天魔界戦

皇神凪斗

閑話 消えた男

「あーあ。こんなんじゃ身体が訛っちまうぜ。」
アルマは一人病室で、窓を空けて空を見ながら夜を過ごしていた。
「それにしても、ギルドの人間だけだってのに出入りするやつが多いな。」
アルマが入院している間、かなりの数の負傷者が運び込まれ、同じくらいの人数が退院している気がした。
当たり前といえば当たり前だ。ここの仕事の基本は殺し。相手だって無抵抗な訳は無い。
無法者デスペラードとの戦闘後、アルマの顔を覚え、声をかける者は増え、かなりの数のお菓子をもらったが、全て医師に没収されてしまった。
そして、夜に来る客はいない。故に暇を持て余していた。

───────その時
空の奥、遠い場所で、光が見えた。
「おぉ?星か?」
だが、すぐにその考えは消え去る。素人が見ても分かるくらいその光は強すぎた。
宇宙じゃない。もっと近く、スティルマの中だ。
アルマは病室のドアを確認する。
「流石に・・・。散歩させてくれじゃ出してくれないよな。」
すると、隣のベッドから布団を取り、丸めてからアルマのベッドの上に乗せる。それに自分の布団を被せて置く。
「少しなら騙せんだろ。
・・・・・・さて、と。」

窓から外へ飛び出す。建物のを上を走り、光へと向かっていた。
「くっそ!!この服風が通り過ぎて寒いな!!
てか、久々のせいか全身に違和感あるし、魔力も満タンって程じゃねぇ。
ま、逃げるだけなら問題ねえだろ。」

─────俺に逃げるなんて選択肢があれば、だけどな─────

少し走ると、光はすぐに小さくなってしまった。
しかし、形が少しずつ浮き出てくる。
「ん?なんか見覚えが・・・・・・!?」
空に浮く光、と言うよりその白く艶やかな翼が月の光を反射していた。
人間の肉体に、大きく白い布を羽織ったあと、腰に紐をまいただけの服。
そして、背中から生える美しい翼。
「・・・天使・・・か?」
「!!・・・フフフッ!・・・連絡が途絶え、何があったと来てみれば、ターゲットから迎えに来てくれるとはな。」
「ターゲット?・・・てか、天使サマがこんな夜中にどうかしたのか?
あんまり尋ねんのも良くねぇと思うし、無理に答えてもらわなくても良いけどさ。」
「私の目的?・・・それは簡単だ。」
そう言うと、拳を握りしめ自分の胸に当てる。
その拳は徐々に光を放ち始める。
「あ?・・・一体何して───」

「────────お前を殺しに来たんだよ!!
ハーハッハッハッハッハッ!!!!」

天使は激しい光を放つその拳を天に掲げる。
すると、三つの魔法陣。
どう見ても、アルマを。スティルマを破壊しようとしていた。
「は!?んな事させっか・・・」
そうして、足に力を入れたが、滑って転んでしまう。
「クソっ!まだ身体が・・・!!」
「消えろ!!ゴミ共!!!」

アルマが見たのは、空を覆う眩しい程の光だった。

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