天魔界戦

皇神凪斗

第18話 弓の神器

アカネはロキの力に驚きながらも、散ったカイトやメルの方へ目をやる。
「やはり、あの男ロキは危険。だからこそ、まずは雑魚を片付ける。」
アカネはまた、風の矢を放つ。それに気づいたメルは皆の前に出てミストルティンを構える。
「『私を守って』!!」
杖から生み出された緑色の泡がメルを包む。それは風の矢を正面から受け止め、消滅させた。
「(さっき、風の矢が上空から突然襲ってきた。あの神器には何かある。・・・まだ慣れてないけど、接近戦に持ち込んで弓を引く暇を与えないようにしなきゃ!)」
「『私に従って』!」
メルの地面というか、魔力によって構成された床から植物が生える。
ぐんぐん伸びる植物の上に乗り、メルはアカネに近づいていく。
「甘い!」
アカネは弓を水平に構え、弾く。すると、三本の風の矢が並んで飛来する。
中心の一本はメルを包む『宿り木の加護』にあたり消滅するが、残り二本は両脇をすり抜けていく。
「えっ?」
メルは植物の上に乗っているため、アカネが風の矢を放つ時は見上げる形になる。
三本の内一本しか当たらないのでは放った意味が無い。
「フッ・・・。」
アカネのニヤケ顔を見て、メルが振り返ると両脇を通り過ぎた二本の矢は緩い曲線を描いてカイト達に飛来していた。
「まさか!矢の弾道を操れるのか!!」
「避けて!」
神器の力による攻撃は通常の魔法で防ぐ事は出来ない。
「・・・弾道を操れるなら、避けても意味無い・・・。」
そう言うと、ルルカは前に出た。
「おい!お前は下がれ!」
「・・・私は元々自警団だった・・・甘く見ないで・・・。」
ルルカはデュランダルを構え、風の矢の一本に正面からぶつかって行く。
風の矢はそれで消滅するが、かなりの威力により剣が押されルルカも吹き飛んでいく。
「まだ一本あるわよ!」
それで体勢を崩したルルカへ向かってもう一本が飛来する。
「・・・!!」
風の矢がルルカに直撃する。鋭く尖った中心は腹を貫き、巻き込んだ風がルルカの四肢を切り刻んでいく。
空中で血を撒き散らし、地面に叩きつけられる。
「お、おい!」
「まずは一人。」
その時、デュランダルが光を放つ。その光は柄の部分から伸びている鎖を通じて、ルルカの右手の腕輪に伝わる。
その光は傷に集まっていき、目で見て分かる速度で傷が癒えていく。
「はぁ!?それも『魔具』!?どんだけ厄介な連中なのよ!」
メルはすぐ側まで接近した。アカネは直ぐに切り替える。後ろに飛びながら弓を引く。
「『火炎』」
アカネの風の矢に炎が纏わり付く。
「!!」
弓が弾かれると同時にメルは植物から飛び降りる。炎の矢はその植物を破壊、炎上させる。
落下しながらメルは杖をアカネに向かって振り下ろす。
アカネは弓でそれを受け止める。
「!!・・・へぇ、そんな可愛らしい見た目で接近戦を仕掛けてくるとはね。」

アカネとメルの戦いが始まった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品