かれたので私は
「はい。謝りましたよ。」
 と、頷きました。
 それから、自分の席に座ると食事を再開しました。
 そして、ふと気になったことがあったので高瓦君に聞くことにしました。
「高瓦君って家事とかするんですか?」
「一応、一通りは出来る。」
 それを聞いて私はニッコリと微笑みました。
「それなら、お手伝いも出来ますよね。」
「ああ。元からそのつもりだ。」
と、当たり前のように言われて私は
「頼りにしてますね。」
 と、言うと高瓦君は、
「そういう飛龍はどうなんだ?」
 と聞かれましたが、お姉ちゃんにも聞いているのかが、分からなくて彼を見ました。
 すると、高瓦君は、はっと何かに気づいたらしく溜息をこぼしました。
「・・・すみません。妹の方に聞きました。」
 と言われ私は口を開きました。
「えっと、わ、私も一応・・・・・・。」
 と、答えるとお姉ちゃんが
「そうそう、咲良はもう花嫁修行してるもんね。」
 と、いきなり変なことを言い出しました。
「「えっ!」」
 急に言われた自分も知らないことに「えっ!」と驚いて聞いたと同時に何故か高瓦君も私の顔を見ながら同じことを言いました。
 そのリアクションにお姉ちゃんは慌てたらしく、すぐに言い訳をしました。
「だ、だって咲良、料理とか凄く頑張ってるから。」
 と言われ、私は当たり前のように答えました。
「そりゃあ、頑張りますよ。将来の為に。」
 すると、高瓦君は何かを呟くとそのまま黙り込んでしました。
「高瓦君、どうされました?」
 と聞くと高瓦君は慌てた様子で、
「あ、ああ。別にどうもしないが・・・」
 と、口ごもった彼に、私は笑顔で話しかけました。
「ところで、笙の楽譜ってどうなっているんですか?」 
「ああ。そうだな。・・・また今度見てみるか?」 
 と聞いてくれたので、私は頷きました。
「はい。お願いします。」
 さっき私が高瓦君に振った話題は、私と高瓦君が所属している〈雅楽部〉という部活動の話しです。
 そして高瓦君は笙を担当しています。
(ちなみに私は舞で、"白拍子"の担当です。)
「そういえば、咲良と火夏君は同じ雅楽部だったわね。」
 といきなり会話に入って来たお母さんに私は頷きました。
「はい。そうですよ。・・・ね。」
「あ、ああ。そうです。」
 と言いつつも、彼の顔が赤かったので私は首を傾げて、聞きました。
「えっ?ど、どうされたんですか?顔、赤いですよ?」
「別にどうもしない。」
 と言われたので私はキョトンとしてました。
(どうして私だけタメ口何でしょうか?)
 多分、私は知っている人だからタメ口何でしょう。
 そう決論を下すとご飯が無くなるまで食べ続けました。

 長かった夕ごはんが終わってお風呂に入ることになったんですが、お風呂に入る順番を決めていなかったので、私はお姉ちゃんと高瓦君にとある提案をしてみました。
「じゃんけんでお風呂に入る順番を決めませんか?」
「ああ。別に構わない。」
「うん。良いよ。」
 と2人が頷いたので、じゃんけんを始めました。
「「「最初はグー、じゃんけん、ポン!」」」
そして、じゃんけんをして決まった順番は、1番、お姉ちゃん2番、私、3番目は高瓦君になりました。
 
 私は洗面所から出ると高瓦君の部屋に行くとドアをノックしました。
 私が部屋の様子を窺っていると、部屋の中からドアが開いて高瓦君が、顔を覗かせました。
「高瓦君、お風呂上がりました。お次どうぞ。」
「ああ。分かった。今行く。・・・あと、俺のことは火夏でいい。苗字で呼ばれると落ち着かない。」
 と言われ私はキョトンとして口を開き、彼に聞きました。
「えっ?落ち着かないんですか?・・・わ、分かりました。それなら、私のことも咲良でいいですよ。飛龍だと、皆も反応しますからね。」
「ああ。そうさせてもらう。・・・あと、俺がここで預かってもらっていることは桜咲以外には言うな。俺も花崗には言うから。」
と言われ私は笑顔で
「はい。分かりました。詩乃には明日言いますね。・・・で、では、おやすみなさい。」
と、一方的に伝えると自室に戻って読みかけの小説を読み始めました。 


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