天魔界戦

皇神凪斗

第5話 欠点

バラールの頭上に炎を纏う岩石が現れる。
それはメル自身が知ってるものより明らかに大きい物だった。
それは神器の力。杖とは魔法を素手と同じ魔力量で威力を増す効果がある。物が良ければいい程凄まじい威力となる。
「舐めるな!!」
シェルナンドが手を伸ばすと、シェルナンドを囲っている渦から水銀は伸び。『メテオ』に激突する。
炎で蒸発しながらもその水圧で岩石を粉砕し、その場に散る。
「助かったぜ!『魔装』!!」
バラールはさらに身体を強化し、氷を弾き飛ばす。
「ごめんカイト君!せっかくのチャンスだったのに・・・。」
「気にするな!あれはあいつらが一枚上手だった。」
その後バラールもシェルナンドの元に戻る。
水銀の渦をどうしようも無かったレイジも同様に。
「ハハッ。情けないよ・・・元リーダーでありながらアルマ君の力を借りたいと思ってしまう。」
今になってこのチームの欠けているものに気づく。
確かにアルマの拳なら水銀の渦など容易く突破出来るかもしれない。しかし、だからこそ打開策を練らなくてはならない。
「水銀はシェルナンド君の魔力が尽きれば使えなくなる・・・しかし、そこまで僕達が耐えられるとは限らない。」
「奴を攻撃しようにもあのデカブツは足が速い。かといってまとめて掛かれば後ろ二人からの魔法が邪魔だ。」
「・・・あります!彼等を倒せる術が!!」
「何?」
そう言うとメルは手に持つ杖を握りしめた。

「作戦会議は終わったかな?出来るだけカッコイイ負け方でもしてくれたまえ。
それが君達にとっての最高の勝利だ。
なんせ俺様達はギルド内最強のチームなのだからな。」
「・・・自惚れるのも大概にしろよ?腑抜けが・・・。」
「・・・ふん。まあ、いい。行け!バラール!!」
「へいよ。」
シェルナンドは水銀を展開し、バラールは盾を構えたまま突撃。
こちらは三人でバラールを迎え撃つ。
「『凍る息吹ブレス・オブ・フリーズ』!!」
「忘れたのか?この盾は・・・ぐっ!今度は何だ・・・?」
凍っていた。魔法を凌ぐ盾が、盾を通り越してバラールの全身が。
「いくら魔法に耐性があるとはいえ、メルの全力魔法は受けきれなかったみたいだな。
創作魔法マジック・オブ・クリエイト フリージングアーム』!!」
カイトの右腕を氷が覆っていく。それは巨大な腕に近い形となった。
「喰らえ!!」
この腕をバラールの腹に叩きつける。
しかし、凍ったバラールにはあまりダメージは見られなかった。
「おいおい。わざわざ氷を割りに来てくれたのか?
悪いが間に合ってるぜ。」
バラールの後ろから水銀近づいていた。このままではメルの魔法が無駄になってしまう。
「無駄な事だ!すぐに破壊してやる!」
メルは杖を構え、目を閉じる。魔力を流し、準備をする。

「『お願い・・・みんなを守って』!!」

ミストルティンが光り始める。
「まさか、神器か!?」
杖を中心に、橙色の円が広がる。バラールも含めて、四人を包み込んだ。
「防御魔法か?ただの時間稼ぎだな!!」
シェルナンドは水銀の圧を増やす。
「さっさと破壊して、その神器ごと粉砕してくれる。」
橙色の円は水銀を容易く弾いた。
「ハッ!その程度・・・何いぃぃぃ!?」
「流石だな。・・・レイジ!!」
レイジはカイトの後ろで地に手を付く。
「行くよ!『ライジング』!!」
魔法で光となったレイジは地を蹴り、カイトの氷の腕に速度を乗せる。
バラールの腹に打ち付けられた氷に推進力が加わる。
急に加わった力でバラールに衝撃が加わり、後ろに吹き飛ぶ。
カイトの腕をそのまま、レイジも力を加え続ける。
「うおおぉぉぉぉー!!!」
「馬鹿な!」
「水銀で防御するか?だが、それではこのデカブツも巻き添えだ!」
シェルナンドは頭をフル回転するが思いつくのは水銀を操ることばかり。
そこでカゲはシェルナンドを押し退け前に出る。
「・・・『流水砲りゅうすいほう』!」
カゲの前に魔法陣から、水が吹き出す。
シェルナンドの水銀程ではないがそれなりの水圧と水量でバラールの背中を押し返す。
しかし、『ライジング』の加速は収まらない。
「チッ!『水壁』!!」
次は直立した津波が立ち塞がる。
カイトとレイジはそこへ突撃。大きな水飛沫が上がる。その場に見る皆は目を覆う。
カゲが目を開けると、目の前には倒れたバラールと大きな氷を下げたカイトがいた。
「マズイっ!『────」
「そこまでだよ。」
魔法を使おうとしたカゲの後ろからレイジは峰打ちを浴びせる。
バラールは完全に意識を失っていた。
カイトは眼鏡の位置を正し、シェルナンドへ顔を向ける。

「さて、あとは貴様一人だな。」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品