天魔界戦

皇神凪斗

第63話 封印と代償

空に舞った『腕』は『二本』あった。
一つはロキの左腕、アルマ自身が切断した時を目で見たからだ。
しかし、それと同時に自分の左腕に鋭い痛みを感じていた。
「「!!・・・ぐああぁぁぁぁああ!!!」」
一斉に吹き出す血。バケツの水を零したように周囲に撒き散らされる。
戦場の中心で、二人は叫び声を上げる。
「あ、アルマ君!?」
「ロキ!そんな、腕が!?」
まだまだ血が止まらない左腕を抑えながらアルマはニヤつく。
「心配すんな!メル!!
そんな事より、魔力を操ってるのに自分の身を守らず、攻撃してきたな?お前の魔力も尽きてきたんじゃないのか?」
「・・・お前にしては、頭が回るじゃないか?
だが、それはお前も同じ。」
「まだ行ける!『天使の制約』!!」
アルマの背後に光が溢れる。その光はどこか、翼のついた人の形をしている様に見えた。
「どう言うつもりだ?その魔法は互いの『何か』を釣り合うように封じる魔法。俺を縛ればお前も縛られる。」
「分かってんだよ!俺が選ぶのは・・・『聖剣 エクスカリバー』、そしてお前の『魔剣 レーヴァテイン』を封印させて貰う!!」
『天秤は傾かない。汝の望みを叶えよう。』
二人の剣が突然光だし、宙へ浮く。更に、金色の帯が巻き付く。そのままどこかへ消え去って行った。
「男ならよ・・・拳で決着つけようぜ?ロキ!!」
「拳か・・・『悪魔の血約』」
今度は、ロキの後ろに闇が現れる。人型なのは同じだが、翼のように見えるそれはトゲトゲとした蝙蝠こうもりに似ていて、頭部には角が生えていた。
『貴様の望みは何だ?生贄を寄越せば叶えてやろう。』
「そこに転がっている腕をくれてやる。代わりの腕を寄越せ。
『良いだろう。その程度の望みなら。』
闇はロキを飲み込んだ。その闇の一部は腕の方に伸び、アルマにも向かってきていた。
「な、何だ!?」
数秒、身体に冷たい霧のような闇で覆われていたが、少しずつ晴れてきた。
そこで、違和感に気付く。
ここは戦場だ。張り詰めた空気がピリピリと皮膚に伝わってくる。その感覚が、すでに無くした左腕にも伝わっていた。
「マジ・・・かよ・・・?」
ゆっくりと視線を左下に下げる。それは更なる驚愕を呼んだ。
形は人間の腕だ。長さも指の形も右腕と全く変わらない。しかし、昨日までのアルマの腕とは異なっていた。
左肩からいきなり白く、それが指の先まで続いていた。腕の所々には金色の線や丸が彫り込まれ、どこか機械的な腕だった。
「これは『ミカエル』の!!『天使の腕』じゃねぇか!?」

「ほう?それが『天使の腕』ならこれは、さしずめ『悪魔の腕』か?」
そうだ。アルマの腕がこうなっているなら、ロキの腕にも変化があるはず。
アルマはロキへ視線を向ける。正確にはその『腕』に。
異様だった。確かに形は人の腕だ、しかし、その腕の背ははトゲトゲとした黒い甲殻に覆われていた。腹は六角形の鱗で、爪は指先と一体化して指その物がまるで刃物だ。
簡単に言えば、化物だ。
ロキの左腕だけ別の生き物のような感覚だった。
ロキは満足げに微笑んだ。

「さあ、最後の戦いを始めよう・・・!!」

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