天魔界戦

皇神凪斗

第20話 雷の化身

神器によって威力の増した拳をバランが振り下ろす。
ロキは終炎を纏った左手で受け止める。
「んな!?」
「この左手は特別製でな。力比べでは勝てんぞ?」
その時、視界の隅。結界の天井に雷がチラつく。
「・・・あれは?」
ロキだけがそれに気づいた。結界の扉が開き、雷そのものが入ってきた。
ロキは世界の動きが遅くになったように感じた。
降りてきた雷は一直線にメルの方へ向かって行く。
「(ここで戦力を削られるのは困るな。)」
動く、ロキと雷だけが捉えられるような速度で。
腕に魔装を集中させバランの腹に思い切り、一度だけ拳を叩き込む。
即座に魔装を両足に集中。地面を蹴り、走る。
雷がメルの背後数メートルに迫った時、それは細身の人の形に変わる。そして、右手をメルに向かって真っ直ぐ突き出す。
そこで、ロキは現れる。間に入り込み、雷の拳を終炎で受け止める。
「あ?・・・お前、速いな。」
「聞き飽きたセリフだな。」
その雷のような男は左手を突き出そうとする。
しかし、途中で止まり別方向を向いた。
そこには、殴られて飛んできたバランの身体があった。
男はバランを受け止め、距離をとって着地した。
「ちょっと!ちゃんと助けなさいよウォルト!」
紅アカネは叫ぶ。そこでメルは背後の出来事に気づいた。
「ロキさん!・・・ありがとうございます!」
「気にするな。まずは奴をどうにかせねばな。」
ウォルトと呼ばれた男はバランを傍に置くと、また雷に変化する。
雷は大きくなり、ロキとメルを囲い込むように襲いかかる。
「『終嵐』」
ロキの腕からでた炎が急に鋭く素早く動く。それは竜巻のようにロキ達を隠すように回り高くなって行く。
その時、ロキ達の死角。雷に隠れたもう一人の人物が動く。

「『ライジング』!!」

黒い風の間をすり抜けアカネの傍に降り立つ。
着地と同時に、アカネを捕まえていた樹木が散り散りになる。
「あ、あなたは!?」
離れた位置にいるカイトも目を見開く。
「何故貴様がここにいる!」
「『レイジ』さん!?」
金色の髪を持つその男は立ち上がって振り向く。

「え?僕はレイジじゃないよ?」
「こんな時にふざけるな!俺達の目を欺ける訳無いだろう!」
「あー、えっと。僕は『雷羅ジン』だよ。レイジは弟の方。」
レイジにそっくりの顔でジンは言った。
「・・・・・・え?」
「確かに瓜二つだが、雰囲気が違う。本当に別人のようだな。」
既にそこには戦いの空気は無かった。
「ジン・・・受け答えしてないで。こいつらは敵よ。」
「いや〜、そうもいかなくってさ。
どうやら蒼家の人達が結界の外に待ってるんだ。」

カイトはその場でかなり嫌そうな顔をした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品