天魔界戦

皇神凪斗

第15話 契約の代償

「『魔具』・・・訳ありみたいだな。」
リルと呼ばれた少年は慌てながら喋りだした。
「前に変な男がその剣をもって街に来たんだよ。大人の人が何人も怪我したけど何とか出来たんだ。
その後、剣を退かそうとしてお姉ちゃんが拾って・・・それからずっとその様子なんだ。」
「当然だ。『魔具』にはそう言う類の物は多い。
それは『魔剣 デュランダル』異常な切れ味と『魔具』の中でも異様な強度を誇る剣だ。
その力を引き出すには契約をする必要がある。」
「それなら!助けてあげて下さい!」
「何故だ?そんな必要は無いだろう?」
「放っておけないですよ!」
メルの様子を見て、シャールが動く。
「私からもお願いします・・・。」
「・・・・・・シャル。お前はもう俺の部下じゃない。」
その言葉はシャールにしか理解できなかったが、確かに意味のある言葉だった。
「!・・・はい。お願いです。ロキ、彼女を助けて。」
「良いだろう。」
襲ってきた女性は頭を抱えながらロキの話を聞いていた。
「契・・・約?それをすれば・・・収まるの?」
「あぁ、楽になりたければ契約をするか死ぬ事だ。だが、契約をすれば一生この『魔剣』と生きる事になる。」
「構わない・・・このままでいるくらいなら・・・『契約』するわ。」
「・・・フッ。そうか・・・。」
ロキは笑う。そして、『魔剣』を拾い上げる。
「ロキさん?」
その『魔剣』の切っ先を女性の胸に突き立てる。
「おい!まさか、貴様ッ!!」
貫く。その華奢な体躯を。目から光が消え、身体から力を抜いていく。
「お、お姉ちゃん?」
リルは震える手で女性に近づく。
カイトがロキに掴みかかろうとするも、シャールがそれを止める。
「この『魔剣』が欲しかったのは、誰の血でもない。お前の血だ。」
「何?」
周りの者が理解出来ずにいる中で『魔剣』を引き抜く。
すると、その『魔剣』は光を放つ。
柄から鎖が伸び、女性の右手に腕輪として繋がる。
次の瞬間、女性の身体も光り出す。髪が金色に染まり、胸に空いた傷が塞がり始める。
「何だ?どうなっている?」
「『デュランダル』の能力は契約を交わした人間を不死にすること。・・・その代わりにその命を捧げる。それが契約の条件なんだよ。」
完全に傷を感知した女性は驚きながらも起き上がる。
「ありがとう・・・助かった。」
「気にするな。礼ならシャルに言うんだな。
あぁ、いくら『魔剣』でも完全に不死という訳じゃない。契約を破棄し、お前が死ぬ条件は二つある。
一つはその剣でお前の心臓を貫かれる。もう一つはお前が致命的なダメージを受けた時に『デュランダル』はただの鉄になる。その剣を破壊されればもう『魔剣』に戻ることは無い。
以上だ。あとはお前の好きにしろ。」
それを聞いた瞬間女性は──────────

─────────ロキの腕に抱きついた。
「え?」
女性もロキも無表情のまま止まる。
「おい、何をしている。」
「好きにしろって・・・言われたから。」
「何なんだ?こいつは?」
「お、お姉ちゃん?」
「リル・・・私はもうあの街には戻れない。
・・・じゃあね・・・。」
ようやく動き出したシャールが女性に詰め寄る。
「いえ、あなたは弟さんと帰るべきです。」
「断る・・・しばらくはこの人と一緒にいる。」

「はぁ・・・。」
珍しく溜息を行くロキだった。

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