天魔界戦

皇神凪斗

第7話 勝つ意志

シェルナンドは地を蹴り、距離を詰めてくる。
「速いっ!!」
カイトは咄嗟に氷の腕で剣を受け止める。
その時、不自然な音が聞こえてきた。まるで石を削るような音。
一瞬で氷が削られているのだと判断し、カイトは氷の腕を投げ捨て飛び退く。
「あの剣、表面が高速で上下している。チェーンソーのように俺の氷を削り取ってやがる。」
「それを全身に纏っているのだとしたら、本当にあの水銀自体の打開策を見つけなきゃ行けないね。」
「やつを倒すには、水銀を破壊して奴にダメージを与えるか、魔力が切れるまで戦い続けるか・・・だな。」
「出来れば前者が好ましいね。三対一で逃げ続けて勝っても、彼は敗北を認めないだろう。それに、今は魔力の底が見えない上、こちらが持久戦に持ち込むと分かれば相手も魔力を節約してけるだろう。実際、バラバラに動かしてくるより鎧として必要な分だけ動かしていた方が魔力の消費も少なく隙がない。」
今まで何とかして避けてきた問題を無理矢理押し付けるような戦法に、三人は攻撃の手をピタリと止める。
「話し合っても無駄だ。この鎧と盾は全ての攻撃を受け止め、この剣はあらゆるものを削り、断ち切る。
大人しく・・・降参しろ!!」
シェルナンドは再び突撃を開始する。
「『煙幕』!!」
対して三人の内、メルがその名の通り『煙』を発生させる魔法を使う。
「無駄だと言っているだろう!」
シェルナンドが剣を一振りすると煙はあっという間に引き裂かれ、意味を無くす。
「だったらこれはどうだい?『ライジング』!!」
一瞬の光と共に、レイジが動く。しかし、移動はせずその場で脚を振り上げていた。
それを確認した直後、シェルナンドの横腹に何かが激突する。
腹が圧迫され、まるで砲弾でも当てられたように身体が押される。
シェルナンドは倒れた後、一緒に地面に落ちた物体を確認する。
「ぐぅっ!!・・・これは、『木』?」
目に入ったのは限りなく黒に近い色の小さな丸太だった。
「はい。植物の中で最も硬いとされる木材を使いました。例え、削れたとしても衝撃を完全に消すことは出来ないはずです。」
「!!・・・衝撃で鎧自体を俺様に叩きつけたのか!」
「自分の力に自惚れているからそうなるんだ・・・覚えておけ!!」
後ろから近づくカイト。その右手には・・・否、右手が氷の槍と化していた。
大きく引き絞り、突き出す。

「ふざけるな!!この程度の事でぇぇ!!」

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