天魔界戦

皇神凪斗

第26話 四大天使

「さて、どうしましょうか。ロキ。」
「あぁ、アルマを見つけたらさっさと帰る予定だったが・・・まさか四大天使まで動いているとは思いもしなかったな。」
「人間は危険だ。この『天界』まで来た以上、最大限に警戒して損は無いだろう。」
「随分と慎重だな。『神』はもっと臆病者なんだろうな?」
ロキの発言に周りの天使達が反応する。
「愚か者が。即、排除する。」
囲んでいた数十体が一斉に距離を詰めてくる。
「行くぞ!シャル!」
「分かりました!」
カイトとメルを中心に、前にはロキ。後ろにシャールが付く。
そして二人とも、両手一杯にナイフを取りだした。
そして、放る。天使の動きよりも速く。近づいてくる一体一体に確実にナイフを突き刺していく。

「「『アブソリュート・ゼロ絶対零度』」」

周りにいた天使達が凍る。たった一瞬で指一つ動けない程、全身が隈無く凍る。

「「『ホワイト・アウト』」」

凍った事に気づく間を与えず、次の手を打つ。
凍った天使達が崩れ始める。身体の端から雪のように白く、細かい氷となって散り始める。
「慎重だったのはお前だけだったようだな。ウリエル。」
「くっ!愚か者め。警戒しろと言ったはずだ!
奴の口車に乗るな!」
天使達は包囲をとかない程度に距離を取る。
「数は減らせたが、相手は警戒を強めたぞ。」
「あぁ、だが包囲は甘くなった。後はウリエルを引き離す。」
「引き離す?何故そんな事をする。」
「あの四大天使じゃ、お前達は相手にならない。
人間界に来ていたのは下っ端の下っ端。
だがやつは違う。『神』よりは弱いだろうが、お前達より圧倒的に強い。俺が一人で相手をする。」
「危険です!全員で戦いましょう!?」

「・・・聞こえなかったのなら言い直そうか?足でまといだ。」
「わ、分かりました・・・。」
天使達の間からウリエルが少し前に出る。
「こんな時に仲間割れか?やはり人間は愚かだな。」
ウリエルが右手を広げると、その手の上に『青い炎』が生まれる。
「?・・・あれは・・・。」
「骨も残さず焼き尽くしてやる。」
その炎を突き出すようにロキ達へ向けて手を掲げる。
すると、大きくなった『青い炎』を放射してくる。
「くっ・・・!」
ロキ達は簡単に飲み込まれてしまう。
凄まじい威力の炎が通った後に、誰も残ってはいなかった。
「消えたか。」
ウリエルは眉間に皺を寄せる。

「いや・・・お前達!上だ!」

「む?」
天使達が見上げようと顔を動かすと、全身が影に包まれる。
「少し焦ったが・・・隙は逃さない。」
包囲の遥か上空。浮いているロキの右手側には、人間が持つ事が想像出来ないほど大きな黒い剣が浮いていた。
「『殲滅魔法マジック・オブ・デモリション
極魔 堕天の剣だてんのつるぎ』」
ロキが右手を振ると、黒い剣も動き出す。
反応に遅れた天使を吹き飛ばし、掠った天使には『黒炎』が発火する。
更にロキが腕を振ると、その動きに合わせて黒い剣も動く。
一人でに大暴れし、天使を蹴散らしていく。
しかし、急に剣は動きを止める。
「やはりウリエルは別か・・・。」
「私がいる限り、貴様の好きにはさせん!」
「・・・残念ながら手遅れだ。・・・『滅』!」
黒い剣から魔力が溢れ出す。
「!・・・させるか!」
ウリエルの青い炎で黒い剣を包もうと広げるが、巨大なので時間が掛かる。
黒い剣は弾ける。その中から弾丸のように、細く鋭い魔力の刃が飛び出す。
それは数千、数万はありそうな程に分裂し周りの天使を倒していく。
自分で広げた青い炎でウリエル自身は防ぐことが出来たが、天使達は半分近く倒れる。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
天使達からは分からないが、ロキは少し息を荒立てていた。
「ロキ!魔力の使いすぎです!このペースじゃ持ちませんよ!」
「後一手だ・・・お前達も覚悟しておけ。周りの天使は任せる。」
「もう少し残しても良かったんだがな。
・・・そう言うからには、お前も負けるなよ・・・。」
「フッ・・・誰に言っている?」
ウリエルは青い炎を手に接近してくる。
「悠長にしてる暇は無さそうだな!貴様には最初に罰を与える!」
ロキはウリエルの背中に回り込む。
「望む所だ・・・異結界アナザー・スペース
二人を中心に、空間が四角く切り取られる。
四角はすぐさま小さくなり、姿を消した。
「ウリエル様が結界に。」
「問題は無い。」
「人間如きに負けるはずも無し。」
ロキが居なくなり、三人は落下しそれぞれ雲の足場に着地する。

「さっきから思っていたが、喋り方が機械的だな。まるで感情が無いようだ。」
「神に従い言われるがままの生き方をしてきたのでしょう。ただの操り人形ですよ。」
「少し怖いですけど、アルマ君を見つけるまで倒れる訳にはいかないんです・・・負けません。」


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