天魔界戦

皇神凪斗

第58話 転機

アルマの拳はロキを捉えた。
正確には何かを殴った感触はあった。しかし、アルマは直ぐにそれはただの魔力だと気づく。
何故ならアルマの拳はロキの顔の数cm手前で止まっていた。
そして、それ以上進む事も、戻る事も無い。その腕にロキの魔力が絡みついている事をアルマは感じていた。
腕だけでなく、全身にも魔力が絡みついていて動く事ができない。
「ハァ・・・ハァ・・・クソっ!!」
アルマは全身全霊の攻撃で息切れしていた。しかし、それはロキも同じ
「ハァ・・・ハァ・・・流石に、焦ったぞ。アルマ。」
「ケチケチすんなよ!一発ぐらい殴らせろ!!」
「焦ったのはそっちではない。聖剣の能力が、予備の魔法まで無効化するかと思ってな。」
「予備って・・・やべぇ!!」
ロキは一層ニヤリと笑う。
「『マジックオブマイン地雷魔法 全焼フル・フレア』」
アルマの視界が光で埋まる。目の前にいたのはロキではなく、ロキの魔力で作られた人形に魔法でロキに見える袋を被せた物だった。
アルマは襲うのは熱と爆風。全身を焼かれながら後方へ飛ばされる。数度、地面に叩きつけられながら、聖剣を握る。
「『弾け!エクスカリバー!!』」
聖剣の煌めきと共にアルマを包む炎が消滅する。
そして、少し離れた所にロキが無言で佇んでいるところを確認する。
直ぐにアルマは反撃に向かう。当然ロキは魔力を操り、アルマを迎撃する。
「『剣技 一刀両断いっとうりょうだん』!!」
叫んだのはアルマ。両手で持ったその大剣を切り上げる。
その剣は風を纏い、ロキの魔力を吹き飛ばす。
「くっ・・・!『剣技────」
「『一刀両断』!!」
「『一閃』!!」
二つの剣が十字に重なる。轟音が鳴り、空気が振動する。
聖剣が纏った風はロキの後ろの床に大きなひびを作る。
「やるな。だが!」
ロキはアルマを足を右足で蹴り飛ばす。アルマは体勢を崩す。
その顔目掛けて左の拳を放つ。アルマも左手でそれを防ぐ。
更に、ロキは左足でアルマの腹を蹴りつける。
「ぐふっ・・・!!」
さっきの攻撃『幻竜咆哮』で内蔵を痛めてるんだろう?」
「ほっとけ!!『天の剣』!!」
アルマががむしゃらに剣を振るとその軌跡に光が残り直線上に光の魔砲が放たれる。
しかし、ロキは即座に背後に回った。その無防備な背中に剣を振り下ろす。
その時、アルマは振り返りもせず、その手の聖剣を頭の背後に回す。ちょうどそこにロキの魔剣が通り、攻撃を防ぐことに成功する。
アルマは落ち着いた顔で振り向く。
「!!・・・『剣技 六閃』!!」
ロキは少し驚いた後、背後を取ったチャンスを逃すまいと追撃を仕掛ける。
いつもは高速で見えないその『剣技』をアルマは見ることが出来た。
ロキの振るう剣を見て、一つ、また一つと剣で受け止める。
結果、無傷でその攻撃を防ぎきる。
「俺の速さに・・・随分と慣れているようだな。」
「あぁ、俺の仲間にも速く動けるやつがいてな。そいつに手伝って貰ったぜ。」
「あの雷の男か。」
「それと──────

少し、目が慣れてきたぜ?」

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