天魔界戦

皇神凪斗

第32話 魔法を生み出した少女

アレクは自室の扉を開ける。すると、中には既に一人の人間がいた。
「ドロシー、何故お前がここにいる?」
「だってこの城、コーヒーに入れる角砂糖がこの部屋にしか無いのよ。知ってるでしょ?」
「まあ、皆は無糖派だからな。」
目的は角砂糖だったようだ。それで、そのままアレクの部屋で研究の続きをしていたらしい。

彼女はドロシー、この王城に住み込みの研究科所属だ。
研究とは言っても、元々は兵器の開発や謎の多い歴史を専門としていた。
そこに、一人の天才が現れた。彼女である。
神が授けたという、書いてある文字すら意味が不明な書物を完全に読み解き、魔法の存在を立証した。
彼女が言うには、仕事の片手間、暇つぶしに研究していたらしいが、人類にとっては見る世界をひっくり返す物だった。
しかし、魔法の存在は見て分かるものの、実際には書物の言葉を理解する必要があった。
理解できるのも、天才の中でもごく一部のみ。
そこで、最もそれを理解したドロシーは誰でも魔法を使える『魔法札』を開発した。
現在は、やがて人類誰もが使うことの出来る『もう一種』の魔法を作っている。

彼女の作った『魔法札』は悪用される事もしばしば。作った責任して対策を命じられ、更に生み出したのが『魔法を斬る剣』だ。
これはアレクしか持っていない。この剣も量産してしまえば、悪用のループに入ってしまう為だ。
その大事な剣を適当な壁に掛ける。
アレクはドロシーの事を気にせず、風呂や洗濯、夜食を済ませた。
「俺はもう寝る。砂糖使い切るなよ。」
「・・・・・・・・・。」
かなり集中していて、声が届かない様子だった。




アレクは突如、体が浮くような感覚を体験する。
直後、叩きつけられる感覚。
目が覚めると、目の前は床。どうやらベッドから落ちたらしい。
どちらかと言うと寝相はいい方で、落ちた原因を確認すべくベッドを見る。
そこには、毛布を完全に奪った少女が寝ながら腕を突き出していた。
「こいつ・・・自分の部屋に帰らなかったのか?」
起こそうかとも思ったが、研究で疲れているだろうと思い、ソファでもう一度寝る事にした。




目覚ましを聞き、再度眠りから覚める。
その時にはドロシーの姿は無かった。
「人の出入りにも気づかないとは・・・俺もかなり疲労が溜まっていたのか?」
支度をし、部屋を出る時に剣を手に取る。
「ん?なんだ・・・少し軽くなっている?」
鉄で出来ているので重いには重いが、勘違いでは済まない程度には軽くなっていた。
「また勝手に改良か?一言くらい言って欲しいものだ。」
時間もあまり無いのでそのまま部屋を出る。

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