天魔界戦

皇神凪斗

第二章 巫女の役割 第一話 新たな嵐

無法者デスペラード殲滅後、アルマは二週間以上安静にして、やっと身体が動くようになってきた。
「ま、任務には行かせないけどね。」
真顔で医師はそう言った。
「なんでだよ!!もうバリバリ動けるんだぜ!?」
「確かに傷は完治したし、魔力も大分回復してきた。
でも、『魔装』による限界を超えた戦闘で、普通の人間なら余裕で過労死する程の疲労を抱えた。
それに、腕が動き始めたからって毎日筋トレ。足が動いたらベッドの上で擬似屈伸。
そんなんで疲労が取れるわけないだろ?体は動くと言ったってまだ全身が重いはずだ。」
「特訓して何が悪い!!疲労を溜めて何が悪い!!」
「身体に悪い。
とにかく、あと一ヶ月はベッドに縛り付けさせてもらうよ。」
メル、カイト、レイジは簡単に納得してその場を離れた。




ギルドの中を歩きながら三人は今後について話す。
「しばらくは三人での任務になりそうですね。」
「あ、その事なんだけど。これからは君達個人で任務を受けても構わない。」
「何?どういう事だ?」
「そもそもリーダーと新人三人のチームというのは、新人の保護と育成を目的とした構成なんだよ。つまりリーダーである僕が君達を一人前と認めれば、一人でも任務を受ける許可が下る。
君達は新人の中でも逸材だった。もう僕が守る必要も無いだろうからね。」
アルマ達はあっさりとその実力を認められた。しかし、これはかなり異例な事である。新人がリーダーとして指導者になるには平均三年程度の実戦経験が必要だと言われていた。
「でも、僕達がチームなのは変わりない。困った事があったら何でも頼ってくれ。」
「私は一人じゃ行けないと思いますけど、ありがとうございます。」
メルは苦笑いしながらもお礼を口にする。
カイトは相変わらずの様子だ。
「俺は金さえ稼げれば何でもいい・・・。」

────────その時、ギルドの扉が勢い良く開かれる。

「御機嫌よう、諸君!!この白銀のシルバーシェルナンド様が還ったぞ!!」

扉の前に経つのは灰色の髪をした青年。
その後ろに二人。一人は黒髪の大男、ガタイだけならグラン以上だ。もう一人は黒っぽい緑の髪をした青年、死んだ魚のような目をしており身体はとても細い。全身から『面倒臭いオーラ』を醸し出している。
「「「・・・・・・・・・。」」」
誰もが呆気に取られて動けない中、通りかかったグランが声を掛けた。
「おい。何で帰ってくるんだよ。」
「当たり前ではないか・・・。ここは我が家なのだから・・・。」
髪をサッとかきあげながらシェルナンドは言った。
「お前には半年分の仕事をやったはずだが?」
「四ヶ月で切り上げて帰ってきた。どうだ?俺様の仕事ぶりは・・・。」
「ちゃんと半年で終わらせろ。俺はお前に会いたくないから仕事をくれてやってんだ。」
「俺達、普通にシェルのとばっちり受けてるんだけど。責任取ってくれよ・・・。」
細い男の方が文句を言い出す。
「あぁ・・・すまん。シャドウ、バラール。まあ、金出してるからいいだろ?」
「俺は『カゲ』っすよ。シャドウじゃなくて。」
「まー、どうせ暇だし。忙しい方が仕事してる感じがしていいぞ俺は。」
そこにシェルナンドが割ってはいる。
「そんな事はどうでもいい!!速く終わらせてきたのは理由があるからだ。」
「理由?何だよ。」
シェルナンドはニヤリと笑う。

無法者デスペラードの親玉。正体が分かったらしいじゃないか・・・。」

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