天魔界戦

皇神凪斗

第47話 英雄の誕生

「ここは、スティルマ王国なのか?」
「えぇ・・・認めたく無いけれど・・・。」
地面には、足を着く場所が無いほど『それ』が転がっていた。
何かと言えば『死体』だ。
鎧の間から見える顔には多くの見覚えがあった。
仲の良い人間もそうでない人間も、見知った顔がそこにあった。
「・・・逃げないで良く戦った。
・・・すまない。」
「あなたがいても、結果は変わらなかったはずよ。」
ドロシーは血塗れの武器を持ち上げる。
「武器には殆ど傷がない。応戦する間も無かったんだと思う。」




「ふぅむ。何処にもいないな。」
死神団をまとめるベアルはその手にクレイスと国王の『首』を持っていた。
「リーダー?もう誰もいなくなっちまいましたよ?逃げたんじゃないすか?」
「もしかして、騎士共に紛れてたとか?でもそんな弱いやつ入れても意味無いと思うけど。」
「まあ、そうだな。違う場所を探してみるか。」

「『天の剣』!!」
アレクは、聖剣を思い切り振る。
その剣の軌道上に光が現れ、一本の剣となって死神団へ向かっていく。
『天の剣』は数十人を吹き飛ばした。
アレクはそんな事が出来るとは知らなかったが、咄嗟にそれをやってのけた。

「ん?何だ?」
ベアルは気にすることも無く。アレクの方を向いた。
「探し物は、『これ』か?」
アレクは『ソルディの首』を見せつける。
「あぁ、その通りだが・・・首から下は無いのかね?」
「用が済んだらさっさと失せろ。
でなければ・・・全員消し飛ばす。」
「ふぅむ。分かった・・・お前達、帰るぞ。」
死神団は何も無かったかのように、帰っていった。




「くっ・・・はぁっ!!」
アレクは、膝から崩れ落ちる。
「流石は『神器』の能力ね。威力もそうだけど、魔力の消費量も凄いわね。」
「魔法と言うのは・・・ここまで疲れる物なのか?」
ドロシーが手を貸し、何とか立ち上がる。
城の影から、数人が顔を出した。
「・・・生存者か!?」
彼らは二人と、死神団がいなくなった現状を見た。
「おぉ・・・騎士だ。騎士が死神団を追い払ってくれたぞ!!」
「・・・何故か、大袈裟に喜ばれているようだな。」
「・・・良いんじゃない?追い払ったのは事実なんだし。」

ドロシーはそっと、アレクの頬に口付けをした。

「!!・・・な、何をする!!」
「フフッ・・・大勢の前でアピールして、あなたを取られない為よ。」

「全く・・・ようやく、任務完了だな。」

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