天魔界戦

皇神凪斗

第39話 命を賭けた戦い

そこは戦場。逃げ惑う人々。進む殺人集団と、国を守る騎士。
数百人の騎士達はたった数十人の殺人鬼達に押されている。
ディール達も最前線で苦しい戦いを続けていた。三人は一人の大男相手に簡単にあしらわれている様な状況である。
「外道め!まともに戦いもしないか!!」
「命を掛けて戦っているのに、遊んでやがる!!」
「だが・・・その足を掬わせてもらう!」
リエナはその手に持つ戦斧にありったけの力を込めて、男の持つ大剣に叩きつける。流石の大男も、体勢を崩す。
その隙にディールは首を切り落とそうと、剣を大きく振るう。
「はあぁぁぁ!!」
「ぐぬぅっ!!」
大男はギリギリその攻撃を受け止める。その時には腕が上がった状態になる。
「そこだ・・・!!」
キッドはその胸目掛けて矢を放つ。大男は気づくことなくその矢を受ける。
その時、その矢に貼られた魔法札が発動する。
矢の周りに風が吹く。前へ押す風と、回転する風が加わり貫通力が増す。
鍛えに鍛えた大男の胸から背中まで一瞬で矢が貫通する。
「お、お・・・うおぇ・・・。」
大男は白目を向き、血を吐きながら倒れ、二度と動く事は無かった。
「はぁ・・・はぁ・・・やっと、一人・・・。」
「はぁ・・・気を抜くなキッド!」
仲間をやられて逆上する者がいる、と警戒したが彼等は全く表情を変えなかった。
「・・・へへへ。」
ただニヤニヤと嘲笑うだけだった。
「こいつら、仲間をやられて何も思わないのか・・・?」
「な、何をやってるんだ!さっさとそんな奴ら殺してしまえ!」
そんな時、死神団の中から焦る声が聞こえた。
「お前は・・・クレイスか!?」
そこに居たのは、仲間であるはずの騎士だった。
敵対するはずの死神団に混じってディール達を見ていた。
「あの野郎!何してやがんだ!!」
キッドが一本の矢を放つ。
しかし、近くにいた男がその手に持つ杖で、矢を弾いた。
「すまない。彼にはこの国を案内して貰ってるんだ。」
その男を見た瞬間、ディール達は武器を握る力を強めた。
明らかに、雰囲気が違う。ディールを嘲笑い、人を殺す事に興奮している殺人鬼達の中、その者の放つ空気はとても冷たく、重く感じられた。
「私はこの死神団をまとめている『ベアル』という者だ。良ければ、少し話さないか?」
ただ静かに喋っているだけだが、抗ってはいけないと本能が訴えてくるのをディール達は感じていた。
ディールは、周りの死神団が全員動いていない事を確認すると、剣の柄を握ったまま剣先を地面に向ける。
「話とは何だ。悪いが降参は受け入れられない。」
「あぁ、君達騎士のプライドは知っているし、侮辱する気もない。
聞きたい事があってね。この国に、殺人鬼が迷い込んだだろう?彼の居所を知りたいんだ。」
「・・・残念だが、見つけたと言う報告は聞いていない。
こちらの質問にも答えて貰いたい。そんな殺人鬼に何の用だ。この国を襲う理由に繋がるのか?」
「殺人鬼への用と言えば、勧誘だ。私は強い人間を仲間にしていてね。
それと、この国を襲う理由だが・・・しいていえば特に無い。」
「なっ!?」
「それと、勘違いしているようだが、先に攻撃してきたのは君達の方だろう?
私達は、殺人鬼を探してこの国を訪れただけだ。君達が邪魔をするものだから退かしているだけさ。」
ディールは剣を構え直した。
「こちらに非があるのは認めよう。だが、犯罪者を生かしておくほど騎士は甘くない!!」
リエナとキッドも体制を整える。

「そして・・・仲間との約束の為・・・まだ死ぬわけには行かない!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品