天魔界戦

皇神凪斗

第22話 禍憑カイン

ジンの案内によりロキ達は天白ギルド内の一室に来た。
部屋の中には二人の男女が待っていた。
男はロキを見て特に驚く様子も無く、ただ無表情でいた。カインよりやや背の低い少女は明るい笑みを浮かべ隣に座っていた。
他を押しのける様に入ったアカネが男の方に指を指す。
「カイン!客が来るなら先に言って欲しかったんだけど?」
「お前には関係の無い話だ。初対面でそいつらに戦いを挑むとは思わなくてな。すまない。」
バランはロキ達に頭を下げる。
「悪い事をしたな。だが、カインは死んだ事になっている。生きている事を知っている人間には警戒していたんだ。」
ロキは一人歩み出る。
「無駄話はそこまでだ。カイン、お前に用がある。」




関係の無い者には部屋を出て貰い部屋に残ったのはロキ、シャール、ゼツ、メル、カイトとジン。カインと一人の少女だった。
「少し良いか?」
まずカイトが話を始める。
「時間が無いと急かしているのに悪いが、お前達は信用できるのか?一体何者なんだ?」
「あぁ、お前達にも知る権利はあるだろう。少し長くなるが・・・。」
カインは一呼吸置き、話し始める。
「まず、俺は死んでいる。この身体は『悪魔』としての肉体だ。」
「「!?」」
「隣にいる妹。禍憑ヨミと、悪魔の契約を交わす事でお前達に実物として会えている。」
「死んだ人間が悪魔になったのか!?」
「・・・違います。」
さっきまで笑みを浮かべていた少女が突如、真面目な顔をした。
「お兄様は瀕死を私を助けるべく、悪魔になる事で人間として死んでしまいました。
死んだから悪魔になった訳ではありません。」
「・・・・・・。」
深い事情があるのだろうがカイトは聞かない事にした。
「次だ。お前はアルマとこいつロキに天使と悪魔を止めるように命じたらしいが。
つまりそれは天使と悪魔が動く事を知っていた、という事になる。
・・・なぜ知っていた?」
「俺が魔界に繋がりがある。という事が一つ。

この『世界の原則』により、起こると予感したからだ。」

「『世界の原則』?何の話だ?」
「この世界を創った創造神が娯楽として飽きない為の原則ルール。そんな物が存在している。」
「またおとぎ話か・・・?」
「俺は神の使いでも絵本の中の住人でもない。
『此処に生きている』時点で、お前達もその原則に縛られている。」
「・・・まあいい。それで、その原則とは?」
「『勢力の均一』『正義と悪のバランス』
例えば今回の件。お前達ギルドの人間が『正義』
ロキや『無法者』が『悪』とする。

『正義』の勢力が『悪』に勝利した。この結果により、『世界』から見て『悪』の勢力は減った。
それを感じた『世界』は新たな『悪』の勢力として、『天使と悪魔』を使命した。という事だ。
これは、当人に自覚はない。例え、友好的な関係を築いて居たとしても『原則』により敵になる。」
「・・・お前の御託によれば、『無法者』があの『天使共』と同じ力を持っていたという事か?」
「違う。今回、『無法者』と同じタイミングで俺達は『死神団』を壊滅させた。
それで一気に傾いた勢力を均一させる為に現れたのだろう。」
「・・・・・・。」
そこでロキが割って入る。
「まあ、要するに敵を倒せば次の敵が現れるという事だ。原則を知っでもそれは変わらん。」
「え!?それって、倒してもまた誰かが現れるって事ですか!?」
「現れるならその都度倒していくだけだ。」

「本当にそれでいいのか?」

ロキは意味のあるような言い方をする。
「・・・どういう意味だ?」
「俺は他人なんてどうでもいいんだがな。
・・・お前達はどうやって『敵』の存在を知る?」
「もう私が説明します。」
シャールはロキに溜息をつきながら説明する。
「ロキのイラつく言い方だと分かりにくいですが。
正解は『被害者』ですよ。」
「「!!」」
「管理政府やギルドの人達は『被害者』を発見して初めて脅威と認識する。
敵が現れる度に『被害者』が出る。その『被害者』とになるのは赤の他人かもしれないし・・・隣にいる誰かかもしれない。
だからそれをどうしようか・・・と言った所ですかね。」
「それで、俺がアルマとロキに接触した。
『死神団』を倒したのは俺だが、俺が参加してはまた強力な敵が現れる。だから俺抜きで敵を倒す必要がある。
そうすれば、『世界』は俺に匹敵する敵を現さず敵の勢力は減っていく。その内アルマやロキすらも前線から離れれば脅威も減り、相対的に『被害者』も減る。
これを狙うしかない。」
「これから暫く、不利な戦力で戦うしかない。という事だ。」
「そんな!それじゃ勝てるどころか戦う人が危険ですよ!」
「残酷な言い方をするが、お前達が負けたとしても今度は『味方』が現れるだけだ。」
「勝てなくても味方が現れる・・・と言っても、天使は人間を滅ぼすと言っていましたね。だとすれば『味方』は人間ですら無いかも知れませんね。」

「関係の無い話だ。とりあえず、敵を倒せば良いのだろう?」
それを聞いて初めてカインは笑った。とても小さな表情の変化だったが、確かに笑った。

「さて、ロキ。お前の話を聞こうか。」
アルマについて、分かっている事をカインに話した。

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