天魔界戦

皇神凪斗

第18話 速さの勝負

ロキの前にラファエルが立ち塞がる。
「随分強気な発言だが状況は何一つ変わってないぞ?・・・いや、寧ろ悪くなっている。さっきの人間を蹴散らす為にその『魔具』の力を明かしたな?」
「ほう?」
「その『魔刀』の能力は空間を繋げる能力だ!刀で斬った空間と他の空間を繋げ、その間に物や人間を行き来できる。
さっき俺に斬りかかった時、避けさせる事で長い切っ先を俺の視界から外した。その視界の外で空間を切り裂き、切っ先を俺の背中に転移ワープ。そのまま切りつけたって所だろ。
分かればそんなものどうとでもできる!」
ラファエルは飛び上がり加速。縦横無尽に舞う。
ロキはラファエルの飛ぶ位置を予知して刀を転移させる。
しかし、ラファエルは身体を少し捻るだけでそれを避ける。
「俺は羽の向きで飛ぶ方向をコントロール出来る!切っ先が飛んでくると分かれば警戒して躱すことも出来る。そして、お前は俺より遅い。攻撃を当てることなど出来ない!後はお前を殺すだけだ!!」
ラファエルは腕に『神風』を纏わせロキの背中に叩きつける。
「グアッ!!」
『神風』はドリルのように回転し、ロキの背中を無限に切り刻み吹き飛ばす。
ロキは全身から血を流しながら地面に叩きつけられる。
それでも、フラフラになりながらでもロキは立ち上がる。
「苦しいか?なら、今トドメを刺してやる!」
ラファエルは再び羽を羽ばたかせる。
と、同時にロキは地を蹴る。
「!?」
完璧なタイミングでロキは魔刀を振る。しかし、ラファエルは『神風』を纏った腕でそれを防ぐ。
「ハハハ!攻撃が単調になっているぞ?死に損ないが!」
ラファエルはロキを蹴り飛ばしまた加速する。
「ん!?アイツは何処に行った!?」
飛びながらロキを探すが何処にもいない。
「まさか!」
ラファエルは背後を見る。少し離れてロキが同じ速さで付いてきていた。
「馬鹿な!死にかけの癖に俺の速さに対応しやがったのか!?」
「追いかけっこはもう終わりだ・・・『終炎』!」
ロキは左手に『終炎』を集め真っ直ぐ放つ。
ラファエルは同様に身体を捻り躱す。
「その程度で俺を捕まえたつもりか?
・・・いや、四大天使の俺が人間相手に逃げ回るなんて間抜けな事はしねぇ!!」
ラファエルは後ろを向き『神風』で槍を作り。それを放つ。

「これで!・・・・・・な、何だ?体が動かねぇ!」

ラファエルは槍を振り上げたまま止まってしまう。
「!・・・これは?」
自分の体に細い終炎の糸が絡まっているのを見つけた。
その糸はロキの左腕に繋がっていた。
「やっと気づいたか。間抜けめ。」
「クソ人間が!!お前は俺の速さに付いてきた訳じゃない!さっき刀で切りかかってきた時に巻き付けた糸で引っ張られていただけか!!」
「その通りだ・・・『終炎の灯火』!」
細い終炎の糸に魔力を流す。ラファエルの体に触れている部分の糸が爆発する。全身が爆破され、羽がボロボロになり地面に落ちていく。
「・・・殺す・・・お前だけは俺が!」
「やれるものならやって見ろ。」
その時、ルルカと共闘して天使を蹴散らしていたシャールがナイフを放つ。それはラファエルに向けて放たれるが、ラファエルはすぐにそれに気づき『神風』で吹き飛ばす。
「うざってぇな!クソ女!お前から殺してやる!!」
ラファエルは羽を羽ばたかせ真っ直ぐシャールへ近づこうとする。しかし、ロキも同じタイミングで地を蹴る。
素の速さではラファエルの方が上のはずだが。
ロキはラファエルに追いつく。そして、回し蹴りでラファエルを吹き飛ばす。
「馬鹿な・・・何故追いつかれる?」
「確かに最高速度はお前の方が上だ。だがお前は飛んだ後羽を動かして加速。俺は地面を蹴って加速。つまり同じタイミングで動いた時、お前は加速前で最も遅く。俺はその瞬間が最も速い。だから追いつける。簡単な事だろう?
更にいえばシャルにお前を挑発させれば向かう方向も分かる。お前はずっと俺の策略の中だ。」
「ふざけるな!」

「『剣技 血桜』!」

『魔刀 骸苦髏太刀』の力で切っ先を転移させ一振で二度、三度も切りつける。
その状態で何度も魔刀を振り、ラファエルの全身を切り刻む。
ラファエルは全身が光になり、散り散りに消えていく。

「・・・思ったより時間が掛かったな。次の敵を・・・。」
歩きだろうとしたロキはそのまま倒れ込んでしまった。


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